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2023年01月20日

2022年度冬季博物館実習

2022年度冬季博物館実習が始まりました。
新年があけての初めての担当は私、追手門学院大学のI.Fです。
今回は初日ということで午前にはオリエンテーションが、午後からは8日と9日に開催される「博物館たんけん隊」の研修が行われました。
オリエンテーションでは、友の会に入会することと大阪市立自然史博物館についての説明がありました。大阪市立自然史博物館についての説明では歴史や沿革などを教えていただきましたが、博物館の厳しい現状が特に記憶に残るものでした。また、展示棟を学芸員目線での説明と共に案内をしていただきました。
午後の研修では、当日の流れの説明があり、実際にコースの案内もしていただきました。
いままでは客として博物館を楽しんできましたが、これからは少しだけども管理者側の目線で鑑賞を楽しめるようになったように感じる一日でありました。

2023年01月19日

2022年度冬期博物館実習5日目(1月12日)

こんにちは、近畿大学のS.Yです。
 実習5日目は、学芸員の藤江さんご指導のもと、昆虫標本の保存方法について学びました。
初めに、昆虫研究室にて種分けされた昆虫標本に対し、データラベルを付けていきました。カツオブシムシによる標本の被害や標本の入手方法などのお話をお教えいただき、収集や保存に対する博物館の役割を実感することができました。また、標本を作るのは初めての経験だったため、ラベルの付け方や、つける位置の高さなど新たな知識として身に着けながら標本の作製を行うことができました。
 午後はクワガタムシの分類を行いました。顎の形や脚の長さ、色など、知らなければ見逃してしまうような特徴を確認しながらの作業であり、一つの種でもこれだけの要素に分けられるのかと驚きました。クワガタムシという比較的分かりやすい種でも大変で、これ以上に分類が大変な種が多くいることを考えると難しい作業だということを実感しました。また、ホロタイプ標本やパラタイプ標本といったタイプ標本についても教えていただき、その際にラベルの色も分けて保存することや、基準としての重要性についても知ることができました。ホロタイプの主な消失の原因が戦争であることや貸し出しを行うための厳しい判断などとても興味深く感じました。
 この実習を通して、資料の管理や収集、展示など博物館のもつ様々な役割に触れることができました。これからは資料の保存や記録としての側面からも展示物に関わり、理解を深めていきたいと思います。

2023年01月18日

2022年度冬期博物館実習2日目(1月8日)

 こんにちは、京都橘大学のN.Kです。

 実習2日目は、博物館の行事のひとつ「はくぶつかん・たんけん隊」の補助スタッフとして博物館に関わらせていただきました。このイベントは、小・中学生が対象で、学芸員と一緒に普段は入ることができない博物館の裏側を見学するというものです。

 私はまず受付補助を担当しました。受付では、お名前とアレルギーの有無を聞き名簿にチェック、お子さまと保護者の方に資料をお渡ししました。その際に、博物館友の会に入会されていないご家族には友の会についての説明もしました。ここでアレルギーの有無を確認するのは、見学中に動物標本や毛皮がある部屋も案内するからです。
 メインの受付は、ボランティアで参加されている友の会の方が担当され、出席チェックは必ずお子さまに名前を言ってもらうようにされていました。保護者の方も「(講堂内に子どもと)一緒について行ってもいいんですか?」と尋ねられ、このイベントや博物館には子どもの知的好奇心や探求心を発展させるだけでなく、自立心や主体性を育む役割があり、それが目的で参加される場合もあるのだと感じました。

 「たんけん」は午前と午後の部があり、私は中学年と高学年・中学生のグループに付き添いました。引率はどちらの部も昆虫研究室の学芸員の方でした。私たち実習生の役割は、引率学芸員のサポートと参加している子どもたちの安全管理です。カメラでの撮影時には落とす可能性があるため資料の真上から撮らないように、資料が見えていない子がいたら他の子と入れ替わって全員が見られるように声掛けをしたり、生物を解剖している実習室や液浸収蔵庫は独特のにおいがあるため気分の悪くなっている子がいないか目を配らせていたりしました。
 「たんけん」中、中学年のグループは様々なことに興味を示し、自分が持っている知識をたくさん話していました。写真もメモもとり、このイベントで学びを増やそうと積極的でした。高学年・中学生のグループは落ち着きがあり学芸員さんの話を静かに聴き、収蔵庫や研究室を興味深そうに見学していました。

