メイン

2022年03月08日

長居公園の植物案内(3月)

3月の植物園案内も2月に引き続いてコロナウィルス感染症拡大防止の観点から中止です。よい季節なんですが・・・残念です。
6日はとても天気が良く暖かい日で、行事ができたら気持ちよかっただろうなあ・・・と思いながら、見どころを探してみました。
今回も植物園が休園のため長居公園内をうろうろしました。(長谷川匡弘)

P3050011.jpg

P3050007.jpg

P30500021.jpg

1.オオイヌノフグリ(オオバコ科)
春になると小さい青い花を咲かせます。古い図鑑ではゴマノハグサ科となっており、植物歴が長い方はこちらのほうがなじみがあると思いますが、DNAを用いた新しい分類体系ではオオバコ科となっています。姿形はオオバコとは全く異なっていますが・・・。春早くからかわいらしい花をたくさんつけて、草地に散らばる星のようです。この花は一日で落ちてしまいますが、その最後に自分の雄しべをぐぐっとまげて自分の柱頭に、自分の花粉を付けます(自家受粉)。花の拡大写真2枚は時間を変えて同じ花を撮影したものですが、上は午前10時ごろ、下は午後3時30分に撮影したものです。夕方近くになると花が閉じ始め、それと同時に雄しべも曲がってきます。たった一日しか咲かない花ですが、このようにして子孫を残していきます。

(追記)ただ、受粉が何らかの原因でうまくいかなかった場合には、2日目にも花弁が開いてくることもあります。多くの花で調べたわけではありませんが、あきらかに2日目の朝にもう一度開花するものを観察しています。花の寿命は環境や、受粉の有無によっても影響を受けるものがあります。


P3050004.jpg

2.ヒメオドリコソウ(シソ科)
この植物も市内の公園ではよく見かけます。ヨーロッパ原産の外来植物です。重なってついている葉の隙間から花を咲かせますが、個性的ないでたちで、私は大好きです。よく似た種にモミジバヒメオドリコソウというものもありますが、こちらは葉がより深く切れ込んでいます。同じくヨーロッパ原産の外来種ですが、あまり見かけません。


P3050031.jpg

3.ホトケノザ(シソ科)
ホトケノザもどこでもよく見られる植物です。シソ科の花はこういう筒状の花で、先がぱかっと二つに分かれたような形をしたものが多いですが、このような花を唇形花といいます。下向きに開いたハート形の部分を下唇(かしん)、上のカップ状のところを上唇(じょうしん)といいます。雄しべ、雌しべは上唇のところに収まっており、写真ではオレンジ色に見えるのが雄しべの先端につく花粉の入った袋、葯(やく)になります(袋がはじけて花粉は外に出ている状態です)。昆虫(主にハナバチ)が筒の奥にある蜜を飲もうとして頭を花の入り口からつっとこむと、上唇部にある葯に頭が触れて花粉が付き、別の花に花粉が運ばれて行きます。都市部ではまっていても、なかなか昆虫は来ません。もう少し後になると、つぼみのまま花が開かない花(閉鎖花)が目立つようになりますが、都市部では主に閉鎖花で子孫を増やしているのかもしれません。


P3050036.jpg

P3050042.jpg

4.スギ(ヒノキ科)
スギ花粉症に悩まされる時期がやってきました。長居公園にも何本かスギが植えてあるのですが、私も症状がひどくて、この時期はなるべくスギに近づきたくありません。・・・が、花を見るなら今です。咲いているかどうか確認するために近づいてみました。厄介なのは花粉を出す雄花です(上の写真)。いまにも開きそうではありましたが、この木ではまだ開花していないようです。同じ枝に雌花もついていました(下の写真)。暖かい日があと数日続けば開きそうな感じですね・・。花粉症の方はもう症状が出ていると思いますが、お気を付けください。


P3050048.jpg

5.カワヅザクラ(バラ科)
2月のブログではまだつぼみでした。3月6日に同じ株のところに行ってみると、だいぶ開花が進んでいました。5分咲きくらいでしょうか。カンヒザクラとの雑種と考えられており、ソメイヨシノのよりも色が濃く、華やかなサクラです。


P3050050.jpg

6.ジンチョウゲ(ジンチョウゲ科)
ジンチョウゲも2月のブログではまだ全部つぼみでした。行ってみると、すこーしだけ咲いていました。まだ全体で数花くらいしか咲いていなかったのですが、近づくとほんの少し香りが。公園の外周まで香りが漏れ出すのも、もうすぐかなと思います。


P3050054.jpg

7.アセビ(ツツジ科)
アセビは低山地によく見られるツツジ科の樹木です。小さい花をたくさんつけていました。釣鐘型の花を切ってみると、入り口付近まで雌しべが伸びており、その基部に雄しべがあります。その雄しべに囲まれた中に花盤があり、蜜を出しているのですが、口の長いハナバチやハエの仲間、蛾類などが口を入れて蜜をすったときに、口に花粉が付き別の株に運ばれていくと考えられています。

2021年09月26日

長居植物園案内(9月)

新型コロナウイルス感染症拡大が続いており、2021年9月の長居植物園案内も中止でした。2021年9月24日に植物園の見ごろの植物を観察してきたので紹介したいと思います。天気が悪かったり、担当者がワクチンの副反応で不調だったり、予定が入っていたりで報告が遅くなってしまい申し訳ありません。9月24日現在、長居植物園は開園していますので、来園されたみなさんの植物観察に役立てていただけると幸いです。また、行事が再開できるようになったら、植物園案内にお越しください!(横川)
 
 
◆ホルトノキ(ホルトノキ科)
 大阪周辺ではあまり見られない常緑樹です。わかりやすく面白い特徴としては、一年を通して葉の一部が赤く紅葉している点が挙げられます。落葉する前に紅葉するみたいなので、年中、葉を落としているということでしょう。知らない土地でもどこかに赤く紅葉した葉が付いていたら、ホルトノキかその仲間かなぁと推測できる便利な特徴です。
 関連して、ホルトノキの葉とヤマモモの葉がよく似ているという質問をもらうことがあります。ヤマモモはヤマモモ科の常緑樹でホルトノキと全然違うグループの植物なのですが、確かに並べてみるとよく似ています。枝先に葉が集まって付く様子も似ています。見分け方として、ホルトノキは上に書いたように年中赤い葉が混じること、ホルトノキには鋸歯(葉のへりのギザギザ)あるのに対して、ヤマモモには鋸歯があったりなかったりすること、ホルトノキの葉裏の主脈は赤くなりやすいのに対して、ヤマモモの葉裏の主脈は赤くならないことが挙げられます。さらに葉を透かして見てみると違いが明瞭です。ホルトノキの葉よりもヤマモモの葉の方が細かな葉脈まではっきり見えます。

01ホルトノキ.jpg

ホルトノキ。必ず赤く紅葉した葉が付く。


 
02ホルトノキ.jpg

ヤマモモとホルトノキの枝の比較。


 
03ホルトノキ.jpg

ヤマモモとホルトノキの葉の表面の比較。


 
04ホルトノキ.jpg

ヤマモモとホルトノキの葉の裏面の比較。


 
05ホルトノキ.jpg

ヤマモモとホルトノキの葉脈の比較。


 
◆クヌギ(ブナ科)
 9月中旬ごろから11月上旬にかけて、長居植物園では時期を変えながら様々なドングリが見られます。一番早いのはクヌギとアベマキで、ちょうどクヌギのドングリが落ち始めていました。ドングリが落ちる前には木になっていたのですが、どのようになっていたのでしょうか?クヌギの枝の中でドングリを探してみると、枝先ではなく、少し元側に付いています(2枚目の写真の青丸)。クヌギの花は春に咲きますが、実は今年落ちたドングリは、今年咲いた花ではなく、昨年に咲いた花が実ったものなのです。なので、実ったドングリの枝の先には、1年分の枝が伸びているため、大きくなったドングリは枝先ではなく、少し元側に付くのです。クヌギの枝を観察する際には、枝の先もよく見てみてください。枝先には今年咲いた雌花が小さなドングリになって、来年、大きく実るための準備をしています(2枚目の写真の赤丸と3枚目の写真)。この小さなドングリは枝先には必ず付いているわけではありません。今年の春、花が咲いた枝にだけ付くのでよく探してみてください。
 
06クヌギ.jpg

長居植物園に落ちていたクヌギのドングリ。


 
07クヌギ.jpg

ドングリがなっているクヌギの枝。青丸が今年大きくなったドングリで、赤丸が来年大きくなる予定のドングリ。


 
08クヌギ.jpg

来年大きくなる準備中のドングリ。


 
◆ヒガンバナ(ヒガンバナ科)
 ハーブ園の片隅にヒガンバナが咲いていました。よく見ると三色ありますが、これらは別の植物です。赤色はよく知られたヒガンバナです。オレンジ色はショウキズイセン、白色はシロバナマンジュシャゲという植物です。シロバナマンジュシャゲはヒガンバナとショウキズイセンの雑種だとされています。このように並べて植えられていると比較しやすくて便利です。日本のヒガンバナのほとんどは3倍体で結実しないとされており、球根で増えます。中国にはよく結実する2倍体のヒガンバナがあるようで、シロバナマンジュシャゲの起源は中国だと考えられています。花の時期には葉が見当たりませんが、花が咲き終わると細長い葉が出てきます。そのまま6月くらいまで青々としていて、冬から初夏にかけて光合成をして、養分を貯めて花を咲かせる戦略のようです。ヒガンバナが植えられている場所をよく覚えておいて、冬から春にかけて葉を観察してみましょう。
 
09ヒガンバナ.jpg

ヒガンバナとその仲間


 
◆アメリカデイゴ(マメ科)
 ヘメロカリス園の近くで赤くて大きな花を咲かせていました。典型的なマメ科の花をひっくり返したような形をしています。花の上の出っ張った部分には雄しべと雌しべがあります。よく見てみると雄しべは10本のうち、1本が短くなっているようです。1本だけ短い雄しべ、どういった意味があるのでしょうか。
花の赤い色は鳥に対してよく目立ち、広告の役割をしていると考えられます。実際に原産地のアメリカ大陸ではハチドリが受粉しているとされています。花はとても丈夫で、ちょっと力を加えたぐらいでは壊れないことも鳥によって受粉される上で重要だと思われます。しかしながら、花に来る動物を調べた研究によると、ミツバチやクマバチの仲間もアメリカデイゴの花にたくさん来ていたようで、これらのハチも受粉に寄与しているようです1。
長居植物園のアメリカデイゴは毎年、結実しています。日本にはハチドリはいませんので、鳥であれば、メジロなどが来て受粉しているのかもしれません。ハチも受粉に寄与しているとのことですが、長居植物園で見る限りは、ミツバチがやってきても、あまり受粉はしてなさそうで、蜜だけを吸っているようでした。花にどんな生き物が来ているのか、受粉をしていそうか、よく観察してみると面白いと思います。

1:Galetto L. et al. 2000. Reproductive Biology of Erythrina crista-galli (Fabaceae). Annals of the Missouri Botanical Garden 87(2):127-145.

10アメリカデイゴ.jpg

アメリカデイゴ


 
11アメリカデイゴ.jpg

アメリカデイゴの雄しべと雌しべ。雄しべは10本あり、1本は短い。


 
◆チャンチンモドキ(ウルシ科)
 ボタン園の奥、第三紀植物群のセコイア林の脇に植わっています。今年は果実がよくなっており、果肉たっぷりの大きな果実がたくさん落ちていました。果肉はかなり粘り気があり、哺乳類に種子散布されるのではないかと思います。果実をよく見ると先端のほうに点が5つあります。果実の中にある硬いタネ(内果皮+種子)にも5つの穴があり、これら穴から芽が出ます。
 博物館の常設展の縄文人の食べ物のコーナーでは、遺跡から出土したチャンチンモドキのタネについて少しだけ触れられています。日本の第四紀の地層からはチャンチンモドキはほとんど出ていないようですが、縄文遺跡から出るのは少し不思議です。チャンチンモドキの分布は中国南部や東南アジアですが、日本では鹿児島県と熊本県に自生しています。日本の自生のチャンチンモドキはまだ謎が多く、すごく気になっている植物です。

12チャンチンモドキ.jpg

チャンチンモドキ


 
13チャンチンモドキ.jpg

左から完全に果肉が取れたチャンチンモドキの内果皮、チャンチンモドキの果実、内果皮を取り出した果実。


2021年08月11日

長居植物園案内(8月)

新型コロナウイルス感染症拡大が続いており、2021年8月の長居植物園案内も中止でした。2021年8月11日に植物園の見ごろの植物を観察してきたので紹介したいと思います。
 
8月11日現在、長居植物園は開園していますので、来園されたみなさんの植物観察に役立てていただけると幸いです。また、行事が再開できるようになったら、植物園案内にお越しください!(横川)
 
 
◆ワルナスビ(ナス科)
ナス科の外来植物です。ちょうど花が見頃でした。白い花に大きな黄色い雄しべが5つ付いています。雄しべの葯が袋状になっており、その中に花粉が入っています。葯の先を見ると小さな穴が開いています。ナス科の花は花粉を運ぶハナバチ類が振動を与えて花粉を採集するとされていますが、ハナバチ類がやってきたときにこの穴から花粉が出るのだと思われます。長居植物園や長居公園にはワルナスビがたくさん生えていますが、茎には鋭い刺があり、触ると痛いので観察する際には注意してください。
 
01ワルナスビ.jpg
 
02ワルナスビ.jpg
 
 
◆オキナワウラジロガシ(ブナ科)
長居植物園では様々なブナ科の植物が観察でき、秋にはいろんなドングリが拾えます。ハナガガシ、ツクバネガシ、オキナワウラジロガシが加われば、日本産の主要なブナ科が全部見られるのになぁと思っていたら、いつの間にかオキナワウラジロガシが植えられていました!博物館のすぐ東側のところです。まだ小さな木ですが、花を咲かせ、ドングリを付けるようになったら植物園案内で観察してみたいと思います。参考として、沖縄県の西表島で拾ったオキナワウラジロガシのドングリと長居公園で拾ったシラカシ・クヌギのドングリの比較写真を添えておきます。
 
03オキナワウラジロガシ.jpg
 
04オキナワウラジロガシ.jpg
 
 
◆ジャカランダ(ノウゼンカズラ科)
南米原産の樹木です。ヘメロカリス園の近くに植えられた長居植物園のジャカランダはここ何年かで花がよく咲くようになり、低い枝でも花が観察できるようになりました。花盛りは5-6月だと思うのですがまだ咲いていたので少し紹介します。ジャカランダの花には5本の雄しべがあり、うち1本だけが長くブラシ状の毛が付いています。これは仮雄蕊と呼ばれ、花粉を作らない雄しべです。毛の位置は雌しべの柱頭に近く、受粉を助けているのかもしれません。花を観察できる機会があれば見てみてください。残念ながら今回は花が高い位置にしか咲いていなかったので花の細部の写真はありません。
 
