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博物館実習3日目(2015/10/09) 3班の活動

大阪市立自然史博物館での博物館実習も3日目を終えました。
始まる前は「これから5日間もあるなー、よっしゃ、頑張ろう」などと思っていましたが、気づけばその半分以上の日数が過ぎてしまったわけです。早いッ!!
残りの2日も充実した活動にしたい所存です。

さて、本日の3班の活動は、[昆虫]にまつわるテーマでした。
大まかには、次のような内容でした。

〈午前〉
・大阪市立長居植物園 内の“バタフライガーデン”にて、アサギマダラ(蝶)の調査。
・植物への水やり,草むしり。

〈午後〉
・翌日に開催されるイベントの配布物作成。
・昆虫標本の収蔵庫見学(特別収蔵庫)

以下、詳細を述べます。

〈午前の活動について〉
明日10月10日(土)、長居植物園内の“バタフライガーデン”にて、長居植物園と自然史博物館による合同イベント『蝶のオアシス in おおさか』が行われます。
バタフライガーデンとは、要するに「蝶にやって来てもらうためのお花畑」で、昨年(2014年)開設されたばかりのエリアです。私たちの実習中にも様々な蝶が飛び交っていました。

バタフライガーデンには多くの蝶がやってきますが、なかでも“アサギマダラ”という蝶は春~初夏に北上し、本州の高地で繁殖した後、秋には急速に南下し、台湾や香港などに到達する個体もいる…という、「ものすごく長距離を旅する蝶」です。

どうしてそんな生態が分かるのでしょうか?
それは、一般の愛好家さんたちによる「マーキング調査」によって分かったものだそうです。
マーキングとは、捕まえた蝶の翅にペンでマーク(捕獲場所、調査者のイニシャル、個体番号、日付など)を書き、それを再び野に放って行われる調査です。
野に放った後、マークが書かれた蝶が別の場所で再び目撃されたら、蝶がどれだけ移動したかがわかりますよね。
今回の『蝶のオアシス in おおさか』は、アサギマダラをはじめとする蝶たちを観察したり、マーキングをしたりする機会なのです。

今回の午前の実習では、翌日の『蝶のオアシス in おおさか』の準備として、以下の活動を行いました。
・バタフライガーデンにどれぐらいのアサギマダラがやって来ているのかを下見。
・アサギマダラに実際にマーキングをしてみる。
・バタフライガーデンの植物に水やり。
・バタフライガーデンの除草(草むしり)

アサギマダラは主に、我々人間にとっても心地よい気温(22~24℃ぐらい)のもとで活動します。
そのため、まだ気温が高くない朝のうちにさっそくバタフライガーデンに向かいました。
バタフライガーデンにはアサギマダラの好む「フジバカマ」という花がたくさん植えてありました。

蝶はあちこちを飛び回っています・・・が、肝心のアサギマダラは見当たりません。
通りかかった写真家の方も「全然いないねぇ」と仰るではありませんか(焦)

仕方なく、先に植物の水やりを始めていると・・・?
現れました!アサギマダラです。
担当学芸員の先生が瞬く間に網で捕獲し、さっそくマーキングと記録の作業に入ります。
(このとき、作業は必ず日陰で行います。アサギマダラは22℃ぐらいの涼しいところを好み、日なたに放置しておくと死んでしまうこともあるのです。)

マーキングに使うのはごく普通~の油性ペン。蝶には申し訳ないですが、日付や場所を翅に書かせていただきました(アサギマダラの翅は丈夫なので、このぐらいであれば平気だそうです)。 ちなみにこの蝶の性別はオスでした。
同時に、記録帳には時刻や天候、気温、蝶の大きさや状態などのデータも記入しました。
(この日の午前中に見つかったアサギマダラはこの1匹だけでした。)

さて、マーキング調査の後は植物の水やりと草むしりの続きです。
特に後者は泥臭く地味~な作業ではありますが、いやいや、これがとても大切な仕事。

というのも、バタフライガーデンは、殺虫剤や除草剤などの農薬を使わないことで、様々な草木・虫などの生物を残すことで、多様性を維持しようという方針があるのです。
これによって、例えば“害虫を食べてくれる虫たち(クモなど)”も生き残るので、結果的に農薬を使わずとも本来育てている植物を維持でき、ガーデンのバランスを保てるのです。

ただし、農薬を使わないおかげで雑草はボーボー…(^_^;)。
やはり来園者あっての「植物園」ですから、見栄えも大事ですし、雑草まみれではどれがどの植物かもわからなくなってしまいますので、草むしりはとても大切なのです!

それに、職員自らの手で作業することで、ガーデンの状態やそこでの生態系の移り変わりといった変化を知ることができるでしょうから、単なる「メンテナンス」以上の意義があると思いました。

〈午後の活動について〉
午後の一発目は『蝶のオアシス in おおさか』で配布する資料の印刷を行いました。
コピー機で印刷するだけの単純な作業でしたが、こうした地道な準備があってこそイベントは成り立っているのだと感じることができました。
また、印刷時には「プリントの端をホチキスやバインダーで綴じる人もいるかもしれない」と、余白の調整なども行いました。こうした細かな気配りが、イベント参加者の満足を少しでも高めることに繋がるのですね。

続いて、虫の標本が保管されている収蔵庫の見学です。一口に“虫の標本”といっても、乾燥標本は特別収蔵庫,化石は一般収蔵庫,幼虫やクモなどの柔らかい虫(加えて、弥生時代などの遺跡から出土した「昆虫遺体」)は液浸収蔵庫...という具合にそれぞれ分けて保管されています。

今回見学したのは「特別収蔵庫」です。ここでも学芸員の先生が丁寧な解説をしてくださりました。特別収蔵庫は初日にも見学しましたが、昆虫標本や植物標本など、害虫の被害を受けやすい資料が保管されています。したがって庫内は低めの温度・湿度に設定され、防虫剤であるナフタレンのニオイが漂っていました。

多くの資料が寄贈によって集められたものだということは実習生のみなさんならご存知でしょうが、なかでも大規模な個人収集物は「コレクション」として収蔵されています(例.“OKAMURA Collection”,“SUMIYOSHI Collection”など)。これらのコレクションの標本は本来ならば分類別に並べたいところですが、収蔵資料は毎年膨大に増えるため整頓が追いつかない,時間や費用の不足,標本の入れ替えのためのスペース確保が難しい…など、さまざまな理由があり、寄贈当初の「コレクション」としての状態のまま保管されるケースが多いようです。それだけ資料が充実しているという意味でもありますが、博物館業務の厳しい実情が伺えます。

ところで自然史博物館には懐かしの「宝塚ファミリーランド」や「宝塚昆虫館」から引き取った資料もたくさん収蔵されています。その中にはもしかすると、あの手塚治虫先生が作成した昆虫標本もあるかもしれないとのこと。現状では手塚先生のお友達の手による標本しか見つかっていないようですが、今後発見されたら…と思うと夢がありますね♪

〈最後に〉
本日の実習は、昆虫についてまったく詳しくない私でもしっかりと理解できる活動内容でした。
先生のご配慮と分かりやすいご指導があったからこそだと感じております。ありがとうございました。
残り2日間の実習もしっかりと頑張ります。
S.M

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