 私が驚いたのは、トリの解剖を苦手な様子なくまじまじと見たり、「バラ科の植物で知っているものは?」と聞かれたときに真っ先に「りんご!」と答えていたりしたことです。私が今回参加した子たちと同年齢のころは、苦手が多かったり学校で学ぶ以外の知識が豊富でなかったりしていました。そのため「たんけん」中は感心することばかりで、参加者の中から将来は研究者になるような子もいるのだろうなと考えていました。

 「はくぶつかん・たんけん隊」のスタッフとして行事に関わることは、博物館がもつ教育普及の面を直接感じることができた貴重な経験でした。

2022年度冬期博物館実習5日目(1月11日)

神戸大学のM.Kです。
実習4日目、私たちの班は学芸員の佐久間さんと一緒に被災した植物標本を現地に送り返すための作業をしました。具体的には、泥水に浸かってしまった標本を乾燥させたものを状態や番号などを確認して袋に入れて段ボールの箱に詰めるという作業をしました。
標本の状態はとても綺麗なものからカビの生えてしまっているもの、泥がたくさんついているものなど様々でした。私はカビが少し生えてしまった標本をとても汚れていると思っていたのですが、被災した標本にしては綺麗な方だというのを知り驚きました。
標本は乾燥した植物なので見ていてもあまり面白くなかったのですが、標本を挟んでいる新聞紙がとても古いものだったので、掲載されている記事や広告を見るのがとても楽しかったです。中には明治時代や大正時代の新聞もあったので、挟まれている植物の標本と同じくらいの価値が新聞にもあるのではないかと思いました。
地味な作業でしたが、被災した標本を返却する手伝いができたと思うと嬉しいです。

2023年01月15日

2022年度冬期博物館実習5日目(1月12日)

 こんにちは、実習生ブログ2022年度1月12日担当、三重大学のE.Kです。
 この日は実習最終日。私達1班は、担当学芸員I先生のもと、地層に関連する実習活動を行いました。

 私達の班はまず、はじめに一般収蔵庫の床掃除からです。地下の一般収蔵庫には、「害虫や気温・湿度変化に比較的強い」動物の骨格標本や書物に加えて、地層の剥がし標本、地下のボーリング調査サンプルが計5万点以上のもの凄い数がありました。中央から通路が両側へ均一に数本広がる中を、一列ずつ手分けして床をほうきでできる限りごみを集めました。
 ごみはすぐさま捨てません。列ごとで集めたらすぐさま害虫の遺骸の有無・数・状態をI先生と共に確認していきました。これにより、「害虫が大量発生していないかどうか」を見極めるためです。探すのは肉を食べるルリホシカムシ、カツオブシムシが主な害虫に挙げられます。
 過去にこの一般収蔵庫における動物骨格標本の領域で、昔の標本から大量発生したことが一度だけあったそうです。虫の拡大は抑えられたものの、博物館にとってはとてもゾッとする出来事です。発見が遅れるだけ、貴重な標本達が蝕まれていくのですから。
 実は、今回の掃除でこれらの遺骸が数匹見つかりました。ただし、遺骸は乾燥して崩れていること、一列に見つかっても0~3匹のみであったことなどから、これらは過去の事件の残骸で、現在の害虫の大量発生は無いと判断されました。ほんの小さな虫をよく見て推理する様が探偵と同じようでかっこいいと思いました。もはや掃いたごみの動きでその中に虫がいるかどうか分かるということには驚きです。