05ジャカランダ.jpg
 
 
◆ヤブラン(クサスギカズラ科)
シャクナゲ園の近くにたくさん植えられています。花のいい時期は過ぎていますが、まだ花が見られました。紫色の小さな花を付け、6枚の花被片が付いています。未熟な黄緑色の種子がたくさん付いていました。丸くてみずみずしいので果実かと思いますが、これは種子です。秋が深まるころになると黒くなり、鳥などの動物が食べて種子が運ばれるようです。
 
06ヤブラン.jpg
 
07ヤブラン.jpg
 
08ヤブラン.jpg
 
 
◆稚樹調査区:エノキやムクノキ
長居植物園の北の端のイチョウが多く植わっているところに稚樹(樹木の子ども)の調査をしているらしい区画があります。普通は草刈りなどの管理がされてたり、人が歩いたりすることで、長居植物園の多くの稚樹は死んでしまっているのですが、草刈りや人の出入りをなくすと何が生えてくるのか実験しているようです。中を見てみると、稚樹の多くはエノキ、その中に少しムクノキが混ざっており、そのほかの樹種はほとんど見られませんでした。区画の上に生えているのはイチョウで、すぐ近くにはエノキやムクノキはありません。エノキやムクノキは鳥が果実を食べて種子を運ぶため、区画の中の稚樹は鳥が運んできた種子に由来するのだと思います。クスノキやセンダンなど、長居植物園にはほかにも鳥が運ぶ種子を付ける樹木はたくさんあります。なぜエノキとムクノキばかりなのかよくわかりませんが気になるところです。そもそも種子が運ばれてこなかったのか、大きなイチョウの真下で少し暗い環境でも生育できる樹種だけ残っているのか、などいろいろ仮説は思いつくのですが・・・。
 
09エノキ・ムクノキ.jpg
 
10エノキ.jpg
エノキ
 
11ムクノキ.jpg
ムクノキ
 
◆ミゾカクシ(キキョウ科)
ハナショウブ園でミゾカクシがたくさん咲いていました。ミゾカクシは田んぼ周りの湿った畔などによく生える植物で、ハナショウブ園の周りもミゾカクシが生える環境としては好適なのでしょう。花は面白い形をしていて、細く5つに分かれた花びらが左右対称の形になっています。花びらの上側についている鎌首のような形をした黒っぽいものが雄しべと雌しべが合着した器官です。観察した花は花粉を出す時期だったようで、花粉を出した後に柱頭を出して受粉できるようになります。ミゾカクシを見る機会があれば、花の状態をよく見てみてください。長居植物園で見られた花色は白色に近い薄いピンクから濃いピンクまで様々でした。
 
12ミゾカクシ.jpg
 
13ミゾカクシ.jpg

 

2021年05月07日

長居植物園案内(5月)

2021年5月の長居植物園案内は新型コロナウイルス感染症拡大防止のために中止になってしまいました。行事が中止になっただけでなく、長居植物園が休園になっているのですが、現在の植物園の見ごろの植物の様子を紹介したいと思います。
最近の植物園案内では密を避けるために、細かいものを参加者の方に回してルーペや顕微鏡で観察する、ということができませんでした。このブログでは特に植物を拡大して見てみることに焦点を置いて、見ごろの植物を紹介したいと思います。このレポートをみなさんの近所での植物観察にも役立てていただけると幸いです。また、状況が落ち着いたら、ぜひ植物園案内に来てください!(横川)




◆クスノキ(クスノキ科)
 博物館から長居植物園に出てすぐのところに大木が何本かあるため、長居植物園案内ではおなじみの樹木です。一年を通していろいろ観察しています。先月は新しく出た葉と昨年出た葉の違いなどを見ましたが、今月はちょっと遅いですが花が観察できました。クスノキ科の花は変わっていて、おしべに穴が開いています。6枚の花被片(花びら)の内側にはおしべがたくさん生えており、生えている場所によって形が異なります。おしべの根本には腺と呼ばれる黄色くて丸いものがあります。花の中心には1本のめしべがあります。図鑑には花被片は6枚と書いているのですが、長居植物園で観察しているとときどき花被片が8枚の花が見つかります。このように例外的な形を見つけるのも植物観察の楽しみの一つです。


01クスノキ.jpg


02クスノキ.jpg


03クスノキ.jpg




◆カシの仲間の葉裏の比較
 春は展葉の季節。長居植物園の常緑樹林の中や周りを歩くと、ドングリを付ける常緑のカシ類がちょうど展葉していてきれいでした。この時期、枝の先端で柔らかい葉を付けている部分は今年出た枝で、そのすぐ下側が昨年出た枝や葉です。今年出たばかりの若い葉はその硬さだけでなく、色や表面の様子も昨年出た成葉と異なります。シラカシ・アラカシ・アカガシ・ウラジロガシ・イチイガシのカシの仲間5種について、成葉と若い葉の葉裏の様子を比べてました。シラカシは成葉にも若い葉にも毛がなく、若い葉は鮮やかな赤色をしていました。アラカシは成葉にも若い葉にも毛が生えており、若い葉は少し赤色。アカガシは若い葉にのみ柔らかい毛があり、これはすぐに取れて落ちるようです。写真もすでに毛が取れはじめています。ウラジロガシは成葉にも若い葉にも毛がありましたが、若い葉の方が毛がきれいです。イチイガシも成葉にも若い葉にも毛がありましたが、若い葉の方が毛が少なく、成葉になると毛の密度が上がるようです。ウラジロガシの成葉の葉裏はあまり毛のイメージがなく、また図鑑の記述でも成葉になると毛がなくなりそうなことが書いてあるのですが、観察した成葉には生えていました。野生のウラジロガシもよく見てみたいと思います。これらの毛の様子はルーペで十分見えますので、ルーペをお持ちの方は身近な樹木の葉を拡大して見てみてください。


04カシ類比較.jpg




◆ネモフィラ(ムラサキ科)
 大型連休中に青色のじゅうたん!を狙ってライフガーデンに植えたのだと思うのですが、残念ながら休園になってしまいました。こういうたくさん植えて楽しむ植物は、きれいだなぁで終わりがちなのですが1つ1つの花を詳細に見ると楽しかったりします。ネモフィラの花に近づいてよく見てみると、花びらに5つ、毛が生える場所があります。また、花柱(めしべの軸)に毛が生えており、子房にはかなり高密度に毛が生えているのですが、おしべにはまったく毛がありません。こういった受粉に関わる器官の周りに生える毛は花に来る昆虫との関係があったりしそうですが、よくわかりません。よく見ると生えている毛も植物のお楽しみポイントです。


05ネモフィラ.jpg


06ネモフィラ.jpg




◆マツバウンラン(オオバコ科)
 日当たりのよい造成地などに群生することが多い外来植物です。葉も茎も細く、華奢な感じがしますが、花茎を長く伸ばして植物体の割に大きな花をつけます。観察した日はラベンダー園の周りにたくさん花を咲かせていました。近寄って花をよく見てみると面白い形をしています。紫色のイメージがあると思いますが、花の真ん中の部分は白色です。花を横から見てみると距(きょ)と呼ばれる後ろに突き出た部分があります。この距、中に蜜でも入ってるのかなぁと思ったのですが、アメリカ合衆国でマツバウンランの研究をした論文1には、温室で栽培した花には蜜がなかったと書いてあります。また、その研究によると昆虫がやってきそうな花ですが、主に自家受粉で種子を作っていそうとのことでした。


07マツバウンラン.jpg


08マツバウンラン.jpg


09マツバウンラン.jpg




◆イスノキ(マンサク科)
 長居植物園の一番北側に氷期間氷期植物群と呼ばれるエリアがあります。これは、第四紀の暖かい間氷期と寒い氷期を繰り返していた時代の地層から出てくる植物に関連したものが植えられているエリアです。このエリアには間氷期の地層から化石が出るというイスノキが植えられています。イスノキをよく見てみると、丸く膨らんだ部分がある葉に気づきます。これはアブラムシが作った虫こぶです。アブラムシがつくことで葉の形が変わってしまっており、この中にアブラムシがすんでいます。この虫こぶは表から見ると丸いのですが、裏から見ると先がとんがっているのも特徴です。虫こぶを割ってみると中にはアブラムシの幼虫がたくさん入っていました。イスノキは、葉以外にも虫こぶができ、虫こぶの種類が多い植物です。西宮市の約40万年前の間氷期の地層からはイスノキの枝にできる丸くて大きな虫こぶの化石がでています2。長居植物園のイスノキの説明板によると、イスノキの葉の化石で穴が空いているものがあり、それは葉にできた虫こぶなのではないかとのこと。


10イスノキ.jpg


11イスノキ.jpg


12イスノキ.jpg




◆ワタゲツルハナグルマ(キク科)
 大池の北側の木道わきでワタゲツルハナグルマの鮮やかな黄色い花が満開でした。学名のカタカナ読みでアークトセカなどとも呼ばれる外来植物で、匍匐枝を良く伸ばして増えるためグラウンドカバーにも使われるようです。長居植物園でもこの一画を覆うように生えています。大きくてきれいな黄色い花に目が行きがちですが葉の裏が真っ白なのも観察ポイントです。外来植物の図鑑に載っているのですが、私は野外で野生化してるなぁというのはまだ見たことがありません。大阪で野生化していそうなワタゲツルハナグルマを見つけたらぜひ教えてください。


13ワタゲツルハナグルマ.jpg


14ワタゲツルハナグルマ.jpg


15ワタゲツルハナグルマ.jpg




◆アサザ(ミツガシワ科)
 大池の北側に最近植えられたと思われます。アサザは異型花柱性と言って、花によっておしべ・めしべの長さが異なります。めしべが長い花を長花柱花、めしべが短い花を短花柱花、おしべ・めしべの長さが同じぐらいのものと等花柱花と呼びます。長居植物園に植えられているものは、観察した範囲では長花柱花ばかりでした。アサザは日本各地の水辺で少なくなっており、各地のレッドデータブックに絶滅危惧植物として記載されています。大阪では情報不足として扱われていて、その現状がよくわかっていません。アサザは観賞用の水生植物として広く流通していることもあり、自生地が見つかった場合に自生かどうかの判断が難しく、各地に栽培株が逃げ出したと思われるアサザの個体群があります3。最近、大阪で見つかったアサザの個体群も自生なのか栽培株が逃げ出したものなのかよくわかっていません4。意図的・非意図的に関わらず、人が生き物を逃がしてしまうことで、野生生物の実態がわからなくなる、ということはとてもよくないことなので、お家で育てている生き物は絶対に逃がさないように注意してください。


16アサザ.jpg




◆ムラサキサギゴケ(サギゴケ科)
 様々な園芸植物が植えられている花壇にムラサキサギゴケも植えられていました。ムラサキサギゴケは大きな花を付け、走出枝と呼ばれる横に這う茎をのばすのが特徴です。ちょうど花壇の枠に走出枝をのばしており、その様子がよくわかりました。ムラサキサギゴケの花を拡大して見てみましょう。花の真ん中には黄色い点々が出ている部分があり、よく見るとたくさん毛が生えています。花を分解してみると、おしべは4本あり、2本ずつセットになっていました。めしべは1本で、めしべの先、柱頭は上下に2つに割れており、なんだか口を開けているような形になっています。この、口を開けたようなめしべに触れるとめしべが閉じます。野外でムラサキサギゴケを見つけたときに覚えていたら触ってみてください。野生下でめしべに何かが触れる、という状況は花に来る昆虫がやってきたときだと思います。ムラサキサギゴケを観察していて、めしべが閉じている花を見つけたら、直近でその花に昆虫がやってきたということだと思います。
 ちなみに、最近の図鑑では、この植物の呼び方はムラサキサギゴケという和名ではなくサギゴケという和名が使われていることが多いです。ここではあえてムラサキサギゴケという和名を使いましたが、その理由については、大阪市立自然史博物館の友の会会誌Nature Studyに書きました5。興味がある人は読んでみてください。


17ムラサキサギゴケ.jpg


18ムラサキサギゴケ.jpg


19ムラサキサギゴケ.jpg


20ムラサキサギゴケ.jpg




1 Crawford P.T., Elisens W.J. 2006. Genetic variation and reproductive system among North American species of Nuttallanthus (Plantaginaceae) American Journal of Botany 93(4):582-591. https://doi.org/10.3732/ajb.93.4.582
2 Tsukagoshi M., Sawada K., Akimoto S. 2019. A fossil aphid gall from the middle Pleistocene sediment in Hyogo Prefecture, western Japan. Entomological Science 22(3):270-274. https://doi.org/10.1111/ens.12370
3 藤井伸二・上杉龍士・山室真澄 2015. アサザの生育環境・花型・逸出状況と遺伝的多様性に関する追試.保全生態学研究 20(1):71-85. https://doi.org/10.18960/hozen.20.1_71
4 志賀 隆・武林周一郎 2008. 淀川本流沿いでアサザを発見.Nature Study 54(12):164-165.
5 横川昌史 2019. ムラサキサギゴケの和名の変遷.Nature Study 65(12):154-157.

