大阪府高等学校生物教育研究会 2000/11/03
実験の紹介
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花粉を用いたいくつかの観察・実験
◎平成10年3月3日
◎第4回実験研修会(於府立佐野高校)
◎府立城山高校 西谷信一郎
植物の花粉は身近に入手でき、その量も確保しやすいよい教材です。これまで花粉の観察・実験ではホウセンカを使った花粉管の伸長の観察がよく知られています。今回は花粉をキーワードとして、その他にどのような観察・実験ができるか考えてみました。なおこのレジメには取り上げなかった様々な観察・実験は市販の実験書に、あるいは個人的に工夫されている先生方も多いと思います。この実験研修会の場を通じてアイデア等の交換ができればと思います。
- 【花粉の採集】身の回りを見渡していると意外にも花粉を集める機会に出会うものである。校内に咲く四季折々の花からでも幾種類もの花粉を集めることができるし、卒業式などの花束や生け花などは一度に多くの種類が得られる。また花屋ではユリの花粉など花を汚す邪魔モノ扱いで捨てられている。野外へ行くときに小さなビニール袋を幾枚か持っていると目に付いた花と花粉の採取に便利である。
- 花粉を暗視野で観察する方法:顕微鏡の絞り板をまわして下からの透過光を遮断する(孔と孔の間の位置にする)。その状態でスライドガラス上に撤いた花粉を低倍率(70〜150倍程度)で観察する。
- 花粉内部の観察材料:ミドリオオアマナ(Ornithogalum virens,n=3)など方法:スライドガラス上に撤いた花粉に酢酸オルセイン液を滴下し、カバーガラスをかけて観察する。
- 花粉プロトプラストの観察と細胞融合材料:ユリ(Lilium sp.)の花粉およぴハボタン(Brassica
oleracea var. acephala)方法:酵素液にユリの花粉を入れプロトプラストのできる様子を観察する。またボリエチレングリコール法で、ハボタンの葉肉細胞との細胞融合を試みる。生物実習書解説編
p80 を参照。なお、酵素はセルラーゼ1%、ペクチナーゼ(マセロザイム)0.5%濃度に設定した。
- ハチミツの中の花粉を調べる材料:市販のハチミツ
方法1:ハチミツを1滴スライドガラスにとり、カパーガラスをかけて検鏡する。
方法2:ハチミツ1gを遠沈管にとり適量の水で薄め、x1000〜x2000rpmで5分間遠心分離器にかける。上澄みを拾て、2〜3回この操作を繰り返す。残滓を少量の水に懸濁し、その一部をスライドガラスにとり検鏡する。
- 花粉の大きさを調ぺる。〜倍数性と花粉〜
材料:モクレン属(Magnolia、X=19)およぴキイイトラッキョウ(Allium
virgunculae var.kiiense、2n=2x=16,4x=32)の花粉
方法:酢酸オルセイン液で染色した花粉を高倍率(600倍)で検鏡し、接眼マイクロメーターでその長径を測る。モクレン属ハクモクレンコブシキイイトラッキョウ吉座川産東米良産*必要に応じて母平均の差の検定を行う。
- 【参考】花粉の測定例と母平均の差の検定
モクレン属ハクモクレン(M.denudata、2n=6x=114):51.2±0.6μmコブシ(M.kobus,2n=2x=38):43.8±0.5μmキイイトラッキョウ古座川産(2n=2x=16):38.9±1.6μm東米良産(2n=4x=32):43.2±1.5μmt=(43.2-38.9)SQUAREROOT(100/(10+10))×SQUAREROOT(18/(9((1.6)^2+(1.6)^2)))=6.2
t分布表(自由度f=18)によると2.1(α=0.05)。平均値に有意差がある。(両方の母分散が等しいと言えなければ、t検定にもちこめないので注意)