 また、土の標本は、剥ぎ取り標本と柱状標本(ボーリングサンプル)が収められており、剥ぎ取り標本は地層の様子を一度に一畳分程度の広さで観察することができるものです。欠点としては、いくら強力な接着剤を使っていても、土や砂は落ちていてきてしまうものです。そのために、収蔵庫の床には少々砂が広がっているのは仕方ないことです。そして、ボーリングサンプルは、1mごとに一本、一箱に三本3m分収められています。ただし、同じ個所で数百メートル分の深さでサンプルが回収されるため、これもまた膨大な数が年々集ってきます。例えば、小学校の地質調査では240m分、つまり80箱分のサンプル収納スペースが必要になります。しかも、1箱は二人がかりでやっと運べる重さです。これだけの労力をかけてまでも、遺すべきものが博物館の地下には尽きないほど収められているものです。

 次に、午後からは、地下の様子を赤裸々に取りまとめることができる「ボーリング柱状図」の入力システムの取り扱いについて学びました。しかし、その前に、地下のデータを取るためのボーリング調査への理解を深められる特別展「大阪アンダーグラウンド リターンズ」をチラ見させていただきました。実際のボーリング機器の迫力、SNSでバズッたという(広く注目された)地震解説装置、大阪の地下の成り立ち、発見された巨大な化石の数々、見えないけれど確かにある私たちの「土台」について面白く知ることができます。
 その後、「ボーリング柱状図」の入力システムを使ってみました。実際に地質調査会社が調べた参考資料をもとに、公で共有できるようなxml形式というデータに落とし込むことも学芸員の役割です。データ化し、半永久的に保管することで、いつの日か陽の目を見るときに、人類に役立てるための備えとなります。
 最後に、入力システムを用いた「ボーリング柱状図」には、一枚に膨大な情報量をまとめることができ
ます。各深さの土の種類・色・質感・相対密度・相対稠度(ペースト状のものの流動性)・土の貫入に対する硬さ(おもりを何回落とすことである深さまで凹むかを調べる)などなど、入力するだけでもかなり手間がかかるものでした。

 この五日間の博物館実習で、博物の知識欲が復活したように感じます。普段は見られない裏側を直接真剣に教えていただき、大阪市立自然史博物館学芸員の方々へ感謝いたします。ありがとうございました。

2022年度冬期博物館実習5日目(1月12日)

神戸大学のK.M.です。
実習5日目は植物研究室の長谷川学芸員のご指導の下、植物標本の登録作業を行いました。
標本にする植物は台紙に貼り付けて乾燥させた後、更に冷凍させるという処理が施されています。これによって虫害を防ぐと共に、植物を押し花のように平面にして保管しやすくしています。乾燥した標本はパラパラと崩れやすく、取り扱いには細心の注意を払う必要があります。普段はカビや虫害を防ぐため、温度や湿度が一定に管理された特別収蔵庫で保管されています。
標本には採取した日付や場所、採取者などの情報が記されたラベルが貼り付けられており、今日の作業内容はこの情報をExcelシートに記入していくというものでした。このように資料の情報をまとめて公開することで、直接博物館を訪れなくても、収蔵されている資料の情報にアクセス出来るようになります。植物の中には戦前に採取された物やアメリカで採取された物も多く含まれており、植物を資料として保存する活動が古くから世界各地で行われているのだということを実感しました。今日は4人で作業し、合計500点近くの標本の情報を入力することが出来ました。しかし、未登録の標本は数多くあり、収蔵庫に山積みになっています。
植物標本は年間数多く寄贈されており、1つ1つの資料に目を通す機会はほとんど無いそうです。今回の登録作業は資料を直接確認する数少ない機会であり、このような貴重な体験をさせて頂いたことを嬉しく思います。