2020年12月26日

植物園案内動物・昆虫編(12月)

12月の植物園案内動物・昆虫編は、新型コロナの感染拡大のため残念ながら中止となってしまいました。楽しみにしていただいていたことと思いますので、登場する予定だった虫について、少し写真で紹介したいと思います。冬越しの虫探しの参考になれば幸いです。植物園への入園は可能ですので、人との十分な距離を取りながら、お楽しみいただければと思います。(昆虫研究室・松本)


虫は自分で体温をあげるということができません。そのため多くの虫は寒い冬は物陰に隠れてじっとやり過ごすという作戦をとります。冬の虫の観察のポイントはその隠れ家を探すことにあります。卵で冬を越すもの、幼虫や蛹あるいは成虫で越すもの、グループや種ごとの細かい作戦の違いも観察してみると面白いです。さあ、植物園を歩いてみましょう。


まず木の葉についたクマゼミの抜け殻が見つかりました。
1226m1.jpg


クマゼミが活動するのは夏ですから、その頃からずっとくっついたままだったのでしょう。クマゼミは羽化するときにしっかり体を支えることができるように鋭い爪を持っています。そのため冬になってもあるいは、春になっても抜け殻が落ちずに残っていることがあります。


抜け殻のお腹を見てみると、中あしと後ろ脚の付け根に突起があります。長居公園で見つかるセミの抜け殻でこの突起があるのはクマゼミだけです。
1226m2.jpg


夏の間うるさく鳴いていたクマゼミですが、寒い冬はどうやって過ごしているのでしょう?それを探るのに落ちている枝を拾って調べてみましょう。少しささくれだっているものが見つかりませんか?
1226m3.jpg


これはクマゼミが卵を産んだあとです。クマゼミのメスはお腹の先に硬い産卵管を持っていてこれで、枯れ枝に穴をあけて、底に卵を産みこみます。一つの穴に数個ずつ、少しずつ移動しながら繰り返すので、規則的に傷が付きます。
1226m4.jpg

1226m5.jpg


産卵は夏の終わりに行われて、1年目はそのまま冬を越します。次の年の梅雨時に孵化することが知られています。
1226m6.jpg

1226m7.jpg
(7月に撮影)


卵から成虫になるまで何年かかかるのは確かですが、正確な年数はよく分かっていません。少なくとも3-4年、個体や天候によってばらつきが出てくるのではないかと考えられています。


ツバキなどの常緑樹の葉では、キモグリバエの1種(Rhodesiella sp.)が越冬しているのが目につきます。集団になることが多く、ときに葉っぱを埋め尽くすような大集団になることがあります。
1226m8.jpg


更に歩いているとヒメクダマキモドキが見つかりました。
1226m9.jpg


寒さで動きはとても鈍いですが、確かに生きています。このあたりで見られるキリギリスのなかまでは、成虫で越冬するクビキリギスなどを除いて、最も遅くなで見られる種です。写真はメスで、木の皮の下に扁平な産卵管を差し込んでとても薄い卵を産みます。少し光沢があってとてもきれいな卵です。
1226m10.jpg


園内にたくさん植わっているクスの葉を見ると部分的に茶色く変色しているものがあります。これはクズベニヒラタカスミカメという中国からの外来カメムシが汁を吸った跡です。寒くなるにつれて数を減らすのですが、まだ生きているものが見つかりました。とてもきれいなカメムシですね。
1226m11.jpg


栽培園ではアブラナの仲間も植えられています。これにはモンシロチョウの幼虫がついていることがあります。中齢の幼虫が見つかりましたが、このまま冬を越えることができるのか気になるところです。1226m12.jpg


園内にはところどころエノキがあります。エノキを見つけたらゴマダラチョウの幼虫を探してみましょう。エノキの根もとの落ち葉を少しずつめくっていくと茶色い幼虫が見つかります。正面から見ると、角が生えていてちょっと可愛いですね。
1226m13.jpg

1226m14.jpg
春になるとまたエノキの幹を登って、柔らかい葉を食べてぐんぐん大きくなります。成虫は名前の通り黒と白のマダラの精悍なチョウです。


プラタナスの樹皮の下には少し隙間があっていろいろな虫が隠れています。
プラタナスグンバイというこの植物の汁を吸うグンバイムシがよく隠れています。


1226m15.jpg
小さい虫ですが、虫眼鏡で見るとものすごい精巧なステンドグラスのような体の作りをしています。


また少し大きな隙間にはクロスズメバチのオスが頭を突っ込んでいました。
1226m16.jpg

1226m17.jpg

残念ながら冬は越せないでしょうが、長居公園ではずいぶん久しぶりのクロスズメバチの記録になります。


木の幹にはヒロヘリアオイラガのマユがついていました。幼虫は緑のウミウシみたいな形のトゲトゲのある芋虫で、触ると刺されてとても痛いです。マユのヘリに糸をはってゴミをつけるので、輪郭がぼやけて目立たなくなっています。

1226m18.jpg
成虫が羽化したあとのマユは他の虫の隠れ家にもなっています。クロウリハムシが隠れているのも見つかりました。
1226m19.jpg

1226m20.jpg


木の枝にぶら下がってブラブラしているミノムシも見つかりました。中国から入ったヤドリバエによってとても数が減ったオオミノガのミノです。口のところで糸を枝にぐるぐると巻いてぶら下がっているのが特徴です。

1226m21.jpg


寒い冬ですが、外に出れば隠れている虫が色々見つかります。暖かい日を狙って、探しに出かけましょう。

2020年12月19日

植物園案内(12月)

大阪府の新型コロナ警戒信号が赤色になったため、博物館の行事はすべて中止になりました。残念ながら12月の長居植物園案内も中止です。その代わりとして12月18日に観察した長居植物園の植物を紹介します。(横川学芸員)


1. トキワガマズミ(ガマズミ科)
 地中海地方原産の低木で、最近、長居植物園に植えられたように思います。今年はよく花が咲き、よく果実がなっていました。紺色で金属光沢のある硬い果実をつけます。最近の研究で、この金属光沢のある紺色は色素に由来するのではなく、脂質の多層構造による構造色だということがわかったそうです。クジャクの羽やモルフォチョウやオオセンチコガネの翅など、動物では構造色はよく知られていますが、植物では珍しいようです。おそらく鳥がこの果実を食べるのだと思いますが、今のところ、あまり食べられた形跡がありません。構造色と鳥が食べることと何か関係していたら面白いので、しばらく様子を見たいと思います。

202012_1.jpg
トキワガマズミの花。

202012_2.jpg
トキワガマズミの果実。


2. サザンカ(ツバキ科)
 サザンカというと、垣根などに植栽される濃いピンクの花のイメージがあるかもしれません。そのピンクの花の多くは、ヤブツバキとサザンカを掛け合わせた園芸種で、花びらが1枚ずつ落ちます。長居植物園の照葉樹林・ツバキ園の中で見られる一重のサザンカは、花びらが白色、花びらが1枚ずつ散る、若枝や葉柄や子房に毛がある、など野生のサザンカの特徴をよく備えているが、何かしら園芸用に改良されているように思います。新鮮なサザンカの花には香りがあり、虫が花粉を運びます。

202012_3.jpg
サザンカの花。

202012_4.jpg
サザンカの葉柄。毛が生えている。

202012_5.jpg
サザンカの子房。毛が生えている。



3.センダン(センダン科)
 ちょうど落葉中の個体がありました。樹冠近くの高い枝は葉を落とし、低い枝にはまだ緑の葉がついていました。センダンは複葉と言って、たくさん小葉からなる大きな葉をつける樹木ですが、落葉したての枝を見ると葉の軸はまだ木の上に残っており、小葉が先に落ちるようです。地面を見てみると葉の軸がたくさん落ちていました。今年も果実がよくなっています。センダンの果実は鳥が食べますが、食べられる時期は遅く、おそらく年明けになっても枝にたくさん果実をぶら下げた姿が観察できると思います。

202012_6.jpg
落葉したセンダンの枝。葉の軸がまだ残っている。

202012_7.jpg
青い小葉が残っているセンダンの枝。

202012_8.jpg
落下した葉の軸。

202012_9.jpg
センダンの果実。


4.シナヒイラギ(モチノキ科)
 赤い果実がたくさんついていました。四角い葉もつけるのが特徴で、葉の縁にある棘はとても硬く触ると痛いので注意してください。雌雄異株なので果実がなっている雌株と果実がなっていない雄株があるのも見どころです。赤くて目立つ果実を付けていますが、なかなか鳥に食べられません。鳥が好まないということは、長い期間、赤い果実を楽しめるということで、園芸的には優秀と言えるかもしれません。ちなみにヒイラギと付きますが、ヒイラギとは全然違う植物です。ヒイラギはモクセイ科で赤い果実は付けません。

202012_10.jpg
シナヒイラギ。


5. カワラナデシコ(ナデシコ科)
 万葉の小路で、季節外れのカワラナデシコが咲いていました。カワラナデシコは秋の七草のひとつにも数えられることもあって、夏から秋に花を咲かせるが普通です。12月になっても花が咲いているのはあまり見たことがありません。この手の草地に生える植物は、茎が刈られたりした後にわきから芽を出して、遅れて開花するということがあるのですが、根本を観察してみたところ、切られた痕跡はありませんでした。

202012_11.jpg
カワラナデシコ。


6.イチョウ(イチョウ科)
 イチョウの落葉が進んで、黄色いじゅうたんになっていました。葉を落としたイチョウの枝をよく観察すると、長く伸びた枝(長枝:ちょうし)からゴツゴツした短い枝(短枝:たんし)が伸びているのがわかると思います。短枝は葉がたくさん付く枝で、葉が付いた分しか毎年伸びないため、寸詰まりになりゴツゴツした形になります。長枝はあらたな空間へ伸びていくための枝で、短しは葉をたくさん付けてその場で光を受けるための枝のようで、イチョウの株の中でも枝が役割分担をしていると言えるでしょう。

202012_12.jpg
イチョウの落葉。

202012_13.jpg
イチョウの長枝と短枝。


7. チャンチンモドキ(ウルシ科)
 昨年は果実の実りが悪かったのですが、今年はよくなったようで、たくさん果実が落ちていました。果実をよく見ると先端のほうに点が5つあります。少しねばねばした果肉を剥くと、中から硬いタネのようなものが出てきますが、これにも5つの穴があります。この穴から芽が5つ出てきます。日本では鹿児島、熊本県など分布が限られますが、中国南部や東南アジアにも分布し、熱帯の方では哺乳類が果実を食べて種子散布するようです。

202012_14.jpg
完全に落葉したチャンチンモドキ。

202012_15.jpg
チャンチンモドキの果実。

202012_16.jpg
チャンチンモドキの果実の中身。


8. サキシマフヨウ(アオイ科)
 秋に咲くハイビスカスの仲間で花が減ってきた季節の植物園に彩りを添える植物。さすがに12月になると花は咲いていませんでしたが、果実が熟して種子ができていました。果実を割って中を見てみると、毛だらけの種子が入っています。この毛がどのような役割をしているのか気になるところです。

202012_17.jpg
サキシマフヨウの果実。

202012_18.jpg
サキシマフヨウの種子。


9. クスノキ(クスノキ科)
 大きなクスノキの下にクスノキの枝がたくさん落ちていました。これはおそらくカラスの仕業によるものです。大阪ではカラスがクスノキやナンキンハゼの枝を落とす、という行動がよく見られます。クスノキ側の立場からすると、今、枝を落とされると来年に咲く花芽を落としていることになるので、来年の花数が減ることになります。果実だけ食べてくれた方がクスノキにとっては良いのでしょうけど、かといってすべての枝が落とされるということもないので、実際、どれぐらいのダメージなのかはよくわかりません。
 動物研の和田学芸員がカラスの枝落とし行動についてホームページにまとめています。カラスの枝落とし行動データベース↓
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/wada/DataBase/TwigDropping.html

202012_19.jpg
クスノキの落枝。カラスの仕業らしい。

202012_20.jpg
クスノキの落枝。果実が付いたまま落とされている。


10. モクビャッコウ(キク科)
 葉に白い毛がたくさん生えていて、とても美しく、冬も葉をつけているので園芸用として割と利用される植物です。こういった銀白色のきれいな葉を観賞する植物のことを園芸業界ではシルバーリーフなどと呼んでいます。葉をかき分けて根元を見てみると、太く木化しており、低木であることがわかります。東アジアの亜熱帯から熱帯に自生し、日本では南西諸島などの海辺の岩場に生えます。もう少し早い時期だと花は黄色できれいなのですが、観察したときは花期は終わって茶色くなっていました。

202012_21.jpg
モクビャッコウ

2020年11月13日

視覚障害者接遇研修

博物館にはたくさんのお客さんがいらっしゃいます。
その中には、視覚障害を持つ方もおられます。視覚障害を持つお客さんが手助けを必要とされたときに博物館のスタッフが適切に対応できるよう、11月12日の午後に、社会福祉法人日本ライトハウスよりお二人の講師を派遣していただいて、「視覚障害者接遇研修」を行いました。


自然史博物館の事務職員や学芸員、受付スタッフや警備員、ショップスタッフ、長居植物園スタッフなど、約20名が研修を受けました。


視覚障害を持つ人を手助けするときに必要な事や、博物館の施設や展示を説明するときに気をつけることをご教示いただきました。また、スタッフが依頼を受ける可能性があるのが、お手洗いへの案内です。


どのようなことに気をつけたらよいか、実際にお手洗いで解説していただきました。
さらに、講師のお一人が、しばしば博物館や美術館に行くという視覚障害当事者の方で、行ってみてがっかりした博物館の対応、とても感動した博物館の設備や対応などをお話されました。


参加者一同、真剣に聞き入りました。明日からの実践でも役に立つだけでなく、博物館を将来どのように変えていったらよいかを考えるのに、とても参考になる研修でした。研修で伺ったことを元に、視覚障害を持つ方にも安心して博物館に遊びにきていただけるよう、時間がかかるかもしれませんが、少しずつ工夫をしていきたいものです。


11141.jpg
研修の様子

11142.jpg
展示室でどのように解説したらよいか、ご教示いただきました


11143.jpg
緩いスロープで視覚障害者のてびきを実際にやってみました

2020年11月09日

長居植物園案内(11月)

新型コロナウイルス拡大防止のため、毎月、違った方法で植物園案内を開催しています。今月は、なるべく密にならないで済むものを観察しながら、通常通りに近い植物園案内を目指しました。植物園案内は申込制などにはせず、なるべく来館した方がみなさん楽しんでもらえるような形で続けていきたいと考えています。ご協力、よろしくお願いします。(横川)


◆ケヤキ(ニレ科)
葉が黄色く色づいてきていましたが、よく見ると枝の先の一部の葉は特に茶色くなっていました。葉が茶色くなった枝は春に2週間ほど早く展葉した枝で、花が付いていた枝でもあります。この枝には果実が付いており、種子散布される際には枝ごと落ち、一緒に付いている葉は翼の役割を果たします。落ち葉の中を探してみると葉と果実が付いたケヤキの小枝を見つけることができました。


◆クスノキ(クスノキ科)
クスノキの枝をよく見ると、茶色い斑点が出ている葉があります。これはクスベニヒラタカスミカメという外来のカメムシが葉の汁を吸った跡です。枝をさらによく見てみると、クスベニヒラタカスミカメの吸汁跡が付いている葉と付いていない葉があり、付いていない葉はより枝先に集まっているように見えました。クスノキは春先に展葉しますが、夏になると新たに枝と葉を出す、いわゆる土用芽を出します。より枝先の葉が吸汁されていないというのは、おそらく土用芽に由来する葉は吸汁されていないということなのでしょう。クスベニヒラタカスミカメの発生の消長と土用芽の出るタイミングがうまくずれていたのだと思います。
クスベニヒラタカスミカメについては昆虫研究室の初宿さんのページに詳しく載っています。
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/shiyake/Mansoniella-cinnamomi.html


◆カツラ(カツラ科)
カツラの葉も黄色く紅葉していました。カツラの落ち葉の匂いをかいでみるととてもいい香りがしました。なぜ落ち葉からいい香りがするのかはよくわかりません。大阪近郊の山だとタカノツメの落ち葉もいい香りがします。


