大阪府高等学校生物教育研究会
日生教富山大会報告
日本生物教育会(JABE)第53回全国大会(富山大会)報告平成10年度の日本生物教育会(JABE)全国大会は、8月3日から6日まで、富山県の富山県民会館を主な会場として行われた。 今年度の大会の主題は「豊かな心をはぐくむ生物教育」で、研究発表や協議が活発に行われた。 大阪から遠方の富山で開催されたが、大阪からの参加者は34名であった。また、大阪からの研究発表は6題、研究協議は2題あり、これらは、それぞれ、大会全体の研究発表件数46題の13%、研究協議件数9題の22%に相当するものであった。大阪の発表件数は昨年と同数で、大阪の生物教育に対する研究意欲の高さを示すものであった。 本大会で、私立梅花高校の福原修一先生と田部雅昭先生は、中路賞並びに銀賞を受賞されました。両先生ともおめでとうございます。
富山大会の概要は以下の通りであった。
- 8月3日は全国理事会が行われました。
- 8月4日の午前は記念講演Tが行われ、元富山大学教授の長井真隆先生が「富山の自然と生物」について講演された。
講演内容は富山の自然の概要、館山の植生、黒部峡谷の自然、富山湾の自然の4点についてであった。特に富山は日本海から立山連邦の高山まであり、植生が大変豊であり、生物の多様性も高い。動物相もニホンザルやニホンカモシカなどが生息している。富山湾は日本海固有冷水塊がありベニズアイガニなど特徴的な生物が見られることを強調された。
- 午後からは研究発表が4つの分科会に分れて行われた。
- A1会場では、大教大附属高校(天王寺)の森中敏行先生の「プルーフ理科環境教育への取り組み」は、昨年の発表に引き続き、生徒自身にに考えさせる思考重視の環境教育の実践を紹介された。
- 府立天王寺高校の橘 淳治と大阪府教育センターの山本勝博先生の「従属栄養細菌の定量の教材化低栄養細菌の簡易測定を中心として」は、昨年からの継続研究で、従属栄養細菌の簡易培養法の開発と、その有効性や教材化について発表した。
- A2会場では、私立摂稜中学高校の塚平恒雄先生の「猫ひねりと兎ひねりウサギだから月面宙返り」では、過去からの猫ひねりの実験の延長としてウサギを用いて行ったものをされた。
- C会場では、橘 淳治の「生物教育におけるインターネットの活用環境分野における利用可能性」は、府立高校のインターネット接続環境を考え、生物の環境分野で地球温暖化をテーマに授業実践を行ったものについて、生徒の反応やその有効性について考察した。
- 橘 淳治の「湖沼沿岸帯の水質浄化の研究ヨシ帯における水質浄化の研究」では、大阪府立大学構内の池において、化学的な水質ならびに匂いセンサーによる匂い強度などを測定し、ヨシ帯が水質浄化に果たす役割が大きいことを発表した。
- 塚平恒雄先生の「相対性理論から見た進化論恐竜絶滅説に新説」では、相対論に基づくローレンツ短縮などと生物の寿命について独自の考えを発表された。
- 8月5日の午前は研究協議と記念講演2が行われた。
- 研究協議は、C会場で府立佐野高校の加賀友子先生が「先端科学技術の生物教育への利用」を発表され、英国や米国における先進的な取り組みの歴史と、日本での取り組み例の紹介の後、教師の研修機会の確保と、専門家による中高向け実験構築の必要性を強調された。
- 大教大附属高校(平野)の吉本和夫先生の「現行教育課程の総括から次期教育課程に向けておもしろくない生物1Bをおもしろいものにするために」は、現行教育課程の評価を行い、生徒の立場に立った生物教育のシステム作りを強調された。
両者ともに活発な質疑応答が行われた。
- 同日の記念講演2は、富山大学教授の浅野泰久先生による「酵素バイオテクノロジー」で、触媒としての酵素と微生物酵素開発の研究の最前線を紹介され、今後の展開についてわかりやすく講演された。
- 同日の午後から8月6日にかけて、黒部峡谷コース、立山(東一ノ越)植物観察コース、立山(雄山)登頂コースの3コースに分かれ現地研修が行われた。
来年度の日本生物教育会第54回全国大会は、「21世紀をになう子どものための生物教育」を主題に、京都府のノートルダム女子大学で平成11年8月3日(火)〜6日(金)の日程で行われます。 近年、全体の発表件数が少ない中で、大阪は活発に研究発表を行ってます。来年度は京都府ですので多くの先生方の発表と参加を願います。