2023年01月14日

2022年度冬期博物館実習4日目

博物館実習4日目を担当する神戸大学のM.Nです。
この日私は学芸員 松本さんご指導のもと、昆虫標本、そしてその保存について学びました。
午前中は特別収蔵庫にて様々な昆虫の標本を拝見しました。普段展示で見ている昆虫標本がほんの一部であり、博物館は今後の研究のために、様々な地域でとられた様々な種類の標本をコンスタントによい状態で保存し続ける機関であるということをいまさらながら強く感じました。昆虫標本を作っていく過程や、昆虫採集の詳細をいろいろ質問でき興味深かったです。また、ウスバカゲロウの標本の作成もさせていただきました。虫の遺体が標本になっていく過程を担えてうれしく感じました。
午後は午前中に作成した標本を分類していきました。前翅のこの部分の線が何本あるから…足の毛がここまで伸びているから…など、分類に必要な箇所をくまなく見なければならず、こんなに虫を細かく見るのは初めてだったので少し嫌悪感がありましたが乗り越えました。このように分類方法が整備されている種ならばまだやりやすいですが、そのような種ばかりではないと思うので大変な作業だし、博物館外の方々からいただいた昆虫標本が入った箱がたくさん山積みになっているのも、それほどの作業量だからなのだと実感しました。
今後博物館で昆虫標本を見るとき、それぞれどういう風に作られたのか想像できるようになったので見方が以前とは変わりそうです。

2022年度冬期博物館実習4日目

博物館実習、四日目の日誌を担当します、近畿大学のS.Yです。この日は、前川先生指導の元、収蔵庫内の鉱物の記録作業を行いました。
 初めに、収蔵庫内を案内してもらい、収蔵庫に関する説明を受けました。限られたスペースでどのように大量の標本を収蔵しているか、資料や標本の入手方法等のリアルなお話や、収蔵庫のスペース、整理をする人手が足りていない等の現在の博物館が抱える問題も教えていただきました。
 その後、収蔵庫内の鉱物の記録作業を体験させて頂きました。鉱物の記録作業の流れとしては、鉱物を一つずつ写真に撮り、パソコンに鉱物の種類、鉱物名、採掘場所を記録すると言ったものでした。鉱物を手に取る際には、ゴム手袋をする必要がありました。これは、皮脂による鉱物の酸化を防ぐためです。また、常温に置いているだけでも、錆などが付いてしまうそうです。鉱物は植物や動物の標本よりも劣化しにくいイメージがありましたが、そのような所でも、劣化の要因は有るのだなと思いました。
 今回、記録した鉱物は全て海外のもので、普段は目にすることのない鉱物を見ることができ、記録作業も楽しくできました。博物館は、国内の鉱物や地層などを研究しているイメージがあったので、海外の鉱物がこれほど多く集まっていることにも驚きました。
 この実習を通して、学芸員の仕事の一つである、資料の保管作業の一部を体験することができました。保管というのは、ただしまっておくのではなく、資料情報を記録として残し、資料が劣化、紛失しないように管理することで、学芸員は、そのために様々な点に注意を払って仕事をしているのだと知ることができました。

2023年01月12日

2022年度冬季博物館実習5日目(1月12日)