◆シナアブラギリ(トウダイグサ科)
ちょうど大きな実がぶら下がっていました。シナアブラギリによく似た植物でアブラギリがありますが、葉柄の先端の腺の形を比べると違いがわかります。シナアブラギリの腺は葉柄にくっついていますが、アブラギリの腺には柄があり葉柄の先から飛び出します。腺点を観察しているとアリがやってきて蜜をなめていました。同じトウダイグサ科のアカメガシワの葉にも蜜を出す腺があり、アリがやってきます。

11植写真1.jpg
シナアブラギリの葉

11植写真2.jpg
シナアブラギリの葉柄の先の腺点


◆トチュウ(トチュウ科)
トチュウの一番の特徴は葉や果実をゆっくり引っ張って裂いてみるとゴム状の糸が出てくることです。葉の切片を作って、観察してみると、このゴム状の糸は葉の中の管から出ているようでしたがどういう役割をしているのかはわかりません。退職した植物化石担当の塚腰学芸員が言うには、トチュウの仲間の化石もゴム状の糸が出てくるようです。


◆アオギリ(アオイ科)
果実がたくさんなっていました。たくさんぶら下がっているボート状の果実、1個1個が一つの花に由来するのではなく、4個もしくは5個が1つの花に由来します。よく見ると小さな柄ごとに4個もしくは5個の果実がセットになっているのがわかります。花のころは5個の雌しべが合着しており、受粉後、果実として成長していく過程で分かれていきます。一つ一つの果実は筒状なのですが、熟すころには開いてボート状になり、縁に種子を付けた状態になります。この果実を投げてみるとくるくると回転しながら落下していくことから、風によってある程度種子が運ばれるようです。

11植写真3.jpg
アオギリの果実

11植写真4.jpg
アオギリの種子


◆アメリカスズカケノキ(スズカケノキ科)
樹名板はモミジバスズカケノキになっていましたが、おそらくアメリカスズカケノキではないかと思います。枝を眺めてみると丸い果実の塊がぶら下がっているのがわかりますが、どの枝もぶら下がっているのは1つだけでした。アメリカスズカケノキは果実が1だけぶら下がり、スズカケノキは果実が3から7個ぶら下がります。モミジバスズカケノキはアメリカスズカケノキとスズカケノキの雑種に由来するとされ、果実が1-3個ぶら下がります。これらの植物はプラタナスとも呼ばれ、街路樹などとして親しまれています。

さて、アメリカスズカケノキの葉を見てみると葉全体が白くなっていました。これは斑入りの品種でも紅葉でもなくプラタナスグンバイという外来のグンバイムシ(軍配の形をしているためこのような名前で呼ばれている)の仲間に葉を吸われた跡です。葉の裏や樹皮の裏を探してみるとプラタナスグンバイがたくさん見つかりました。


11植写真5.jpg
プラタナスグンバイに吸汁されたアメリカスズカケノキの葉


11植写真6.jpg
葉の裏で見つけたプラタナスグンバイ


◆ハルニレ(ニレ科)
北海道などに多い樹木です。大阪の周辺では、ハルニレに近縁なアキニレをよく見ます。アキニレに比べてかなり葉が大きく、左右非対称の葉形が特徴です。幹から萌芽枝が出ており、萌芽枝を見てみると四方向にコブができていました。このように若い枝にコブができるものをコブニレと呼び品種として分けられています。コブの出た枝を鋏で切ってみると、中心に丸い枝があり、その周囲にコルク質のコブができていることがわかりました。つまり、枝がぼこぼことコブになったのではなく、枝と別組織としてコブを作っているようです。このコブは外敵から枝を守るために作られるのでしょうか、役割はよくわかりません。

11植写真7.jpg
左右非対称で大きなハルニレの葉

11植写真8.jpg
萌芽枝にできたコブ


◆ヒメガマ(ガマ科)
大池のほとりに湿性植物帯があり、ヒメガマが結実していました。茶色いソーセージのような雌花穂の上をよく見ると細い茎が残っています。緑の細い茎の上部の茶色い部分はもともと雄花穂が付いていた部分です。ヒメガマの特徴は、このように雌花穂と雄花穂が離れ、間に茎がむき出しになることです。大阪周辺に生育するガマ科の植物はヒメガマ以外にガマとコガマがありますが、この2種は雌花穂と雄花穂がくっついて咲きます。


◆ゴキヅル(ウリ科)
ヒメガマの茎に巻き付いてたくさん果実を付けていました。ゴキヅルは水辺、特に河川の氾濫原などに生育するつる植物で、大阪では淀川や石川に生育しています。果実は上下2つの部分からなり、中に種子が入ってます。果実が熟すとふた付きのお椀のようにきれいに分かれるため、合器(ごき)のようなつるということでゴキヅルと呼ばれています。

2020年11月05日

長居植物園案内(10月)

新型コロナウイルス拡大防止のため、毎月、違った方法で植物園案内を開催しています。今月は、なるべく密にならないで済むものを観察しながら、通常通りに近い植物園案内を目指しました。植物園案内は申込制などにはせず、なるべく来館した方がみなさん楽しんでもらえるような形で続けていきたいと考えています。ご協力、よろしくお願いします。(横川)


◆アラカシ(ブナ科)
少し離れて遠目にわかることを観察しました。今の時期のアラカシ全体を見ると、枝の先にドングリが付いているのがわかります。アラカシは春に咲いた花が結実して、その年の秋にドングリが大きくなります。花は枝の先に咲くので、ドングリも枝の先に付きます。これが、同じカシの仲間でもウラジロガシやアカガシのように、春に咲いた花が、翌年の秋にドングリになる種類だと、ドングリは枝の先ではなく、その年伸びた枝の元に付きます。そうなると遠くから見たドングリの見え方が変わってきます。


◆シリブカガシ(ブナ科)
 日本に自生するドングリを付ける木は春に花を咲かせるものがほとんどですが、シリブカガシは日本産のドングリを付ける木の中で唯一秋に花が咲きます。ドングリが大きくなるのも秋なので、花とドングリが同時に見られます。観察したシリブカガシはちょうど花の咲き始めで、雄しべが飛び出してブラシ状に見える雄花序と丈夫そうな軸に雌花がたくさん付いた雌花序が見られました。ドングリと花序の位置関係を見てみると、今年咲いている花は枝の先に、ドングリ(すなわち去年咲いた花)は花序が付いた枝の元に付いていました。このような位置関係からも、今なっているドングリがいつ咲いた花に由来するのかがわかります。


202011写真1.jpg
ドングリと花を同時につけたシリブカガシ

202011写真2.jpg
満開のシリブカガシ


◆カゴノキ(クスノキ科)
樹皮がうろこ状に剥がれて、シカの子どものような独特の模様をしていることからカゴノキ(鹿子の木)と呼ばれています。樹皮が独特な樹種は、樹皮で覚えてしまいがちですが、樹皮以外もよく見てみましょう。葉は少し薄くて裏が白っぽく、先の方の枝は黒っぽくなり、尖った冬芽を付ける、などの特徴があります。低地の照葉樹林に生え、大阪だと岬町などに行事で行ったときによく見られます。


◆ウラジロガシ(ブナ科)
ツバキ園・照葉樹林内を歩いていると、ドングリと葉が付いた枝が落ちていました。葉を見てみると、細長くて裏が白く、鋸歯が強いことからウラジロガシの枝です。ドングリをよく見ると、昆虫が産卵した跡が残っており、これはチョッキリの仲間が産卵して、枝を切って落としたものでしょう。枝の切り口が少しささくれていながらもきれいなので、チョッキリの仲間が落としたことがわかります。


◆アカガシ(ブナ科)
今日観察したアラカシやウラジロガシに比べて、葉の縁に鋸歯がないのがアカガシの特徴です。最近、植えられたこともあってまだドングリを付けていませんでしたが、枝をよく見ると雌花序が残っていました。これはこの春に咲いたもので、きっと来年にはドングリを付けるのでしょう。


◆ハマビワ(クスノキ科)
 海岸の斜面や森林に生える樹木。葉の裏や葉柄に黄色っぽい毛がたくさん生えるのが特徴です。ちょうど花が咲いている時期で、枝のくっつくように花が密に咲く様子が観察できました。


202011写真3.jpg
花を咲かせたハマビワ


◆ソテツ(ソテツ科)
日本では主に南西諸島に自生する裸子植物です。南西諸島では救荒植物として利用されていたとされ、種子の中身を水にさらして有毒成分を抜いてから食用にしていたようです。ソテツの周りをよく見ると小さなチョウが飛んでいましたが、これはクロマダラソテツシジミというソテツを食べるシジミチョウの仲間です。

202011写真4.jpg
ソテツの葉とクロマダラソテツシジミ


◆ヒガンバナ(ヒガンバナ科)
キッチンガーデンの近くに、赤・白・黄色のヒガンバナ類が並んで生えていました。赤色のものがヒガンバナで、黄色のものがショウキズイセンです。白色のものはシロバナマンジュシャゲと呼ばれ、ヒガンバナとショウキズイセンの雑種だと言われています。シロバナマンジュシャゲは九州南部などに多いらしいです。

202011写真5.jpg
白色のシロバナマンジュシャゲと赤色のヒガンバナ


◆ビワ(バラ科)
ハマビワと比較してみました。葉の裏を見てみると、確かにハマビワと似ているような気がします。花の付き方も含めて似ているような気がしますが、ビワはバラ科でハマビワはクスノキ科。全然異なるグループの植物です。ビワは冬に咲くため、花が少ない時期に見られる貴重な花でもあります。


◆イヌビワ(クワ科)
 これも「ビワ」という名前が付くが、ビワの仲間ではありません。果実の形を見ると確かにビワに似ているような気がします。イヌビワコバチという小さなハチが受粉を担っています。


◆スイフヨウ(アオイ科)
八重咲になるハイビスカスの仲間で、咲き始めは白色だが、気温に応じて花の色がピンクに変わります。下見で見たときは白かった花が、ピンク色になっていました。気温が高くなるとアントシアニンが合成されて赤っぽい色になるようです。隣に植えられているフヨウの花を見てみると、雌しべが5本合わさって、その軸を取り巻くように雄しべが生えていました。八重咲の花びらは雄しべが花びらになったものなので、スイフヨウの中心に花びらを絞ったような花の形は、もともとの雄しべの並びを見るととても理解しやすいです。

202011写真6.jpg
スイフヨウ


◆シコンノボタン(ノボタン科)
濃い紫色の花弁が5枚あり、長い雄しべが5本、短い雄しべが5本あります。よく見ると真ん中に雌しべが1本あります。雄しべに触っても花粉はつきませんが、先の方の鎌状に曲がった部分が葯で、葯の先端に穴があり、そこから花粉が出てくるようです。雄しべの曲がっている所が白く突起になっているが、これは虫を呼ぶための構造なのでしょう。実際に虫が来るときにどうなっているのかはよく観察してみないとわかりません。

202011写真7.jpg
シコンノボタン


◆ハリエンジュ(マメ科)
一昨年の台風で、植物園案内のあちこちにギャップができました。ギャップは、林の中で木が倒れて空があいて見える部分のことで、ギャップができると林床まで光が届いて、様々な木が生えてきて森林の世代交代が進みます。ギャップに生えている木を見てみると、アカメガシワやセンダン、エノキなどが確認できましたが、観察した場所で特に目立っていたのはハリエンジュでした。観察した場所の近くにハリエンジュの大木があり、そこから伸びてきた根から出てきた根萌芽で増えているようです。生えていたハリエンジュは直列に並んでおり、土を掘ってみると横に長く伸びる根も確認できました。

2020年09月07日

長居植物園案内(9月)

新型コロナウイルス拡大防止のため、10人ずつぐらいのグループに分かれて、8分おきぐらいに出発することで密になり状況を避けました。そのため、いつもよりも観察時間は短くなりましたが、学芸員あたりの参加者数は少なくなり、人の密を避けながら、内容は密な観察会ができたのではないかと思います。来月以降も新型コロナウイルスの状況に応じて変則的な植物園案内になると思いますが、ご協力、よろしくお願いします。(佐久間・長谷川・横川)


◆エンジュ(マメ科)
 先月の植物園案内では白い花がたくさん落ちており、花の構造などを観察しました。一ヶ月経って、花はわずかに残っており、数珠のような形の果実が熟しはじめていました。エンジュの果実はさやがジューシーで鳥が食べに来ますが、まだ少し硬かったです。12月の鳥スペシャルの回には鳥との関係なども解説する予定です。


◆キク科の雑草(キク科)と様々な稚樹
 2018年の台風21号がやってきたときに長居植物園内でも多くの木が倒れました。木が倒れると林の高いところを覆っていた枝葉がなくなり、見上げるとぽっかりと空があいて見えます。林の中で木が倒れて空があいて見える部分のことを生態学の専門用語でギャップと言います。ギャップができると地面が明るくなるので、いろんな植物が生えてきます。観察したギャップではヒメムカシヨモギやオオアレチノギク、セイタカアワダチソウといったキク科の雑草がたくさん生えていました。これらは風で種子が飛ぶため、ギャップができた後に種子が飛んできたのではないかと思います。

 ヒメムカシヨモギとオオアレチノギクはよく似ていますが、遠目に見ると花序の形が異なっているようです。ヒメムカシヨモギは花をつける枝が先の方に集まり、横に伸ばすので全体に頭でっかちで広がったような形になりますが、オオアレチノギクは花をつける枝をあまり横に伸ばさないので、広がった印象になりません。また、写真で解説していますが、葉や頭花の形も違っています。

ギャップにはエノキ、センダン、ナンキンハゼ、アカメガシワなどの稚樹(樹木の子ども)もたくさん生えていました。これらの木はすべて鳥が果実を食べて、ふんの中に種子が混ざって、種子散布されます。ギャップの周りにある木の枝に鳥が止まってそこでふんをして落ちてきた種子が育ったでしょう。ただし、アカメガシワの成木は植物園内にはなく、埋土種子(土の中で眠っていた種子)が発芽してきたのかもしれません。アカメガシワは埋土種子をよく作るとされます。


写真1.jpg
木が倒れてできたギャップに生えたヒメムカシヨモギやオオアレチノギクなど。


写真2.jpg
ヒメムカシヨモギ(右)とオオアレチノギク(左)の花序の形の違い。ヒメムカシヨモギは花をつける枝が先の方に集まり、横に伸ばすので全体に頭でっかちで広がったような形になる。


写真3.jpg
ヒメムカシヨモギ(左)とオオアレチノギク(右)の葉の違い。ヒメムカシヨモギの葉の毛は少ないが、長さが長く葉の縁から毛が飛び出して見える。オオアレチノギクは葉裏に毛が多いが長さは短い。


写真4.jpg
ヒメムカシヨモギ(左)とオオアレチノギク(右)の頭花の違い。ヒメムカシヨモギの頭花は細く、舌状花が明らか。オオアレチノギクの頭花は丸く、舌状花が目立たない。


