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2022年度 夏期博物館実習3日目 (8月26日(金))

 博物館実習3日目、2班の日誌を担当します、岐阜大学のY.R.です。

 5つの班に分かれて行なわれている博物館実習ですが、本日、私たち2班は魚類の液浸標本について、その作り方に始まり、保存と管理の仕方、配架、メンテナンスの方法までを実践を交えながら習いました。

 魚類はヒレの筋(軟条など)の数やウロコの枚数などが種類を特定するキーになります。また、頭の骨の中にある耳石というものをその魚の年齢を推定するのに使ったりもします。後々の研究に使えるようにそのようなキーとなる形質を保ちながら標本にする必要があります。昆虫のように乾燥させてしまうとヒレがカピカピにちぢれてしまいますし、かといってそのままでは腐ってしまいます。そこで魚類の標本によく用いられるのが、魚をホルマリンや70%のエタノールに浸けて保存する液浸という手法です。かつてはホルマリンがよく使われていたそうですが、ホルマリンが時間の経過と共に酸性に傾き、魚の骨や耳石をダメにしてしまうことが近年分かり、最近では70%エタノールを用いることが多いそうです。実際には、この70%エタノールに魚を浸ける前にも、エタノールに浸けると失われてしまう魚の色彩や模様を記録するための写真撮影、体長の計測、ヒレを整える展鰭など多くの過程が必要であることも学びました。
 このように多くの段階を経て作られた魚の液浸標本を地下の収蔵庫に配架していきます。収蔵庫には、おびただしい数の魚の液浸標本が分類群ごとに並べられています。新しい標本もそれぞれの分類群の標本が置かれている所へ収納していきます。この時、間違った場所に新しい標本をしまってしまうと、数多の標本に埋もれて二度とその標本を見つけられなくなってしまう危険性もあります。標本を収納するといっても簡単なことではなく、注意の必要な作業でした。標本が正しい位置にしまわれることで、博物館の展示で「○○県のこの魚の標本が欲しい!」となった時にも迅速に取り出すことができます。
 最後に、このように収納されていった液浸標本のメンテナンスを行いました。液浸標本のエタノールが揮発して減っていないかをチェックし、適宜エタノールを足していく作業です。標本は作って終わりではなく、定期的なメンテナンスが必要なのだと学びました。

 博物館に物が「資料」として収蔵されるまでに、魚の液浸標本1つをとっても、ここまで細かい多くの気配りと段階があるのだと分かりました。展示として多くの目に触れるのはそのほんの一部で、博物館が「資料の収集・整理・保管」、「資料に基づく調査・研究」、「展示を含む成果の公開」、「普及・教育」といった役割を日々果たしているのには、本当に多くの人の手と時間がかけられているのだと痛感しました。

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