教員一般用実習案内
平成22年9月実施  阪大タンパク質科学実習
ホタライトを用いた科学的キャリア教育
〜科学的思考の実践的トレーニングを通じて、問題発見・解決の喜びとその意義を知る〜
                        ( 実施主担 大阪大学大学院理学研究科 吉本和夫 )
“さあ みなさんも 実験や思考、討論バトルをお楽しみ下さい!
 
教育者はこれでもう完全というレベルをめざして頑張るのですが教育には完全はありえません。どこまでいってもこれでよしという段階には至れないのです。教育ほど奥深く面白いものはありません。阪大実習では、教育の楽しさ、面白さ、奥深さを堪能していただけますので是非ご参観下さい。
 
本実習は、従来の阪大分子生物学実習とは異なり実験自体は簡単ではありますが、従来の阪大分子生物学実習と同様、思考あり感動あり学びある実習となっております。そして、科学的キャリア教育として科学的思考を重視し高校生に科学への適性などを考えるきっかけを与えるように工夫されております。
ご参観、参加のご希望やご質問など遠慮なく吉本までお申し出下さい。なお、本年度は、あと2回(11月21日2月12日)本実習を実施する予定ですが、今なら生徒参加のご希望についてもお受けできる余裕がございますので、お気軽に吉本までご相談下さい。なお、準備の都合がございますので、ご参観、参加のご希望は必ず事前連絡をお願いします。
吉本連絡先 e-mail:yosimoto◎bio.sci.osaka-u.ac.jp  (TEL)06-6848-5533
                   ↑迷惑メール対策で◎にしています。
実施日  平成22年9月26日(日)
 9時30分〜18時40分ごろ
会場:阪大豊中キャンパス理学部本館2階b236生物学生実験室
対象:大阪女学院高等学校・大阪府立和泉高等学校
 2・3年生 理系進学志望者 約30名
          その他 教員研修数名など
[注]場合によっては開始時間が少し早まるかもしれません
  今後の実施予定 平成22年11月21日(日)主な対象:京都府立南陽高校・
京都府立莵道高校
          平成23年2月12日(土)主な対象:兵庫県立大学附属高校
 
本実習では、企業が遺伝子組換え技術で開発した製品ホタライト[発光酵素ルシフェラーゼ]にこだわり、実験、思考、問題発見、仮説の設定・検証実験立案、追加実験、研究発表、討論質疑応答バトルまでを1日かけて行い、科学的思考過程(問題発見・問題解決)を実体験します。科学や思考をエンジョイしながらその楽しさを伝え、高校の教科書(生物U・化学U)の内容であり入試にもよく出題されるが、授業ではあまり扱われない生命科学・タンパク質科学の本質に迫るものです。また、高校生が現実の科学の世界に触れることで、科学へ自己の適性などを考えるきっかけを与え、さらに、企業の研究者がどのように遺伝子組換え技術を用いて製品を開発し、それがどうのように実社会に貢献しているのかを知ることで実社会と科学技術の関わりを学ぶことができる「科学的キャリア教育」となっております。
進路選択の時期にも当たっている生徒さんの人生にとって重要なインパクトを与える可能性のある企画でもありますので一度直接ご覧下さい。
※詳細は、別紙[送信可]の吉本授業指導案・実験書をご参照ください。
※授業記録ビデオもあります。
 
 
<実習日程> ※A2名で1班形成 → B2班合併で1グループ形成
@事前指導・スタッフ紹介  9:30〜10:00
Aホタライト実験      10:00〜11:55(生徒立案オプション実験もあり)
B実験に関するレポート作成・提出(班別グループ別討論:時間制限あり)
 仮説の設定1[班別]    11:55〜12:00
 仮説の設定2[グループ別] 12:00〜12:40(グループ別生徒立案追加実験も含めて)
昼食(学食不可昼食持参)  12:40〜13:40(研究室見学
C講演(実験・小問含む)  13:40〜14:50(赤色光を出すルシフェラーゼ
 :タンパク質と遺伝子の関係、ホタライト試薬大量生産とその応用、ルシフェラーゼ・GFP・インフルエンザタミフルについてのタンパク質科学など
D実験結果分析解説     15:00〜15:35
E生徒発表・質疑応答バトル 15:40〜17:20(生徒発表練習10分含む)
Fキャリア教育事後指導   17:25〜18:40
GSPPアンケート配布・集合写真撮影
[注]終了時間が少し遅れるかもしれませんがご了承下さい。
 