◆ヤブニッケイ(クスノキ科)
 ヤブニッケイはコクサギ型葉序と呼ばれる少し変わった葉の付き方をしています。葉序とは枝に付く葉の並び方のことで、互生や対生といった葉序はよく知られています。互生は枝に対して1枚ずつ左右交互に葉が付き、対生は1ヵ所から葉が対になって2枚ずつ付きます。コクサギ型葉序というのは、右右・左左・右右・左左…という感じで、2枚ずつ左右交互に葉が付く葉序のことです。ヤブニッケイはコクサギ型葉序になることが知られていますが、実は少し曖昧で、枝によっては葉の間隔がまちまちで対生に見えることもあったりします。


写真5.jpg
ヤブニッケイの葉。この写真の枝は2枚ずつ左右交互に葉が付いていた。


◆コキア(ヒユ科)
 最近、植物園に植えられるようになりました。こんもりした形になり、秋になると真っ赤に染まるので観賞用としてはとても面白い植物です。よく見ると葉の付け根に小さな花をつけており、雄しべが飛び出していました。さらによく見ると、数は少ないがより小さくて雄しべのない花があり、これは雌花だと思われました。


写真6.jpg
コキア.「目」を付けてお客さんの目を惹くようにしているようだ。


◆ジャカランダ(ノウゼンカズラ科)
ここ何年かで長居植物園のジャカダンダの花がよく咲くようになりました。今年は花の時期に植物園案内をできなかったので花を見ることはできませんでしたが、枝先に付いている果実を観察しました。花が目立つので、花を観察しがちですが、葉もとてもきれいな植物です。大きな葉は2回切れ込んだ2回羽状複葉で、一つ一つの小葉は小さいのでよく見てみてください。


◆オオシロカラカサタケ(ハラタケ科)
 マグノリア園の近くのノイバラの仲間を植えている花壇にボール状の傘を上げたオオシロカラカサタケが出ていました。町中の腐植質な場所に生える大きなキノコでよく目立ちます。食べるとひどい中毒を起こすので食べないようにしてください。


写真7.jpg
オオシロカラカサタケ

2020年08月05日

長居植物園案内(8月)

新型コロナウイルス拡大防止のため、3月から植物園案内を中止していましたが、4ヶ月ぶりに再開しました!参加者同士の距離を保ちながら、暑い中での実施だったため、通常よりも短めに観察しました。(佐久間・横川)


◆サンゴジュ(ガマズミ科)

赤い果実がなっていました。果実だけでなく果実がつく柄も赤くなるようです。サンゴジュの実は完熟すると黒くなり、鳥に食べられますが、今日はまだ黒くなった果実は見つかりませんでした。赤と黒が混ざった二色表示は果実を食べて種子を運ぶ鳥への強いアピールになるようです。よく見ると果実がなっている枝に糸が絡まりついていました。これはマエアカスカシノメイガというガの幼虫が糸で巣を作ったものです。

202008写真1.jpg
サンゴジュの葉と果実

202008写真2.jpg
マエアカスカシノメイガによる営巣


◆エンジュ(マメ科)
 
白い花が歩道にたくさん落ちていました。上を見上げてみたら、エンジュの花が咲いていました。落ちている花を拾って花の形を観察してみると、エンジュの花はマメ科に典型的な、旗弁・翼弁・竜骨弁(舟弁)からからできています。竜骨弁を押し下げてみると中から雄しべが出てきます。高いところで咲いている花をよく見るとクマバチなどが訪れていましたが、花に来た昆虫がうまく竜骨弁を押し下げて花粉を体につけるのでしょう。果実はまだなっていませんでしたが、秋以降になるとジューシーな莢をつけて、鳥が食べにやってきます。

202008写真3.jpg
地面にたくさん落ちたエンジュの花

202008写真4.jpg
エンジュの花。高いところに咲いていた。

202008写真5.jpg
落ちていたエンジュの花


◆ユズリハ(ユズリハ科)
 
ちょうど前年の葉が落ちつつある様子が観察できました。枝の先の今年に出た葉は元気そうですが、その少し下の前年に出たと思われる葉は垂れ下がって元気がありません。このように今年の葉が出たあとに、前年の葉が譲るように落葉することから、家が代々続くと見立てて縁起物とされることがあります。枝をよく観察すると芽鱗痕が残っており、その位置関係から、いつ伸びた枝なのかが推定できます。実際にユズリハの枝を見ながら、何年前の葉まで残っているか観察してみると、昨年の葉はまだ多く残っていましたが、一昨年前の葉は残っていませんでした。枝には葉が落ちた痕も残っており、細かく経時的に観察していけば葉の寿命などが見えてきます。

202008写真6.jpg
ユズリハ。まさに譲ろうというタイミング。

202008写真7.jpg
芽鱗痕の位置から推定した枝の伸びた年。葉の元気さと枝の伸びた年が一致する。


◆ハマナス(バラ科)
 
たくさん「実」がなっていました。少しだけ花も残っており、ピンクの花の株と白の花の株が見られました。野生のハマナスの花はピンク色で、北日本の海外に多く生えます。普通、子房が膨らんだものを果実と呼びますが、ハマナスの「実」は子房ではなく花托が膨らんだもので偽果と呼ばれます。割ってみると、中から種子のように見える果実が出てきました。これをさらに割ると中に種子が入っています。割って果実を観察してみると、先に花柱が残っており、これが花の真ん中の雌しべの集まりに繋がっていたのでしょう。花を改めてみてみると、雌しべの数がすごく多いことがわかりました。

202008写真8.jpg
よく実ったハマナス

202008写真9.jpg
ハマナスの花(ピンク)

202008写真10.jpg
ハマナスの花(白)

202008写真11.jpg
ハマナスの「実」

202008写真12.jpg
ハマナスの「実」の断面

202008写真13.jpg
ハマナスの果実

202008写真14.jpg
ハマナスの果実の断面。中に種子が入っている


◆ヒメイワダレソウ(クマツヅラ科)
 
バラ園の中で、地面に這うように生えていました。白くて丸っこく見える花を咲かせていましたが、これはよく見ると小さな花が集まったものです。リッピアなどの名前でも売られている外来植物で、這うように葉をつけるので緑化用の植物として使われます。長居公園でもよく見かけます。

202008写真15.jpg
ヒメイワダレソウ。長居公園で撮影

202008写真16.jpg
ヒメイワダレソウ


◆タイサンボク(モクレン科)
 
 マグノリア園に入ってみるとタイサンボクの花序がたくさん落ちていました。切り口はきれいなので、どうも、熟さずに落としてしまったようです。落ちている花序を拾って観察してみると、くるりと巻いている雌しべのあとが見られ、雌しべの集まりの下には、赤いうろこ状が雄しべが落ちた痕が見られました。さらにその下には、花被片が落ちた痕がありました。花が咲いていたころの様子を想像しながら結実期の花序を観察すると面白いでしょう。
 
202008写真17.jpg
タイサンボクの葉と果序
 
202008写真18.jpg
落ちていたタイサンボクの果序


◆アラカシ(ブナ科)
 
ドングリのなる木としてお馴染で、春にはよく花を観察していますが、今年は植物園案内がお休みになったため見ていませんでした。枝先をよく見ると小っちゃいドングリがなっていました。アラカシは、春に枝先に花をつけて、その年の秋にドングリがなるので、ドングリも必ず枝先に付きます。だいたい1つの花序にドングリはよくついて3個までですが、1枝だけドングリが4個付いていました。
 
202008写真19.jpg
アラカシのドングリ

2020年08月03日

長居植物園案内7月(中止)

長梅雨の合間、天気は比較的良かったのですが、行事再開の判断には至らず、今月の植物園案内も中止になってしまいました。きのこも多かったのですが。(佐久間)


1.テングツルタケ テングタケ科

アラカシの樹下に発生していました。テングタケ属ですが根本にツボのはっきりしない種類です。きのこの観察は上から見るだけでなく下からひだを観察し、柄や根本の様子などが重要です。写真を取る場合でも、下からや断面などを観察しておくといいでしょう。標本にするときも簡単にでもいいのでメモを書いておくといいと思います。食べると猛毒です。

植物園案内7月1.jpg

植物園案内7月1-2.jpg


2.アイバシロハツ ベニタケ科

シロハツモドキによく似ており、ひだがやや青みがかる。また傘の上面もやや茶色くなる。梅雨明け頃の夏にたくさん発生する菌根菌。先のテングタケ科も、ベニタケ科もカシなどの樹木の根と共生しているきのこです。きのこは乾くと生臭く、辛味も強いため食用になりません。

植物園案内7月2.jpg


3.ウラジロガシ

きのこを観察していると落ち葉がよく目に入ります。照葉樹ゾーンにわずかに植えられているウラジロガシは、かわいた落ち葉の葉裏の白がよくめだつので、ウラジロガシを見つけるには下を向いて歩いている方がよくわかります。枝先には若いどんぐりがついていました。

植物園案内7月3.jpg


4.ツマミタケ(スッポンタケ科)

落ち葉を腐らせるきのこ。赤い指の間にあるグレバが悪臭を放つ。長居公園では6,7月の常連

植物園案内7月4.jpg


5.モクレン科の果実

春先に咲いたモクレン科の様々な植物が果実になっています。
オガタマノキはよく熟していました。このあと、割れて、赤い種衣におおわれた種がぶら下がります。

植物園案内7月5.jpg
オガタマノキ果実


タイサンボクは熟さず、花序が落ちてしまいます。原因はよくわかりませんが、挿し木で増やした同一個体のクローンが広がっているためかも知れません。(ごくたまに熟した果実もみられます)
左側のくるりと巻いているのが雌しべのあと、赤いうろこ状の部分が雄しべが落ちたあとで、その右側に花弁の脱落痕があります。

植物園案内7月5-2.jpg


6.イボテングタケの残骸とコブアセタケ
このほかにも梅雨明けの長居植物園にはたくさんのきのこが発生していました。この日はもう倒れていましたが、アカダマスッポンタケもはっせいしていました。

植物園案内7月6.jpg

 


 

 

2020年04月10日

4月の長居植物園案内の記録

新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、博物館の閉館と行事中止が続いています。4月4日は、長居植物園は開園していましたが、植物園案内は中止でした。しかしながら、4月の植生園の様子をチェックしておくと同時に、みなさんに見ごろの植物をお伝えできればと思い、植物園を歩いて4月の記録を作成しました(横川)。




◆アラカシ(ブナ科)
 春は展葉の季節。アラカシも新たな葉を展開させていました。同じ株であっても枝によって展葉のタイミングが少し異なっており、まだ芽が開いていない枝からはっきり葉がわかる枝まで。アラカシは葉の裏面に毛が生えるのが特徴ですが、展葉直後の葉は裏面の毛がとてもわかりやすく、手触りも良いです。線状の托葉も観察できました。
①.jpg




◆サンゴジュ(レンプクソウ科)
 普通の葉と同じぐらいの大きさまで成長した、黄緑の展葉したての葉が見られました。サンゴジュにはダニ室があるが、以前、出たばかりの葉にはダニ室が確認できないという話をしました。今日見た新しい葉にはすでにダニ室があり、もっと小さなときに目に見える大きさのダニ室ができるようです。
②.jpg




◆イチイガシ(ブナ科)
 新しく出た葉には毛が多いので見に行ってみましたがまだ葉は開きはじめでちゃんと観察できませんでした。樹種によって、同じ樹種でも個体によって、同じ個体でも枝によって葉が出るタイミングは異なっています。
③.jpg




◆キンカチャ(ツバキ科)
中国南部原産の樹木。長居植物園内のツバキ科の樹木はツバキやサザンカの類が主なので、赤やピンク、白のイメージがあると思います。キンカチャはそのイメージとは異なり黄色い花を咲かせます。少し見ごろは過ぎており、多くの花はすでに地面に落ちていました。
④.jpg




◆セイヨウタンポポ(キク科)
 植物園内のあちこちで咲いていました。園内では典型的なセイヨウタンポポばかりではなく、総苞片の反り返りが中途半端な雑種と思われる株も多く見られます。典型的なセイヨウタンポポは総苞片が強く反り返ります。同じ場所に生えているタンポポの花茎の高さを比べてみると、多くの花は地面すれすれで咲いているのに対して、結実して綿毛をつけた花茎は高い位置でした。このようにタンポポは開花の時期と結実の時期で花茎の高さが違います。
⑤.jpg




◆メリケントキンソウ(キク科)
 大阪では公園の芝地や河川敷で増えている外来植物。根元に地味な花をつけていましたが、来月には結実して、硬い棘のある果実をつけているでしょう。
⑥.jpg




◆トゲミノキツネノボタン(キンポウゲ科)
 果樹園やイナゴマメの近くで群生しており、黄色いじゅうたんになっていました。早く咲いたものは果実が熟しはじめており、果実の側面のとげも出始めていました。黄色のじゅうたんの中をよく見ると、ヘビイチゴやカタバミも混ざっていました。タンポポなどと合わせて春は黄色い花を咲かせる草本がたくさん楽しめる時期です。
⑦.jpg




◆ソメイヨシノとオオシマザクラ(バラ科)
 並んで生えており、遠目に違いがわかりやすかったので紹介します。ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラの雑種だといわれていますが、花の時期には葉はほとんど出ておらず枝には花だけつきます。オオシマザクラは花と葉が同時に出ます。並んでみると全体ピンクの木と緑とピンクが混じる木で違いは明瞭でした。
⑧.jpg




横川のTwitterアカウントでそのほかの写真も紹介しています。興味ある方はご覧ください。
https://twitter.com/yokogawa12/status/1246245145810317315?s=20

2020年04月04日

3月の植物園案内 記録

新型コロナウィルス感染症予防ということで、大阪市立自然史博物館も閉館、行事中止、長居植物園も閉園だったのですが、3月の植物園案内の記録として植物園を巡ってきました。『無観客植物園案内』の記録として書いておきます。早く通常の行事ができるといいのですが。(佐久間)

1. ツバキ (ツバキ科)ツバキは少し盛りを過ぎたあたり。椿の字は日本国内でのみこの植物を指します。ツバキは江戸時代の園芸でも主要な花木です。花の大きさから、八重、白から桃、赤などの花色、絞り、葉の斑入り、などなど様々な品種があります。この3月には長崎県五島市で国際ツバキ会議があるはずだったのですが、こちらも中止になってしまいました。自然史博物館でも『岸川椿蔵書』の展示を準備していたのですが、開館・公開できていません。Youtube で『岸川椿蔵書』の解説をしてみました
IMG_20200307_150254_2.jpg

2. ツバキキンカクチャワンタケ (キンカクキン科、子嚢菌)ツバキの樹下の落ち葉に埋もれるように生えるツバキキンカクチャワンタケです。落ち葉に埋もれたツバキの花弁を分解して生えてきます。残念ながら花がらまでたどれませんでしたが、柄の長いこと
DSC_0163.JPG


