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2020年度 博物館実習3日目

こんにちは、1班のT.R.です。
今日は、1) 収蔵庫の植物標本見学、2) 被災標本のレスキュー作業、3) 配架体験 を行いました。
これら3つについて、以下に詳しくお話します。

1) 収蔵庫の植物標本見学では、植物の標本が収蔵庫に配架されるまでのフローをお話しいただきました。まず採集者が、採集し標本作製、同定、ラベル作製をして、博物館等の収蔵庫へ寄贈します。そして、管理者となる博物館の担当学芸員が、標本の状態を確認した上で、(押し葉標本の場合は)標本を台紙に貼付し、データベース登録がなされます。最後に、害虫を冷凍燻蒸などで死滅させ、配架となります。
このようにして保管された標本は、たくさんの方々に利用されています。その中には、プロの研究者や環境コンサルタント業の方だけでなく、リタイアした先生や、アマチュアの研究家の方、ボランティアの方もいらっしゃいます。標本は、この方々の心の拠り所となり、博物館の収蔵庫が、憩いの場として活用されているように感じました。

2) 被災標本のレスキュー作業では、令和2年7月豪雨で被災した、熊本県の博物館から寄せられた標本を扱いました。これは、熊本の博物館から、収蔵庫同士のネットワークを通じて、復旧作業が呼びかけられたものだと伺いました。標本は大正時代に作製されたものであり、当時の新聞紙が吸取紙として使用されていました。「脚気に効く薬」の広告や心中の記事など、作製当時の時代背景が窺えました。私たちは、アブラナ科の標本を担当し、被災標本の痛ましさを目の当たりにしました。泥だらけのものや、カビが生えているものから、被害の悲惨さを感じました。
もちろん、標本が被災した時のレスキュー作業についてのノウハウや連携も必要ですが、被災しない場所や状態で保管されることが重要です。しかし、日本は天災の種類や頻度が多いため、安全性と利便性を兼ね備えるのは困難であると思いました。

3) 配架体験では、学芸員の方が作製された標本を、分類体系順に並べられた正しい場所に保管する作業を行いました。これは、「絶対に間違えてはいけない、郵便屋さん」だと教えていただきました。順序に従わないと、いざ標本を見たい時に見つけられず、半永久的に利用できないおそれがあるからです。素人にはさせてはいけないと言われる配架ですが、様々な標本にふれることができ、一番魅力的な業務でした。
ここで、植物標本は、他の生物の標本以上に、作製者の目的意識や美意識を汲み取ることができると感じました。後世に何を残したいかを考えられた標本は、採集季節や部位に気を遣ったり、写真を添えてより汲み取りやすくする工夫があります。この工夫の中に、作製者の人となりや歴史が刻まれていると思うと、より標本が愛おしくなりました。

以上のように、全て標本に関わる内容であり、標本を取り巻く環境や人との関わりを学びました。とても魅力的な実習続きで、明日も楽しみです!ご拝読いただき、ありがとうございました。

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