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2022年度冬期博物館実習5日目(1月12日)

 こんにちは、実習生ブログ2022年度1月12日担当、三重大学のE.Kです。
 この日は実習最終日。私達1班は、担当学芸員I先生のもと、地層に関連する実習活動を行いました。

 私達の班はまず、はじめに一般収蔵庫の床掃除からです。地下の一般収蔵庫には、「害虫や気温・湿度変化に比較的強い」動物の骨格標本や書物に加えて、地層の剥がし標本、地下のボーリング調査サンプルが計5万点以上のもの凄い数がありました。中央から通路が両側へ均一に数本広がる中を、一列ずつ手分けして床をほうきでできる限りごみを集めました。
 ごみはすぐさま捨てません。列ごとで集めたらすぐさま害虫の遺骸の有無・数・状態をI先生と共に確認していきました。これにより、「害虫が大量発生していないかどうか」を見極めるためです。探すのは肉を食べるルリホシカムシ、カツオブシムシが主な害虫に挙げられます。
 過去にこの一般収蔵庫における動物骨格標本の領域で、昔の標本から大量発生したことが一度だけあったそうです。虫の拡大は抑えられたものの、博物館にとってはとてもゾッとする出来事です。発見が遅れるだけ、貴重な標本達が蝕まれていくのですから。
 実は、今回の掃除でこれらの遺骸が数匹見つかりました。ただし、遺骸は乾燥して崩れていること、一列に見つかっても0~3匹のみであったことなどから、これらは過去の事件の残骸で、現在の害虫の大量発生は無いと判断されました。ほんの小さな虫をよく見て推理する様が探偵と同じようでかっこいいと思いました。もはや掃いたごみの動きでその中に虫がいるかどうか分かるということには驚きです。

 また、土の標本は、剥ぎ取り標本と柱状標本(ボーリングサンプル)が収められており、剥ぎ取り標本は地層の様子を一度に一畳分程度の広さで観察することができるものです。欠点としては、いくら強力な接着剤を使っていても、土や砂は落ちていてきてしまうものです。そのために、収蔵庫の床には少々砂が広がっているのは仕方ないことです。そして、ボーリングサンプルは、1mごとに一本、一箱に三本3m分収められています。ただし、同じ個所で数百メートル分の深さでサンプルが回収されるため、これもまた膨大な数が年々集ってきます。例えば、小学校の地質調査では240m分、つまり80箱分のサンプル収納スペースが必要になります。しかも、1箱は二人がかりでやっと運べる重さです。これだけの労力をかけてまでも、遺すべきものが博物館の地下には尽きないほど収められているものです。

 次に、午後からは、地下の様子を赤裸々に取りまとめることができる「ボーリング柱状図」の入力システムの取り扱いについて学びました。しかし、その前に、地下のデータを取るためのボーリング調査への理解を深められる特別展「大阪アンダーグラウンド リターンズ」をチラ見させていただきました。実際のボーリング機器の迫力、SNSでバズッたという(広く注目された)地震解説装置、大阪の地下の成り立ち、発見された巨大な化石の数々、見えないけれど確かにある私たちの「土台」について面白く知ることができます。
 その後、「ボーリング柱状図」の入力システムを使ってみました。実際に地質調査会社が調べた参考資料をもとに、公で共有できるようなxml形式というデータに落とし込むことも学芸員の役割です。データ化し、半永久的に保管することで、いつの日か陽の目を見るときに、人類に役立てるための備えとなります。
 最後に、入力システムを用いた「ボーリング柱状図」には、一枚に膨大な情報量をまとめることができ
ます。各深さの土の種類・色・質感・相対密度・相対稠度(ペースト状のものの流動性)・土の貫入に対する硬さ(おもりを何回落とすことである深さまで凹むかを調べる)などなど、入力するだけでもかなり手間がかかるものでした。

 この五日間の博物館実習で、博物の知識欲が復活したように感じます。普段は見られない裏側を直接真剣に教えていただき、大阪市立自然史博物館学芸員の方々へ感謝いたします。ありがとうございました。

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