3. オオキバナカタバミ(カタバミ科) 長居公園でじわじわ広がってる感のあるオオキバナカタバミもよく咲いています。植物園外だと3番出口近くのバス停周辺に咲いています。
4. ウメ(バラ科)の花は終わりかけ。雌しべがついた花は枝の一番根元側のみ。
5. ナシ赤星病菌 (サビキン目柄生サビキン科、担子菌類)カイヅカイブキ上のさび病の冬胞子堆。雨などで成長しゼリー状になる。春になって近くのナシの木などバラ科植物が展葉すると胞子が葉の上で成長、ナシ赤星病を起こ。
6. サンシュユは満開。アンズはまだ開いていませんでした。
7. オガタマノキ (モクレン科)どうも鳥たちがついばむようでだいぶ花びらが散っていた。オガタマノキ属はモクレン属のような枝先でなく、枝脇の葉の付け根に咲く。花を覗き込むとたくさんの雄しべと穂のようになった雌しべの束がある。ハクモクレンも満開でした。シキミは開花直前。
DSC_0175.jpg

8. マンサクとシナマンサク (マンサク科)葉が残ったままなのがシナマンサク。目に染みるような黄色の糸状の4枚の花弁です。
9. クリスマスローズ (キンポウゲ科)よく咲いているように見えるが、この花ビラのように見えるのは、実は萼。下から覗き込んでみると花が終わって雄しべが全て落ち、ほとんど実になってるものもたくさんある。まだ咲いていて雄しべのついてる花には雄しべの根本にある短い平たいものがある。これが蜜葉(蜜が出る部分)で、これが本来の花びら。
DSC_0185.jpg
DSC_0186.jpg

もう実になりかけた花 と  咲いている花、雄しべの根本に蜜葉が見える。

10. オオカンザクラ、フリソデヤナギが満開
11. 大池は引き続き水を減らしているものの、期待していたハタケゴケなどは見られず。

Twitterで写真付きで見られます・
< a href="https://twitter.com/sakumad2003/status/1236187570872053760">https://twitter.com/sakumad2003/status/1236187570872053760

行事が中止になってご案内できませんが、見かけた不思議なもの、わからないものなどは電話や電子メールなどでお尋ねください。

monitor@mus-nh.city.osaka.jp
通常配布している形式の記録はこちらでPDF形式でダウンロードできます。

2019年11月22日

大阪自然史フェスティバル2019

11月16日(土)17日(日)、大阪市立自然史博物館にて、「大阪自然史フェスティバル」が開催されました。
大阪自然史フェスティバルは、大阪を中心とした自然に関わる市民団体・企業・学校・博物館が全国から集まり、自然のおもしろさ、活動の楽しさを伝えるイベントです。

今年の参加団体数は131団体!北は北海道、南は台湾と幅広い地域の方々が集まりました。
また来場者も過去最多の2万6千人を記録!大賑わいだった2日間の様子を報告致します。

会場写真.JPG
フェスティバルの会場は、ネイチャーホール・玄関ポーチ・博物館本館の3カ所に分かれていました。


まずは、自然関連の市民団体さんがたくさん集まっていたネイチャーホールA会場からご紹介。
標本・パネル掲示や参加型のプログラムと各団体の工夫を凝らしたブースが並びます。
ブースにふらりと立ち寄ると、団体さんの熱い思いを感じます。

A59寝屋川市自然を学ぶ会.JPG

糸巻する子ども.JPG

バードカービングを見る大人.JPG


次は玄関ポーチのB会場。ここは屋外の会場となります。
ポーチ望遠鏡2.JPG
フェスティバルに協賛頂いている望遠鏡メーカーブースがずらり。

買い物を楽しむ大人.JPG
販売ブースでは生き物をモチーフにしたグッズがいっぱいです。迷うのもとっても楽しい。

古本市.JPG
ご寄付で頂いた本を販売するチャリティ古本市も開催。自然史系の沢山の本を次の読み手に渡すことが出来ました。


博物館本館はC会場。この日は関西文化の日なので入館無料。
購入したグッズ自慢の子ども.JPG
両手に持ちきれないぐらいお気に入りの商品を購入していた来場者を発見!

苔マントを着る親子.JPG
コケになりきる子ども。家族で楽しく会場を回ってくれました。

またブース出展以外にも両日、シンポジウムや講演会、お絵描き講座、バードウォッチング、ビオトープとイベントも充実していました。
鳥たちの過去現在未来1.JPG
講演を聞く参加者達。たくさんの方々が演者の話に耳を傾けてくれました。

※許可なし ビオトープ10.JPG
博物館のビオトープではみんなで生きもの探しをしました。


子どもから大人までたくさんの方に「自然の魅力」を発信するイベントが開催出来ました。
ご来場いただきました皆様、出展頂きました団体様に感謝申し上げます。
ありがとうございました!!!!!

2019年02月23日

ジオラボ(2月)「いろんな植物化石」

2019年2月9日のジオラボは、「いろいろな植物化石」でした。
植物化石には、石になったマツボックリ、石の上に付いた葉っぱ、落ち葉のような葉っぱなど、様々な状態があります。また、葉・マツボックリ・幹など様々な部分の化石があります。


geo201902-1.JPG
実体顕微鏡やルーペで、いろんな植物化石を観察しました。


geo201902-2.JPG
石になったヤシの幹、木生シダの幹です。


geo201902-3.JPG
石になったナンヨウスギの球果(マツで言えばマツボックリ)の化石です。切断して磨いてあります。種子とその中にある胚(芽になる部分)が見えます。美しいですね。


geo201902-4.JPG
ツゲの葉の化石です。粘土層から取り出して、プレパラート標本にしました。落ち葉のようです。

2019年01月29日

ジオラボ(1月)「大昔の大阪にたまった火山灰を見てみよう」

2019年1月12日のジオラボは、「大昔の大阪にたまった火山灰を見てみよう」でした。
火山灰がどんなものか、皆さんご存知でしょうか?参加者の皆さんに聞いてみたところ「火山の噴火で飛んでくる、灰」「砂のような物」など、いくつか意見が出ました。「灰」というと、燃えかすの「灰」を思い浮かべる人も多いことでしょう。火山灰は燃えかすの「灰」なのか、砂のようなものなのか、みんなで確かめてみることにしました。
1901geo1.jpg


正体を確かめる火山灰は、大昔の大阪に降り積もった「ピンク火山灰」と「アズキ火山灰」にしました。「ピンク火山灰層」は105万年前に九州で起きた巨大噴火の火山灰、「アズキ火山灰層」は90万年前に九州で起きた巨大噴火の火山灰です。地層が崖になっているところから、採集してきたものです。
まず火山灰の塊を蒸発皿に入れて指でつぶし、にごった水を捨てるのを繰り返しました。
1901geo2.jpg


水がにごらなくなったら、蒸発皿の底に残ったものをホットプレートで乾かしました。
そして、顕微鏡で観察しました。
1901geo3.jpg


顕微鏡で見ることができたのは、薄っぺらな形やとがった形をした、ガラスのようなものでした。それらは火山の噴火のときに、マグマに含まれていた火山ガスのあぶくが大きくなって、はじけてできたものだそうです。火山灰は燃えかすの「灰」ではないことが分かりました。火山灰はマグマが冷え固まってできる岩石の細かい粒で、今回使った火山灰の粒の大部分は火山ガラスでした。

2017年11月28日

長居植物園案内・動物昆虫編「セミのなる樹」

2017年7月29日(土)に長居植物園案内・動物昆虫編「セミのなる樹」を行い、213人の参加がありました。
長居公園には10万匹のクマゼミがいると考えられています。

2017semi1.jpg

2017semi2.JPG
セミには好きな樹と嫌いな樹があるようで、センダン、シマトネリコ、ケヤキなどには幹にたくさんついていますが、イチョウ、マツ、クスノキなどにはほとんどつきません。
樹皮の厚さ、汁のおいしさなどが関係しているのかもしれません。

2017年02月02日

自然史オープンセミナー「菌類講座2017 ナショナルとローカル:菌類ハーバリウム体系の理想を考え、現状を語る」

kinrui1.jpg
1月21日(土)に、自然史オープンセミナー「菌類額講座2017」を開催しました。
参加者は高校生からシニアまで約60名。


kinrui2.jpg
細矢さんからは国立科学博物館の菌類標本庫のこれまでのあゆみと、蓄積・整理や活用のための工夫と困難を話していただきました。


kinrui3.jpg
佐久間からは大阪を中心に地方博物館の菌類標本のコレクションの成り立ち、コレクション形成でのアマチュア研究者の重要性、その上で教育とコレクション形成が一体となった地方博物館と、国立を含む全体の自然史資料の連携が重要という話をしました。


kinrui4.jpg
全体の討議も、少人数でやっている変形菌や藻類のコレクションのネットワークの参考事例や、地方のキノコ会の中には世代交代に苦労しているところもあるなど、各地の実情やいかに間口を広げ、敷居を下げて多くの人の参加を促すか、その上で同時に研究資料活用を勧めていくかなど、様々な役割を博物館に期待している声も多く聞かれました。

2016年07月10日

ジオラボ(7月)「海の砂を見てみよう」

 夏休みも迫ってきた7月9日、地学の色々を室内で学ぶジオラボで「海の砂を見てみよう」が行われました。海水浴などで行く海の砂をじっくり眺めてみようという企画です。よく観察してみると「砂」と一言でいってもいろいろな中身からできていることが分かります。


geolabo1.JPG

 最初に、中条学芸員から砂とはどのようなものなのか説明を受けた後、各テーブルに配られた砂がどこの産地のものかを当てるクイズ形式で行事は進められました。


geolabo2.JPG

今回は特に「島の砂」をテーマに、北は新潟県佐渡島から南は沖縄県八重山諸島の砂まで全6種類の砂が用意されました。真っ白の砂から真っ黒の砂まで様々な色をしています。みんな当てることができるかな。

geolabo3.JPG


 色の違いや粒の大きさだけでなく、触ってみた感触や用意された磁石でひっつくかどうか、ルーペを通してみた粒の形で種類の違いなどを見分け、どこの産地のものか当てていきます。ノーヒントでは難しすぎるので、途中で中条学芸員からヒントも出されましたが、それでも難しい!

geolabo4.JPG


 最後に解答が発表されました。全体の3割くらいの人が全問正解でした!

geolabo5.JPG


 全体の説明が終わった後に、顕微鏡でさらに拡大してみると、とてもきれいな砂粒の世界を見ることができました。

geolabo6.JPG


 夏に海水浴などに行ったときに、足下の砂をじっくり見てみると、違った世界が開けてくるかもしれませんよ。

2016年02月21日

室内実習「解剖で学ぶイカの体のつくり」

2月7日(日)に室内実習「解剖で学ぶイカの体のつくり」を実施しました。

ika16-1.JPG
まず、イカ(頭足類)がなぜ貝の仲間なのかの講義をします。


ika16-2.JPG
講義の後は実際に解剖をします。
前で実演を見てもらった後、各自で解剖をします。
スルメイカをすべて解剖するのに、全体で20以上のステップがあります。
3~4ステップをまとめて実演して各自解剖、という流れの繰り返しです。


ika16-3.JPG
イカスミ(墨汁)で字を書いてみました。


ika16-4.JPG
鰓と3つの心臓もうまく取り出せました。


ika16-5.JPG
何を食べているのかな?胃の内容物も顕微鏡で観察します。


ika16-6.JPG
眼球を摘出した後、頭部から平衡石を取り出せば解剖は終了です。
この日は全員が平衡石を持ち帰ることができました。


ika16-7.JPG
最後に、循環系に着色する演示を見てもらって実習を終えました。
参加された皆さん、どうもお疲れさまでした。
来年度も2月に行う予定ですので、関心のある方はぜひご参加ください。

2015年09月02日

標本作りまつり

7月20日に特別行事「標本作りまつり」を開催しました。いろんな分野の標本づくりを体験したり、見学したりできる行事です。標本は様々な研究や博物館活動の基礎になる大切なものです。少しでも多くの人が標本をつくって、自然史の情報を残せるようになって欲しいと考えて、行事を企画しました。


実際に標本を作ってみたのは、貝と植物です。


P7201330.JPG
貝の標本は、鍋で煮て肉抜きをして作ります。ただ引っ張るだけではきれいに抜けません。いろいろコツがあります。


P7201331.JPG
植物の標本は実際に野外で採集するところからやりました。適当に葉っぱを2-3枚採ればいいわけではなく、採り方にもいろいろお作法があります。


P7201335.JPG
採集した植物は新聞紙で挟んで乾燥させます。実習では標本のラベルもつくりました。


P7201343.JPG
ミュージアムサービスセンターでは、鳥・たまご・化石・昆虫の標本づくりを実演しました。たくさんの方が見学に参加し、質問も活発に行われていました。


標本は自分でつくってみるといろんなことがわかって楽しいです。今回の行事で学んだことを元に、標本作りを実践していただければと思います。

2015年07月09日

ジオラボ(6月)「いろいろな火山灰を見比べる」

 6月のジオラボは「いろいろな火山灰を見比べる」でした。
 去年の友の会合宿「蒜山・大山」で採集した、「キナコ」というニックネームの火山灰と「弥山軽石」の2種類を、じっくり見比べました。


geolabo201506-1
去年の友の会合宿「蒜山・大山」で火山灰を採集した崖の様子(土地の管理者に許可を頂いて採集しました)。


 最初に、「弥山軽石層」が観察できる崖の写真を2つ見比べて、大山に近くなると「弥山軽石層」が厚くなる傾向があることや、軽石の粒が大きくなる傾向があることを確かめました。「弥山軽石層」は、大山の噴火でできたということが分かりました。
 次に、「弥山軽石」と「キナコ」を肉眼で観察しました。「弥山軽石」にはいろいろな大きさや色の粒が集まっていることが分かるのに対し、「キナコ」はそのニックネームのとおり、粒が細かくてそろっていて、「本当にきなこみたいに見える」という意見も出ました。
 そして、参加したみなさんで協力して「弥山軽石」と「キナコ」を洗って乾かし、顕微鏡で観察をしました。


geolabo201506-2.jpg
火山灰を洗っているところ。


geolabo201506-3.jpg
火山灰を顕微鏡で観察しているところ。


 「弥山軽石」を洗ったものには火山岩の破片やいろいろな鉱物の結晶が含まれているのに対し、「キナコ」の粒の大部分が火山ガラスの粒であることが分かりました。


geolabo201506-1
弥山軽石の実体顕微鏡写真。いろいろな種類の鉱物が見える。


geolabo201506-5.jpg
蒜山で採集された姶良丹沢火山灰層の実体顕微鏡写真。蒜山周辺では「キナコ」というニックネームで呼ばれていた。写っている粒はいろいろな形をしているが、全て火山ガラス。


