「生物から学ぶということ」
                           江坂 高志 (理科第二室 室長)
 
江坂 高志 室長 朝、 教育センターに出勤して一番にすることは教員研修用に飼育している
小動物の顔を見に行くことである。小・中・高等学校、支援学校の生物領域
の研修を担当しており、 年間を通じて飼育・培養できる教材生物を維持して
きた。 生き物を元気な状態で長期間維持することは労力と時間を要すること
であるが、 学校教員には教科書に載っている生物の実物を一度は見てお
いて欲しいと思うし、 可能であれば児童・生徒にも見せてやって欲しいと
思うからである。
生き物を飼うということには慣れが必要である。毎日見ていると、ちょっ
と泳ぎ方が変だなとか、餌の食べ方が?ないな、水が汚れ過ぎたなとかいうことに気が付くようになる。 早めに気付いて対処してやれば、 死なせてしまわずに済むことが多い。 あまり神経質になって世話をすると却って駄目にすることもある。     江坂 高志 室長
慣れるには、 失敗をも含めた経験の積み重ねが必要である。
研修受講者には、 「学級担任なら朝一番にクラスの子どもの様子をよく観察して欲しい。 A君はなんだかいつもより元気がないな、Bさんは少し顔色が悪いな、後で声を掛けてみよう、 ということを実行してくれるとありがたい。」 と常々言ってきた。生物という領域の研修を通じて何を伝えるのか。 科学的知識や考え方、 実験・観察の方法や技術向上については勿論、 子どもとの接し方についても今一度再点検して欲しいと思っているからである。
アメーバという生物がいる。 中学校や高等学校の教科書に出てくるし、俗に 「アメーバからヒトまで」 というような言い方もある。名前を知っている人の多い生物であるが、実物を見たことの無い理科教員も多い。 総じてアメーバのイメージはスライムのごとくで、 ズルズルと滑るように移動するものと思われている。 教科書にはそうした感じの顕微鏡写真が載っているので、 無理からぬことかもしれない。
双眼実体顕微鏡で見たアメーバしかしながら、実際のアメーバの姿はもっと立体的であり、這うのではなく、 細胞表面が伸び出した仮足を使って餌を捕らえたり、歩いたりしているのである。 教科書には、 アメーバをスライドガラス上に採り、 上からカバーガラスを掛けて押しつぶして見た顕微鏡写真が載っているのであって、 それは通常のアメーバの姿ではない。 内部構造を良く観察できるように無理やり扁平にしているのだ。 観察方法に注意しないと実際とは異なるイメージを持ってしまうことになる。 生物の教員研修でアメーバを見せるときには、 まず
 双眼実体顕微鏡で見たアメーバ 肉眼で、次に双眼実体顕微鏡で、 最後に顕微鏡で観察してもらっている。
我々は、人を見るときにもいろいろな視点から見ることが必要で、先入観や思い込みに囚われないことが肝要だと思う。 子どもを指導するときには気をつけて欲しいものである。 個人個人がそれぞれの長所を生かすことができ、周囲がそれを認め、皆が生き生きと活動できるような集団作りを願ってやまない。
以上

トップに戻るトップに戻る

行事等のお知らせに戻る行事等のお知らせに戻る