大阪府高等学校生物教育研究会 2000/11/03
実験の紹介
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プロトプラストの観察と細胞融合実験
[生物教育研究会実験研修会]
◎1997年10月21日
◎大阪府教育センター理科第二室(生物)
◎山住 一郎先生
- [目的〕身近な植物材料を用いてプロトプラストを単離し、精製したプロトプラストを融合させることにより、体細胞雑種をつくるバイオテクノロジーの技術である細胞融合について理解する。
- 〔実験・観察〕
- プロトプラストの単離と観察
- ムラサキキャベツとチンゲンサイなどの適当量をハサミで細かくみじん切りにして、それぞれを目盛り付きの遠沈管に入れる。
- 表1の酵素液を5ml加え、20〜25℃で2〜3時間、毎分60回程度の往復振とうをしながらプロトプラストを単離する。(室温で一晩静置して酵素を作用させれば、翌日、実験に供することができる)
- プロトプラストけん懸濁液を60μm程度のナイロンメッシュで濾過し、30〜60秒間、手回し遠心器にかけてプロトプラストを集める。
- 駒込ピペットで上澄みの酵素液を捨て、0.5〜0.6mol/lのマンニトール溶液を加え、再度、遠心してプロトプラストを集める。この操作を2〜3回繰り返して、完全に酵素を取り除く。
- マンニトール溶液に懸濁されたプロトプラストを1滴スライドガラスに取り、顕微鏡で観察する。
- 細胞融合実験 観察したプロトプラストが正常な形態であれば、細胞融合の操作に移る。細胞融合法には電気融合法やPEG(ポリエチレングリコール)法などがあるが、授業で実施するにはPEG法が簡便である。
- 2種のプロトプラストを再度遠心器にかけ、プロトプラストを含む下方の溶液をそれぞれ1ml残して、上澄み液を慎重に駒込ピペットで除く。
- 一方の遠沈管の全量(1ml)をピペットで他方の溶液と混合し、遠心してプロトプラストを沈める。
- これをパスツールピペットで少量取り、スライドガラスの中央に滴下して約5分間静置し、プロトプラストを沈降させる。
−− 表1 プロトプラスト単離用 −−−
・1% マセロザイムR10
・2% セルラーゼオノズカRS
・0.5mol/l マンニトール
・5mmol/l CaCl2
・pH 5.8
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
- このプロトプラスト懸濁液のそばの周囲4か所に、ほぼ同量のPEG溶液(40%ポリエチレングリコール4000などの溶液に、 1mol/l CaCl2を5mmolになるように加えたもの)をパスツールピペットで静かに滴下する。
- 次に、爪楊枝の先端でPEG溶液を順に誘導して、懸濁液と接着させる)。この段階を検鏡すると、プロトプラストの融合が観察される.
- しばらく放置した後、静かにカバーガラスをかけ、融合している細胞を検鏡する。(長時間放置するほど融合は進むが、乾燥しないように注意しなければならない。シャーレに湿らせた濾紙を敷き、ふたをして乾燥を防ぎながら経時的に継続観察するとよい)
砂と粘土のイオン吸着とイオン交換のモデル実験
[生物教育研究会実験研修会]
◎1997年10月21日
◎大阪府教育センター理科第二室(生物)
◎松田 仁志先生
- 目的:メチレンブルー=陽イオン、エオシン=陰イオンと見なして、土のイオンを吸着する力と環境の影響を調べる。
1)陽イオンと陰イオンに対する砂の吸着力を比較する。
2)pHによる吸着量の変化と砂の表面での荷電の変化を考える。
3)酸性雨と石灰の散布の意味することを調べる。
- 準備:
- <薬品>2×10−3mol/l メチレンブルー溶液と2×10−3mol/lエオシン溶液(使用時に両液は1/10に希釈した)、洗剤:1/10に希釈した市販の洗剤、0.3mol/l塩酸
- <ガラス器具など>100または200cm3フラスコ、50cm3ビーカー、ビニールチューブ(氷菓子のあきチューブ)、ガラスウール(砂止め)、洗瓶、川砂(0.6〜1.2mm粒径:20cm3)。
- 方法:
- a)ビニールのカラムに入れた川砂20cm3へ2×10-4mol/l メチレンブルー溶液を50cm3ゆっくり流し込む。
→カラムの下から流れ出る液の色を観察する。(色素の吸着)
b)脱イオン水20cm3流す。 (溶脱の検察)
- a)2×10−4mol/l エオシン溶液20cm3をカラムヘゆっくりと流し込む。
→カラムの下から流れ出る液の色を観察する。(エオシンの吸着しにくいことを観察)
b)脱イオン水20cm3流す。 (溶脱の鶴察)
- 約0.3mol/1の塩酸を30cm3カラムヘゆっくりと流し込む。
→カラムの下から流れ出る液の色を観察する。(メチレンブルーの溶脱促進)
- エオシン溶液20cm3をカラムヘゆっくりと流し込む。(酸性下においてのエオシンの吸着の促進)
- メチレンブルー溶液を20cm3ゆっくり流し込む。(メチレンブルーの吸着の減少)
- a)石灰水(4%Ca(OH)2溶液)約20cm3をゆっくり流し込む。
→アルカリ性の環境でのエオシン(陰イオン)の溶脱の促進
b)メチレンブルー溶液を20cm3ゆっくり流し込む。(陽イオンの吸着の回復)
- 洗剤(市販洗剤の1/10希釈溶液)約20cm3をカラムヘゆっくりと流し込む。
→メチレンブルー色素の溶出(土の吸着作用に及ぼす洗剤の影響)
- 留意事項:
- 砂を使った実験と粘土を使った実験は本質的に同じ実験であるので、どちらか一方を一つの班が行うことにする。ただし、メチレンブルーの吸着量は粘土が非常に多いので酸の影響が分かりにくい。説明は同じ方法でできる。
- 砂と粘土の実験を一班おきに配置すると、前後左右の班が違うようになり、比較しながら同時進行することができる。
- 段階を追って進め、記録にまとめていく。