 大山周辺で「キナコ」と呼ばれていた火山灰層の正体は、実は鹿児島湾にある「姶良(あいら)カルデラ」で約2万9000年前に起きた巨大火砕流を流した噴火でとばされた「姶良丹沢火山灰層」(※)でした。巨大火砕流の噴火でできたシラス台地の崖の写真も紹介しました。姶良丹沢火山灰層はほぼ日本全国に分布しています。大山周辺だけでなく大阪でも見つかるし、厚さ2mmと非常に薄いけれども青森でも見つかっていることを、地層が見える崖の写真や標本の写真を見て確かめました。
 今回は、火山の近くで見つかる火山灰と、火山から遥か遠くで見つかる火山灰を見比べました。最近、あちこちで火山の噴火が起きていますが、火山灰が日本列島を覆うような、想像を超えた巨大な噴火が起きることもある、ということを知って、参加者のみなさんは驚いていたようでした。

※ 姶良カルデラの噴火でできた火山灰が、遠い場所では丹沢にあることが最初に分かったので、このように呼ばれます。

2015年05月25日

野外・室内実習「植物の標本づくり」

 5月17日(日)に植物の標本づくりの行事を開催しました。普段の観察会では、なかなか標本をつくることはありませんが、博物館の活動にとってやはり標本は大切なものです。少しでも多くの人が標本をつくって、自然史の情報を残せるようになって欲しいと考えて、行事を企画しました。

 参加者は全部で13名、植物の採集から標本の作り方まで、一日かけて一通り勉強しました。

P5170864.JPG
まず、はじめに実習室でそもそも標本とは何か?について簡単なガイダンス。


P5170869.JPG
いざ、長居植物園へ!午前中は植物採集の実習です。自分が気になった植物を採集します。採集のときにはいろんな注意点があります。(注:長居植物園では植物の採集は禁止されています。今回は実習のために特別に許可を得て実施しています)


P5170872.JPG
草本を採集するときは丁寧に根っこから採らないといけません。


P5170879.JPG
博物館のビオトープのため池で水辺の植物の採集方法を勉強。採集に夢中になって、池に落ちないことが一番の注意点です。


P5170887.JPG
水辺の植物を採集中。


午後からは標本づくりの実習。植物の標本は、さく葉標本もしくは押し葉標本と呼ばれ、新聞に挟んで、おもしをかけて作ります。大きな押し花みたいな感じです。


P5170896.JPG
まずは学芸員の長谷川さんが実演。簡単そうに見えますが、きれいな枝の曲げ方などいろいろ奥が深いのです。


P5170903.JPG
午前中に自分で採った植物を標本にしていきます。


P5170906.JPG
できた標本はコンクリートブロックでおもしをかけておきます。


このあとは、図鑑の使い方や植物の同定(生きものの名前を決めること)の仕方を勉強したり、標本を台紙に貼る実習をしたりしました。


P5170907.JPG
自分でつくった標本は、持って帰ってもらいました。この後は、毎日、新聞を交換して、植物を乾かさないといけません。家に帰ってからも標本づくりは続きます。


 博物館ではほかの生きものの標本づくり実習や自分の標本の名前が合っているかどうか、専門家に見てもらえる「「標本の名前を調べよう」」という行事もあります。標本づくりに興味のある人のご参加、お待ちしております!

2015年05月12日

地質の日協賛事業・第32回地球科学講演会「阪神淡路大震災以降の近畿の活断層研究」

 5月10日(日)に地質の日協賛事業・第32回地球科学講演会「阪神淡路大震災以降の近畿の活断層研究」を開催しました。表題にあるように、阪神淡路大震災から20年という節目ということで、活断層研究の第一人者である京都大学名誉教授の岡田篤正氏を迎え、近畿周辺の活断層について、何がどれだけわかっているのか、そして私たちはどのように地震と向き合えばいいのかを語っていただきました。150人を超える参加者が、2時間もの講演に熱心に聞き入っていました。
 講演では、活断層とはどのようなものか、またどのように調査をするのかを、数多くの変位地形やトレンチの写真を用いて説明してくださいました。そして、琵琶湖西岸断層帯、中央構造線、有馬—高槻断層帯、上町断層帯など、近畿周辺の活断層について活断層の活動履歴や活動間隔が示され長期評価の精度が向上してきたことなど説明されました。その一方で、上町断層帯などでは、新しい時代の地層が厚く覆っていることに加え、都市部に走る活断層のため調査が難しく、まだ十分なデータが得られていないことなども説明されました。そして今後、その3次元的な広がりや地下深部の構造など、解明しなければならない事象が数多くあることも示されました。


IMGP7073.JPG
IMGP7076.JPG

2015年02月05日

ジオラボ(1月)「防災地図を作ってみよう」

1995年に発生した「阪神・淡路大震災」から20年の月日が経ちました。その後も日本列島は、地震や津による大きな被害を受けています。

洪水や津波、地震の揺れや土砂崩れなどの危険地域や避難経路・避難所を示した地図を、防災地図やハザードマップと呼びます。防災地図は国や各自治体から出されていますが、地形図を読み取ることで、大まかにそれらの災害の及ぶ範囲を知ることができます。

今回は国土地理院発行の1万分の1の地形図を使って平野の標高を調べ、浸水被害の想定地図を作ってみました。



IMG_0639.jpg
まずは、学芸員から防災地図とその作り方の説明。



IMG_0641.jpg
補助スタッフに教わりながらの作業。
小学生もよく理解できたようです。



IMG_0642.jpg
作業に夢中の参加者。
土地の高さで色分けするから、ぬりえみたいでちょっと楽しいかも。



自分で防災地図をつくることで、防災意識も高まりますね。もしものときの被害を最小限に抑えることに役立つはずです。


今後のイベント情報はこちら
ぜひ、ご参加ください。

2014年11月28日

大阪自然史フェスティバル2014

11月15日(土)・16日(日)に大阪市立自然史博物館において「大阪自然史フェスティバル2014」が開催されました。「大阪自然史フェスティバル」とは、自然関連のサークル、地域の自然保護団体等が一堂に会して出展する文化祭です。
関連する博物館や企業も参加し、活動紹介やワークショップ等を通じて、市民のみなさんに大阪の自然の現状や自然に関わる楽しさを知っていただく為に、博物館と認定特定非営利活動法人大阪自然史センターの共催で開催するイベントです。
2日間を通じて23,000人以上の方が訪れ、過去最高の盛大なものになりました。
来年度以降も、同じく関西文化の日などにあわせて同趣旨のフェスティバルの開催を計画しています。
今年参加し損ねた!、という方は次の機会にはぜひご参加ください。


【B会場:本館入口前ポーチ】

IMG_0539.jpg
どの出展ブースに立ち寄ろうかな、目移りしてしまいます。
頭の上も注目! ナガスケとマッコ(クジラの全身骨格標本)がいますよ。


IMG_0549.jpg
野鳥図鑑で有名なイラストレーター谷口高司さんのブース。


イラスト塾.jpg
谷口高司さんの「たまご式鳥絵塾(鳥の絵の描き方講習会)」も開催されました。


IMG_0567.jpg
世界の双眼鏡・望遠鏡もお目見え。
こんなにいろんなレンズを覗く機会なんてめったにないですよ。


IMG_0559.jpg
自然史博物館友の会のブースでは、缶バッジ作りに挑戦!



【C会場:博物館本館1階】

IMG_0553.jpg
昆虫や植物の標本などを楽しく工夫して展示。ゲームも楽しめましたよ。


IMG_0556.jpg
鳥の羽根? なにか作るの?



【A会場:ネイチャーホール】

ホール.jpg
ネイチャーホールにもたくさんのブースが出展されました。


IMG_0601.jpg
顕微鏡で砂を観察。
肉眼では見えない世界って、すごくおもしろい!



講演会や観察会もありました。

撮影体験.jpg
「叶内拓哉 超望遠鏡撮影体験」


鳥みたい.jpg
「はじめての鳥みたい(隊)」日本野鳥の会 大阪支部 観察会


観察会.jpg
「植物園の小さな秋を見つけよう」大阪市立自然史博物館友の会 観察会


子どもWS.jpg
「そっくりさん!むしいりこはく」認定NPO法人大阪自然史センター こどもワークショップ


IMG_0542.jpg
長居植物園は、植物の苗やくだものを販売。
大きなひょうたんが目を引いてました。


2日間、お天気にも恵まれ、ほんとによかったです。
たくさんのご来場ありがとうございました。


2014_fes_flyer_omo.jpg
フェスティバルは既に終了していますが、しばらくは大阪自然史フェスティバルサイトで詳しい内容をご覧になれます。

今後のイベント情報はこちら
ぜひ、ご参加ください。

2014年11月16日

ジオラボ「珪藻の化石をみてみよう」

 2014年10月18日のジオラボは、「珪藻の化石をみてみよう」でした。
この夏の友の会合宿で見学させていただいた、岡山県真庭市蒜山の珪藻土採掘現場で採集した珪藻土から、珪藻化石を取り出して作ったプレパラートを観察しました。
 最初に、珪藻は珪素の殻を持つ単細胞の藻類だという説明を聞きました。そして、50万年前の湖の地層にたまった珪藻土から取り出した珪藻化石だという説明も、聞きました。

その後、顕微鏡で珪藻化石をじっくり観察しました。

 
keisou01.jpg


keisou02.jpg



 観察できた珪藻化石は、大きくて丸い種類のものと、小さくて丸い種類のものの2種類が大部分でした。
珪藻化石の表面には、細かい穴がたくさん開いて、模様ができていて、とてもきれいでした。

keisou03.jpg


今後のイベント情報はこちら
ぜひ、ご参加ください。

2014年07月26日

特別行事「標本作りまつり」7月21日(月・祝)

 夏休みに入ったばかりの祝日である7月21日に、「標本作りまつり」を行いました。
夏休みの自由研究には、野外での生き物採集と標本作りがおすすめです。昆虫、植物、動物(貝と鳥の羽)の標本の作り方を、体験しながら学ぶことができる行事にしました。

 ところが、事前申し込みの必要ない行事としたために、予想を遙かに上回る300名ものみなさんにご参加いただきました。そのため希望の標本作りに参加出来なかった、部屋が混み合って説明が聞こえなかったなど、不自由な思いをされた参加者のみなさんも多かった事と思います。この場をお借りして、お詫び申し上げます。来年度はもっと落ち着いて標本作りのできる行事にしたいと考えております。


参加者のみなさんには、3種類の標本作りを体験していただきました。

IMG_0449_2.jpg

昆虫の標本作り

昆虫の標本作りは、羽を広げたり、脚を伸ばしたりと、針の先を使った細かい作業が多かったです。しかし、本格的な昆虫標本の作り方を体験することができました。

IMG_0437_2.jpg

植物の標本作り(博物館の裏庭で植物採集)

植物の標本は、いわゆる「押し葉」ですが、博物館の裏庭で植物を採集するところから始め、乾燥のさせ方やラベルの書き方まで、体験しました。

IMGP3285_2.jpg

貝の標本づくり

夏休みには海辺に出掛けて貝殻を拾うことがありますが、表面が削れてしまっていることが多いです。本格的な貝の標本は、生きている貝を使ってつくります。ラベルをつけて、チャック付きの袋で保存します。このほか、鳥の羽の標本の作り方も、体験しました。

そのほか、植物化石のクリーニングの仕方、キノコの標本の作り方、鳥の剥製の作り方、岩石の割り方などの実演を見て、説明を聞くこともできました。

IMGP3255_2.jpg

植物化石のクリーニング実演




「標本作りまつり」で体験したことを活かして、ぜひ、夏休みには生き物の採集と標本作りに挑戦してください。そして、標本が出来たら図鑑で調べてみてください。8月24日の「標本の名前を調べよう&達人による標本トーク」に持ってきて、標本作りの達人と、名前調べがあっているか、確かめてみましょう。


今後のイベント情報はこちら
ぜひ、ご参加ください。

2014年07月13日

ジオラボ「海の砂を見てみよう」7月12日

梅雨明けも間近な7月12日、博物館でジオラボ「海の砂を見てみよう」を開催しました。
夏休みには遊びに行くことが多い海の砂をじっくり観察してみようという行事です。

1-2.jpg

日本中から集められた砂が、各机に5種類ずつ配られました。
その砂がどこの海の砂かを当てようというクイズ形式で進んでいきます。

まずは肉眼で、そしてルーペでじっくり観察。
同じように見える砂でも違って見えてくるかな。
ヒントを手がかりにどこの砂か探っていきます。

2-2.jpg

5問全問正解の方は全体の2割くらいでした。
難問の多い中、全問正解の人がこれだけいるとは!
みなさんの観察眼に驚きでした。

最後は顕微鏡で観察しました。
肉眼やルーペで見るより、大きく美しい砂つぶを見ることができました。

3-2.jpg

ぱっと見たら同じように見える砂つぶも、じっくり見れば場所によって様々な砂つぶ。
夏に海に泳ぎに行った時にも、泳ぐだけじゃなくてぜひ砂つぶも見てください。


今後のイベント情報はこちら
ぜひ、ご参加ください。

2014年06月03日

特別展「恐竜戦国時代の覇者!トリケラトプス〜知られざる大陸ララミディアでの攻防〜」



torikera01.jpg

特別展「恐竜戦国時代の覇者!トリケラトプス 〜知られざる大陸ララミディアでの攻防〜」を開催しました。
平成26年3月21日〜5月25日の61日間で110,461人と、11万人を越える多くの来場者で賑わい、趣向を凝らした展示はたいへん好評でした。

torikera02.jpg

ララミディア大陸には、様々なトリケラトプスの仲間がいました。
まるで、領地をもった戦国時代の武将のようでした。

torikera03.jpg

トリケラトプスは植物食恐竜です。被子植物が大発展した白亜紀の終わりに、トリケラトプスの仲間は大繁栄しました。
白亜紀の終わりには様々な被子植物がありました。

torikera04.jpg

トリケラトプス展の後半4月26日~5月25日には、特別展「恐竜戦国時代の『エサ』?! —化石と長居植物園で知る植物の進化—恐竜が食べたかもしれない植物に触ってみよう!」も開催しました。
恐竜が見ていたかもしれない触れる植物の化石が大人気でした。




今後のイベント情報はこちら
ぜひ、ご参加ください。

2014年03月07日

室内実習「魚のからだ」

2月23日に 室内実習「魚のからだ」 を行いました。

大阪湾の代表的な魚であるスズキを材料にして、魚のからだのつくりを調べたり骨格標本を作り、魚についての理解を深めました。

午前中、材料(図1:参加者の古谷亜矢子さん撮影)を眼の前にして、資料(図2)を用い魚体についての一般的な解説や分類の話をした後、内臓の解剖を行いました。


図1
suzuki20140223.jpg


図2
sakana.jpg


昨年はスズキに加えてマダイとゴマサバを使って、形態の比較を行ったところたいへん好評でした。今年も予定していましたが、天候不順で材料を入手できず比較はできませんでした。

