NatureStudyから記事を一部紹介します。 |
| 2004年5号 |
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有馬浩史・花崎ゆり・太田貴大 |
| 京都府芦生研究林におけるオオコノハズクOtus lempiji 幼鳥の標識記録 |
オオコノハズクOtus lempijiは,京都府では留鳥として年中府内に生息するものの,個体数はきわめて少ないとされており(須川・和田 2002),京都府レッドデータブック(2002)では「絶滅危惧種」に指定されている.また京都大学芦生研究林内では,1973年8月に1羽を保護放鳥した記録があるのみである(二村 1989).今回は芦生研究林内での鳥類標識調査において,オオコノハズクの幼鳥2羽を捕獲標識し,放鳥したので,以下にその概要を報告する.
調査地は京都府北桑田郡美山町京都大学フィールド科学教育研究センター芦生研究林である.芦生研究林は日本海にそそぐ由良川源流に位置し,森林面積は約4200haである.大部分の面積は冷温帯林下部に相当し,植物相は豊富で,岡本(1941)によって記録されている植物はシダ類を含めて860種にのぼっている(渡辺・二村 1971,二村 1989).調査日は2003年7月20日で,由良川源流の支流の一つである小ヨモギ谷付近のケヤキ林にて鳥類の標識調査(バンディング)を行った.調査には長さが12mで網目の四角の一辺が18mmのカスミ網(ATX)を1枚使用し,鳥類の捕獲のための誘引用音声としてコノハズクOtus scopsとヨタカCaprimulgus indicusの鳴声を録音したCDを再生して用いた.網場の環境は針広混交林に囲まれた1haほどのケヤキ林であり,下草は少ない.天候は曇りであった.
20時49分にオオコノハズクを2羽捕獲した.2羽とも腹・頭部・背・腰に換羽しきっていない幼綿羽が残っており,虹彩は赤味が混ざった黄色であったことから,巣立ち後間もない幼鳥であると判断された.性別は2羽とも不明である.以下に2羽の測定値を示す.1羽目;自然翼長167mm,最大翼長171mm,尾長82.0mm,ふ蹠長35.50mm,鼻孔前端嘴峰長12.60mm,全嘴峰長25.00mm,全頭長55.45mm,全長210mm,翼開長505mm.2羽目;自然翼長167mm,最大翼長172mm,尾長75.0mm,ふ蹠長36.90mm,鼻孔前端嘴峰長12.65mm,全嘴峰長25.65mm,全頭長55.15mm,全長215mm,翼開長530mm.図1(12ページ)に1羽目の写真を示す.この個体は測定中に「キュロロロ」と聞こえる声で鳴いた.
京都府内におけるオオコノハズクの繁殖状況に関しては,1978年に比叡山で巣立ち雛が観察されているものの(京都府 1979),営巣状況は十分に把握されていない(須川・和田 2002).今回の標識記録は京都大学芦生研究林内におけるオオコノハズクの繁殖の可能性を示唆するものであり,今後さらに詳しい調査を行って京都府内におけるオオコノハズクの繁殖状況を明らかにする必要がある.
最後になりましたが,本稿について適切なアドバイスをいただき,文献の入手にご協力くださった京都大学大学院理学部理学研究科動物学教室の梶田学氏と大阪市立自然史博物館学芸員の和田岳氏に深く御礼申し上げます.
<ありま ひろし:京大医学部・本会会員,はなざき ゆり:京大農学部,おおた たかひろ:京大農学部>
参考文献
京都府農林部林務課.1979.京都の野鳥.京都府農林部林務課,京都.
中村登流・中村雅彦.1995.原色日本野鳥生態図鑑,陸鳥編.保育社,大阪.
二村一男.1989.芦生演習林の鳥類相の季節変化.京都大学農学部演習林集報 19:1−16.
岡本省吾.1941.芦生演習林樹木誌.京都大学農学部演習林集報 13:1−112.
須川恒・和田岳.2002.オオコノハズク.(京都府レッドデータブック,上巻:野生生物編,935pp,京都府企画環境部環境企画課,京都).77.
渡辺弘之・二村一男.1971.芦生演習林の鳥類相.京都大学農学部付属演習林報告 42:1−15.
図1.京都府芦生研究林で鳥類標識調査中に捕獲されたオオコノハズク.瞳の色はフラッシュの影響で紫がかっているが,本来は黒色である.
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