@事前指導[科学的思考過程概説]・スタッフ紹介
  科学的思考過程やこの実習の趣旨を説明し、科学や思考をエンジョイすることを伝える。
   本日の目的:ホタルの光を通じて実験と思考を楽しむ!
   キーワード:科学的思考過程・情報活用・思考のキャッチボール
(グループ討論・発表と質疑応答バトル)
A実験説明・実施
  実験結果予想→結果分析→予想に反する→なぜだ?
  オプション実験:生徒計画立案→その場で実験実施
B実験に関するレポート作成・提出(班別グループ別討論:時間制限あり)
※2名で1班→2班合併で1グループ形成
  仮説の設定1[班別](この実験結果から明らかに言えることを指摘する)
  仮説の設定2[グループ別](この実験結果・考察から気づいたこと発見したことをもとに想像できることから仮説の設定をし、その検証実験を計画立案・結果予想する)
ただし、制限時間内であればグループ別に追加実験しこれをレポートに反映させてもよい。
C講演(講演内で、実験をし課題を与え思考させる)
 1)遺伝子とは何か「我々の持つ遺伝的形質は、タンパク質のアミノ酸配列や立体構造に起因している」
 2)「遺伝子組換え試薬ホタライトはどのようにして開発され、作られたのか?」など開発企業(株)キッコーマンで行われた遺伝子組み換え技術について。また、この製品が実社会でどのように活用されているのかについて。
 3)「ホタライトのルシフェラーゼの不思議に迫る!」「耐熱性はどのようにして得られたのか?」などタンパク質工学について考えてみる。(ホタライト小問出題・提出)
4)自然光ではない赤色光を出すルシフェラーゼが存在することを発光実験で体験し、この不自然な光を出すホタル?について考えてみる。遺伝的にプログラムされ遺伝子DNAに書かれた行動(本能行動)にも迫る!
D実験結果分析解説
仮説1の解説:この実験結果から何が言えて、何が言えないのか?不思議なことに気がつかないか?何か発見?
       「最適温度・最適pH・変性からの回復可能不可能」について
       「なぜpHが変わると弱くなるなか?なぜ低温で弱くなるのか?」「白い濁りの正体は?」
E生徒発表・質疑応答バトル
  仮説2:「気がついたこと、不思議に思ったこと、何か発見したこと」について設定した仮説とその検証実験について、グループ別に発表する。その発表に対し、高校生、大学生、先生などから質問・意見を受けて、質疑応答バトルを展開していただく。
Fキャリア教育事後指導
 この実習は、実社会を知り自己を見つめ将来の進路と自分の適性を考えるきっかけを与え、今後、自分で主体的に進路適性について判断していくためのものです。
この実習で、このように科学や思考エンジョイしながら「科学的思考・未知への挑戦が、面白くない、楽しくない、耐えられない」という方は、現在の段階で科学の世界に適性がないかもしれない。
しかし明日の君はわかりません!明日、君が変われば向いてくるかもしれません→今後のみなさんのやる気・努力で、変わることができるのです。あきらめるな!
しかしもしダメで進路変更しても大丈夫です。
人間はいろいろな潜在的能力あり、どんな能力持つかは不明です。
要はいち早く自分の能力を知って、それを引き出すことが肝心。
ではその方法は??→「何でも一生懸命やってみる!」ということです。→そうすると、これは行ける、これはダメだという感じで、何に適し、何に不適かがわかるはずです→逆に「一生懸命」やらない、いい加減な者には明日は見えきません!→自分を知らずしてどうようにして生きていくのか?!→とにかく、君達の「一生懸命」から、生き甲斐ある人生を見つけて欲しい!
 