午後は、頭部の骨格の観察を行いました。頭を湯通しの感覚でお湯に漬け、皮や肉を取り除きながら少しずつ骨をはがしていきました。魚は膜のような骨が多いので、見分けがつきにくく、みなさん悪戦苦闘されていました。それでも、作業の終わりころには眼の周りの骨、口の天井を作る骨、顎の骨、顎を支える骨、鰓ぶた・・・というようにいくつかのパーツに分けていただくことができ、頭の骨のつくりについて理解して(?)いただきました。


今後のイベント情報はこちら
ぜひ、ご参加ください。

2014年01月31日

ビオトープの日(1月)

1月の「ビオトープの日」は18日(土)に行いました。今月はビオトープのため池のプランクトン観察です。ちいさな池ですが、ここでも様々なプランクトンの観察ができます。

まず、プランクトンネットを使い、バケツですくった池の水を濾してプランクトンを集めます。プランクトンネットの原理自体は単純なので、簡易式であればストッキングなどを使って自分で作ることもできます。今回は市販されているプランクトンネットと、ストッキングと標本ビンで自作したネットを使って採集しました。

その後、実習室に移動してプランクトンを観察します。池のプランクトンはミジンコのように肉眼でなんとか見えるものもありますが、多くは顕微鏡を使わないと見えない大きさです。まず、濾し取られたプランクトンの入った水を1滴とり、スライドガラスの上に垂らし、その上に薄いカバーガラスをかけます。これをプレパラートといいます。その後、プレパラートを顕微鏡に載せて観察します。少し難しい作業でしたが、小学生のお友達でも慣れればできるようになりました。

今回観察できたのはクロステリウム(ミカヅキモ)、オカメミジンコ、鞭毛虫、繊毛虫などでした。昨年1月にも同じ観察をしましたが、その時に比べると少し種類は少なかったようです。継続して観察すれば、年ごとの違いや種数変化の傾向が見えてくるかもしれません。


IMGP1546s_2.jpg


今後のイベントはこちらをご覧ください。

2014年01月06日

ジオラボ(12月)「恐竜の年齢を調べよう」

化石の骨を切断し、内部の構造を調べてみるといろいろなことがわかります。例えば、恐竜の骨の内部組織には木の年輪のような構造が見られ、この年輪構造を調べることで年齢推定が可能です。今回は参加者のみなさんが実際に恐竜の骨の内部を観察し、恐竜の年齢を調べてみました。


20131214geolab_2.jpg
恐竜の骨の切片を観察する参加者


20131214geolab_3.jpg
翼竜の骨の実物標本を手にとって、骨の内部構造を観察する参加者


20131214geolab_4.jpg
化石のレプリカ作りの意義や手順を参加者に説明するボランティアスタッフ


顕微鏡を初めて使ったり、化石の内部構造を初めて見た参加者が多く、「非常に新鮮でよかった、また来たい」とたいへん好評でした。

今後のイベントはこちらをご覧ください。

2013年06月06日

自然史オープンセミナー・シンポジウム「ゴケグモ類の現状と問題」

5月のオープンセミナーは18日(土)午後にシンポジウム形式で「ゴケグモ類の現状と問題」と題して盛大に開催されました。
日本列島におけるセアカゴケグモなどのゴケグモ類の分布や毒性などの現状を総括して、問題点を洗い出し、今後の対策に生かす方法を皆で考えようという企画です。


1.jpg
講演する西川会長。
トップバッターは、開会挨拶を兼ねて、当館友の会会長の西川喜朗先生が、「ゴケグモ類とはどのようなクモか」について講演されました。その後、合計8名の講演が行われ、閉会時間ぎりぎりまで熱心な討論が続きました。


2.jpg
講演を聴く参加者の様子。
参加者は91名で、沖縄県、福岡県などの遠方から参加された方もおられました。自治体関係者、現役の医師もかなりいて、熱心に講演を聴き、質問されていました。西日本におけるセアカゴケグモの分布拡大と咬症の深刻さがわかりました。


3.jpg
講堂内の受付の様子。
受付は共催団体の関西クモ研究会と友の会の関係者が行い、参加者の中には小さなお子さんをつれた親子もおられました。講演が始まる時間には、講堂内に受付を移動して、講演を聴けるようにしました。


4.jpg
会場の左前面に貼ったポスター

2013年05月15日

地球科学講演会「大阪平野の地盤環境と地盤災害」

5月12日(日)午後、「地球科学講演会」が行われました。
5月10日が「地質の日」であるということで、例年、その前後の土日に、日本全
国で地質学に関わる講演会や、野外観察会、ハイキングなどが行われます。地球
科学講演会も、「地質の日」協賛行事として、この時期に開催しています。


今回は、「大阪平野の地盤環境と地盤災害」というタイトルで、一般財団法人地
域地盤環境研究所の北田奈緒子さんにお話ししていただきました。

R0019013.jpg


四方を山地に囲まれた、大阪平野と大阪湾を合わせた地域には、主に淀川水系・
大和川水系から運び込まれた礫や砂、粘土がたまっています。厚いところでは
3000mにも及びます。これらは、ごく新しい時代にたまった、固まって岩石に
なっていない、礫・砂・粘土からできている地層です。これらの地層の上のほう
には、海成粘土層が十数層たまっています。氷期・間氷期を何度も繰り返す気候
変動が激しい時代になり、温暖な氷期になると海水準が高くなって奥まで海が入
り込み、氷期になると海水準が低くなって海が退くということを繰り返したため
です。温暖期に入り込んだ海でたまった粘土が、海成粘土層です。

おびただしい数のボーリングデータを用いて描かれた、たくさんの地質断面図や
地層の分布図を見ながら、大阪平野の地下の地層の分布の様子やその特徴につい
て、解説していただきました。上町断層による地層の変形の様子や、大昔の淀川
によって、古い地層が削られている様子がわかるというお話が、大変興味深かっ
たです。

また、大阪平野と大阪湾を合わせた部分を地層がたまっている洗面器に、新しい
時代にたまった柔らかい地層をプリンにたとえて、南海トラフで地震が起きた場
合に起きる大阪での地震の揺れの特徴を、わかりやすくお話しいただきました。
大阪平野の地層のでき方や特徴を知ってからこのお話を聞いたので、大変理解し
やすかったのではないかと思います。


R0019010.jpg

参加者は135名でした。みなさん大変熱心に講演を聞いておられました。


2013年04月30日

音楽と自然のひろば 2013・春

DSC02865.jpg
4月14日(日)、大阪市立自然史博物館のポーチが音楽団の演奏とたくさんの笑顔で埋まりました。
大阪市音楽団による春のコンサート
「音楽と自然のひろば 2013・春」が開催されました。
定番のラデツキー行進曲からAKBメドレーまでたっぷり2時間全11曲を熱演いただきました。
DSC02956.JPG
盛んな拍手と春の日差し、手拍子に包まれて熱のこもった演奏をいただきました。

また、当日は博物館スタッフによる紙芝居「ナガスケ」も休憩時間を利用して上演されました。
DSC02924.JPG

音楽と自然のコラボレーションに浸っていただくひとときになったかと思います。ぜひ、またこの演奏会をできるよう、検討してみたいと思います。

大阪市音楽団
http://www.shion.jp

続きを読む "音楽と自然のひろば 2013・春" »

2013年02月08日

室内実習「解剖で学ぶイカ・タコの体のつくり」

2月3日(日)、自然史博物館の実習室で「解剖で学ぶイカ・タコの体のつくり」を開催しました。
食材でおなじみのイカやタコは、頭足類という貝の仲間です。
魚よりもアサリやサザエに近い動物ということは、解剖してみるとよくわかります。
この実習ではスルメイカをじっくり解剖して、その体のつくりや器官の機能を学びました。



IMGP7348s.jpg

NHKのダイオウイカの番組効果もあってか(?)、今回は例年より多い18名の方が参加されました。
およそ1時間弱のイカ・タコに関する講義のあと、実際に解剖をします。
まず学芸員が前で実際に解剖を実演してから、各自解剖をします。


IMGP7350s.jpg

解剖手順は20以上のステップに渡るので、適宜区切って進めます。


IMGP7352s.jpg

冬に開催している理由として、性成熟した個体を入手しやすいということがあります。
オスの個体に当たった人は、精莢(せいきょう)※を取り出して、実際に精子塊(せいしかい)を出す実験をしてもらいました。
※精子を入れたカプセル


IMGP7354s.jpg

精莢を水に入れて、ピンセットで先端をつまむと、精子塊が飛び出してきます。


IMGP7357s.jpg

イカは眼球も立派です。
水晶体も取り出して観察しました。
ちゃんと拡大ができるレンズになっています。


IMGP7361s.jpg

この実習のクライマックスは、平衡石の摘出です。
イカ・タコには体の傾きを感じる平衡胞という器官があります。
平衡胞は頭部軟骨の中にある小さな部屋で、その中には平衡石という小さな固い粒が入っており、これが転がる向きによって体の傾き方向を検知します。
平衡石は1mmに満たない大きさです。
参加者の皆さんにはまず頭部軟骨を取り出してもらった後、平衡胞を切り開き、実体顕微鏡でのぞきながら平衡石を探してもらいました。


IMGP7362s.jpg

難しい作業ですが、今回の実習では全員が平衡石を取り出すことに成功し、お土産として持って帰って頂きました。


IMGP7375s.jpg

一通りスルメイカの解剖を終えた後は、オプションとして「スルメイカの循環系の着色」「コウイカの解剖」「マダコの解剖」のいずれかを希望者にして頂きました。
循環系の着色は食紅で色をつけたゼラチン水溶液を血管に注射します。


IMGP7376s.jpg

コツがいる作業ですが、挑戦された一人の参加者の方が成功し、鰓心臓や主要血管を可視化できました。



室内実習は、他にもたくさん予定されています。
予約が必要な行事ですので、参加ご希望の方はコチラをチェックしてください。
一度参加された方は補助スタッフとしてのご参加もお待ちしております。

2013年02月03日

長居植物園案内「木の実と落ち葉」

2月2日(土)、長居植物園で植物園案内が開催されました。
今回は植物化石を研究している地史研究室の塚腰学芸員に落ち葉と果実・種子について解説してもらいました。

RIMG0312.jpg




DSCF1025.jpg

ドングリは果実でしょうか・・?種子でしょうか・・?
果実にはめしべや柱頭の跡があるはず。ドングリには先のほうに柱頭の跡が見つかります。つまり果実ですね。


RIMG0314.jpg

ドングリの次はハンノキの観察です。
ハンノキの下に落ちている小さい種のようなものをテープでくっつけて観察しました。
よーく見るとめしべの跡が見えます。とっても小さいけれど果実です。


RIMG0315.jpg

今年はソテツの雌株がオレンジ色の実を付けました。
毛の多い葉につつまれて少しだけ見えているのがそれです。
おっと、ソテツは裸子植物ですから果実ではないですね。これは大きいですが、正確な言い方をすると種子です。



植物園案内は毎月第1土曜日午後2時30分から行っています。ポーチ下にその時間に集まればだれでも参加できます。
次回は3月2日。早春に咲く花をたくさん観察することができると思います。

2013年01月05日

ジオラボ「防災地図を作ってみよう」

12月8日、大阪市立自然史博物館・ミュージアムサービスセンターにて、ジオラボ「防災地図を作ってみよう」を開催しました。
参加者は20名で、大人から子どもまで幅広い年齢層の方が集まってくれました。



setumei2040.jpg

防災地図にもいろいろ種類がありますが、今日は「液状化予測マップ」を作りました。
まずは中条学芸員から液状化現象について解説。


jikken2056.jpg

ペットボトル液状化実験の実演。


ironuri2048.jpg

明治と平成の2種類の地図を使って、マップ作り。
地図の池、川、海岸線に色を塗って、現在の地図に透かしてどこが埋め立てられたかを見るようにしました。


mikurabe2052.jpg

埋立地は液状化しやすいのか。昔、池だったところは今はどうなっているのかな?


advice2049.jpg

埋立地が増えてるのが分かりますね。
えっ?こんなところが昔は池だったの?!


map0844.jpg

完成した液状化予測マップ。
左側:明治の地図、青いところが池
右側:平成の地図、赤いところが池を埋立てた場所


ジオラボは毎月第二土曜日に、ミュージアムサービスセンターにて開催しています。
次回は1月12日(土)、テーマは「断層・褶曲のモデル実験」です。
詳しくはコチラ

2012年08月05日

室内実習「昆虫標本の作り方」

8月4日(土)、自然史博物館の新実習室にて、室内実習「昆虫標本の作り方」を開催しました。
午前と午後の2回に分けて実施し、39名の方が参加してくれました。



insect 2.jpg

最初に、昆虫担当の初宿学芸員から作り方の説明を受けます。
それでは早速始めましょう。


insect 4.jpg

羽をそぉーっと広げて、慎重に。


insect 5.jpg

形を整えて。左右バランスよく並べるのがポイントみたい。


insect 6.jpg

ポーズが決まったら、針で固定。


insect 10.jpg

出来上がり。今回は3種類の昆虫を標本にしました。


insect 9.jpg

なんと家から持ってきたカブトムシで早速一人で作る子も登場。
かっこいい!!



夏休みの間に採取した昆虫の名前が分からないという人は、8月26日(日)に開催する「標本同定会」にぜひ参加してみてください。
たくさんの専門家が名前を教えてくれますよ。
もちろん昆虫以外に、動物、クモ、植物、キノコ、化石、岩石もOK!!
くわしくはコチラ
※自分で標本として整理し、できるだけ図鑑などで名前を調べ、わからなかったものをお持ちください。


2012年05月31日

東日本大震災と自然史系博物館 被災自然史標本の修復技法と博物館救援体制を考える研究集会

4月30日、陸前高田市博物館など、東日本大震災で被害を受けた博物館や自然史資料の救援に携わった全国の博物館関係者が集まりました。集会の要旨はコチラ

レスキュー_3512.jpg


約100人の学芸員が集まり、それぞれ編み出した様々な標本の修復テクニックの交換や今後の取組について、熱い議論がかわされていました。
陸前高田市博物館からも熊谷賢さんらも参加いただきました。

レスキュー_3516.jpg


ポスターセッションでは標本修復や救援に携わった各博物館の試みを掲示し、議論しました。

レスキュー_7151.jpg

ポスター出展していただいた博物館はコチラ


当日の様子についてはtwitterなどでまとめています。
今後、様々な媒体で報告を作成していきますが参考にしてください。
まとめ(1)
まとめ(2)
まとめ(3)


自然史博物館は、博物館と博物館を取り巻くコミュニティの復興に向けて今後とも、西日本自然史系博物館ネットワークとともに支援を続けていきます。