<実習概要>
1 題材  光を生み出す不思議なタンパク質「酵素ルシフェラーゼ」の働きと性質
2 主題  ゲンジホタルの発光現象は、酵素ルシフェラーゼが、基質であるルシフェリン及びATPと反応することによって生じる酵素反応である。
この酵素反応を通じて、酵素の働きと性質やタンパク質の構造について考え、発光の神
秘に迫る
3 目標  予想を立てた上で実験を行い、予想と異なる実験結果に対して原因を解明するための追加実験を立案することにより科学的思考力・問題解決能力を養成し、実験結果から新たな問題点を発見させる。生命に対する感動と思考を通じて、新たな学び(学校では扱わない「生命の本質」)へと導く。また、科学や思考の楽しさを与えることで学習意欲へとつなげると同時に科学への自己の適性について考えさせる。
1)普段したことがない実験中や実験のあとの科学的思考(情報活用)「観察→問題発見→仮説の設定→検証実験立案→問題解決」の重要性と楽しさに気づかせ、
2)「高校理科の対象は、problems(既知)であり、大学から現実のサイエンスの対象は、issues(未知への挑戦:未解決の難問題)である」という高大格差を実体験し大きな衝撃と学びを与え、未知への挑戦へと導く。
3)そして、自己を見つめ、今後の進路と自分の適性を考えるきっかけを与える。                                4)グループで議論してみんなで問題解決する思考のキャッチボールを体験させ、その楽しさと重要性に気づかせる。                                                                         5)全体発表や討論する機会を与え、科学の世界での議論を実地体験して、自己のビジョンをしっかりプレゼンテーション
できることの大切さと喜びに気づかせる。また、他者の意見を理解し評価できる能力を育成したい。
<持ち物> 生物図録・生物授業ノート・筆記用具・配布済阪大地図・交通費・昼食持参
<交通>  地下鉄御堂筋線:梅田〜千里中央(約20分)→南改札口から南へ徒歩約5分→
       大阪モノレール:千里中央〜柴原(約5分)→進行方向へ徒歩約5分
 
※配布の阪大豊中キャンパス地図ご参照
 
<連携参加校への事前学習依頼内容>
基礎知識・情報がないと今回の探究的実験で思考をエンジョイできませんので、この点御注意下さい。このホタライトの授業は短いですが、従来の阪大分子生物学実習と同じ教育理念で構築されておりますので、最低限の知識をもとに実験結果を思考し、その結果からさらに次の一手を各班で思考し、追加実験をこの授業の中で行います。そして、このすべての実験結果から何が言えて何が言えないのかを各班で考えて仮説とその検証実験をレポート化し提出させます。そのあと、このレポートをもとに生徒に発表させ、さらにそれをみんなでディスカッション(質疑応答バトル)を行います。いずれにしても、この基礎知識を導入する事前学習が重要となりますのでよろしくお願い致します。このホタライト実習までに基礎知識・基礎基本を事前学習で導入していただければ結構です。
基礎知識・基礎基本としては、酵素(生体触媒)とは何か、酵素の構造、基質特異性、最適pH、最適温度などをお願いします。もちろん、熱変性や失活も実験に出てきますので必要となります。最適条件についても温度やpHの実験をして思考するのですから、当然、タンパク質の立体構造の変化も必要です。また、その基本となる、酵素の簡単な作用機作・タンパク質の構造は言うまでもありません。それと、化学知識としては、最適pHが出てきますので水素イオン濃度(pH)は当然必要になります。その他は、実験書と吉本授業指導案を見ていただき、この内容からご判断よろしくお願い致します。
なお、別紙のホタライト小問(セントラルドクマ・遺伝子DNA・タンパク質の合成関連)を全生徒に配布出題し、当日提出していただきますので、この点をご配慮いただき、事前学習よろしくお願い致します。
 
 
<実習参加高校生感想文より> 「教育ほど奥深く面白いものはありません」
この実習でも、教育の楽しさ、面白さ、奥深さを堪能していただけますので是非ご参観下さい。
 
ホタライトの光は、小さく、しかし力強い光でした。その光は、確かに私に一筋の明るい光を差してくれたように思います。」(参加高校生の言葉)
正直、ホタルの発光物質に酵素を入れて光るのを見たところで人生観まで変わるなんて考えもしませんでした。しかし、この実習に参加したあとの私は、参加する前とは全然違って目がきらきらしていたと思います。それぐらい、私にとっては感動の連続の実習でした。・・目標にむかっていく中で、将来、壁にぶつかることもたくさんあると思いますが、問題発見、多様な視点からの問題解決を忘れずに、やるべきことをしっかりとやれる、生きる力の強い人になろうと思いました」(参加高校生の言葉)という感想文にありますようにこの実習も高校生の心に光を与えたようです。
「この実習の一番の特徴は、共通の実験から、各班毎に違うテーマを設定し、それについて自分達で調査するところにあると感じた。目の前の現象から疑問を見つけ出し、それについて調査し、そして他の人に向けて発表するこの実習には、ひとつの研究の流れがありのままつまっていた問題発見から解決・発表までをこなす機会というのは、普通の高校生活ではそうあるものではないと思う。以前参加した遺伝子組換え実習と今回のホタライト実習、どちらがレベルの高い物かと問われれば、躊躇なく今回のホタライト実習だと答えるだろう。・・我々は、共通の現象から注目すべき一点を見つけ出し、その混沌を解決すべく思考錯誤するのである。」(参加高校生の言葉)というように本実習は、従来の阪大分子生物実習ジャイアントインパクト[3日間連続]とは異なり実験自体は簡単ではありますが、従来の阪大実習よりも高く評価する生徒もいました。
この実験はいろいろな高校でもできる酵素実験として開発した実習です。こんな簡単な実験で「今やってる学習に意欲をもたらし、大学に入学しその後の将来まで見通せるようにしてくれる実習は阪大実習ならではだと思います」「私の勉強や人生に対する見方を変える話ばかりで、衝撃を受けっぱなしでした」と高校生達が人生観を変えたということはどういうことか、不思議ではないでしょうか?これが教育のマジックでありすごさなのです。
教育者はこれでもう完全というレベルをめざして頑張るのですが教育には完全はありえません。どこまでいってもこれでよしという段階には至れないのです。教育ほど奥深く面白いものはありません。この実習でも、教育の楽しさ、面白さ、奥深さを堪能していただけますので是非ご参観下さい。
 
また「"人は たった1日でも 何をするかで変わる"」「実習のおかげで私は変われました。多分。あの元気も自信もなくした昔の自分ではありません。今はなぜか幸せな気分で元気です。」「阪大実習に行く度に僕は色々学んでいると思います。issuesに挑戦する楽しさや、分かった時の嬉しさや楽しさ、新しいことを知る面白さ、問題を発見することの難しさ、それを解決するためにどうしたらいいのか、など・・・。こういうことは授業では学べないし、誰からも教えてもらうことは出来ないと思います。これを学ぶ為には阪大実習のような場が絶対に必要だと思います」と高校生は言っており、このホタライト実習もたった1日の簡単な実習ですが存在価値のある教育企画のようです。
高3年の実習で受験期にどうであらろうかと危惧されましたが、逆に「一日受験勉強するのに費やすより、阪大実習に来たほうが絶対よかったと思いました」と述べている高校生が多く、むしろ、この実習はこの3年生の時期でよかったか
もしれません。高3になって受験勉強で落ち込んでいる時に心のエネルギーが供給できてラッキーということでしょう。
また、新規に3年生用進路指導を少し入れましたが、高3年生も満足して喜んで帰られたようです。「「問題発見」があってこそ体験できる「解決」、そう思うと、私は今までどれほど「根拠のない解決」を経験してたんだろう?それぞれの「解決」には必ずその問題が存在する意味があり、全ての「解決」が様々な「問題発見」に繋がっていくんですね。・・・世の中"既に用意されたproblem"(既知)が溢れる中で"issue"(未解決な難問題)を見つけ出すことが難しくなっている気がします。…といってもニュートンの時代に「何がものを落としているのか?」と思った人がニュートン以外にさほどいないだろうと思えば、「"problem"が溢れている」のも私の脳の錯覚でむしろ"issue"の方が多いかも。そう思えた瞬間人生が明るくなりました。全ては世の中に積極的になること、おそらく人類がずっと続けてきたこのことを私は忘れかけていました。」(参加高校生感想文より)
 
 
 
 

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