 滋賀県立大学のMHです。
 博物館実習5日目は、午前に寄贈された文献資料のデータ入力、午後からは植物化石のプレパラート標本の番号付けを行いました。指導は地史研究室の西野学芸員にしていただきました。
 寄贈された文献資料の中にはインターネット上で入手できなくなっている古い論文やジャーナルが含まれ、本日扱ったものもその一つでした。これをスキャナーを用いてpdfのデジタルデータに変換し、エクセルで文献資料の情報リストを作りました。博物館では収蔵物のデジタル化が進められていると大学の講義内で扱われており、それはあまり進んでいないと聞いていました。実際作業を進める中で、資料なので丁寧に扱う必要があり、時間がかかるものなのだと実感しました。ただ、科学はデータ収集と検証の積み重ねで成り立っているものであり、紙媒体だけでなく、デジタル情報等の別形式でも保存し、必要な人に情報を提供することが大切と思い、少しずつでも進めていくことが大切なのだと思いました。
 寄贈された植物化石プレパラート標本を扱い、これらの整理作業を行いました。西野さんからこれらの標本は植物学者で、大阪自然科学研究会会長を勤められていた三木茂博士が作られたものだと聞きました。この方はメタセコイアの発見者であり、標本は文化財に指定されているそうです。こう聞くと、「メタセコイアのタイプ標本はここのプレパラート標本なのかな。」と思いました。しかし、三木先生が未知の植物化石をメタセコイアと命名した後に、中国で生育している植物体が見つかり、そちらで採取されたものがタイプ標本になっているそうです。このような新種として化石が先に認識され命名された後、現生の植物体が見つかるというのは順序が逆のように感じ、面白いな思いました。
 植物化石の話で、上記のようなプレパラート標本だけでなく、液浸標本にもすると話されていました。液浸標本では植物体から成分が溶け出すことがあり、アルコールに混ざることで梅酒のような独特なにおいになるのだと知りました。また、収蔵庫に液浸標本の瓶として梅酒付け用の大瓶が置かれていたのも見られ、展示物を鑑賞しているだけでは分からない、収蔵庫内でしか見聞きできないものがあり、非常に面白かったです。ただ、収蔵庫のなかにはまだまだ見れていないところもあり、5日間の実習では少し物足らず、あっという間に過ぎてしまいました。そのため、今後も博物館のイベント等に参加し、学びを深めていきたいと思います。

2022年度冬季博物館実習4日目(1月11日)

こんにちは。近畿大学のF.Sです。
 博物館実習の4日目である1月11日は、動物研究室の松井学芸員の指導の下、魚の液浸標本作製のお手伝いをさせていただきました。
 液浸標本は処理を行った標本をアルコールの水溶液に浸すことで標本となった生き物の形を残すことができるものです。しかし、多くの生き物では保存期間の中で色素が抜けていってしまうこと、組織の固定は難しいことというデメリットも持ちます。
今回は液浸標本の作製手順の中でも最後の部分になる瓶詰め作業、配架作業を行いました。固定された標本にタグをつけ、種や採集地点ごとに分けます。これを70%エタノールを肩のあたりまで入れた瓶に頭を下にして浸します。このようにするのは、管理の際にエタノールの量を確認しやすくし、揮発によって量が減っていたとしても種ごとの特徴が出やすい頭を守るためです。蓋に必要な情報を記載した後、これらを収蔵庫に配架しました。また、配架後には残った時間でメンテナンスとして、保管されている瓶へのエタノールの補充を行いました。
4日目の実習を通して、実際の標本作り、保存に対する学びを得ただけでなく、費用、限られたスペースでの受け入れ、管理に対する人手の少なさ、等々の標本を守り続けていくことの大変さを感じることができました。

2022年度冬期博物館実習5日目

北海道大学のNKです。
博物館実習の5日目には昆虫研究室の長田学芸員に昆虫研究室と昆虫標本についての紹介をして頂きました。
実際に標本を見せて頂きながら、新種記載や分類の変更の情報を収集し、最新の分類に合うように標本の整理を行っていることをお聞きしました。また、長田さんの専門である鱗翅目については更に詳しい解説をして頂きました。
大阪自然史博物館にはオガサワラセセリなどの日本国内でも絶滅の危機にある種の貴重な標本もいくつか収蔵しており、それを保存していくことは重要な仕事の1つであるとのことでした。
また、展示でよく使用している世界の変わった鱗翅目についての解説もして頂いた。大きかったり、模様に特徴があったりと人々を惹きつける種が昆虫には多くおり、そのような種を紹介することで人々に昆虫に興味を持ってもらうことが大事だと教えて頂きました。
最後に、長田さんの研究についてのお話をお聞きしました。シイタケを食害するガの仲間が専門であり、その分類学的研究をしてらっしゃるとのお話でした。日本国内にその分類群の研究者は非常に少なく、農業被害を抑えるためにもその研究は重要だとのことでした。博物館の仕事の傍ら、農業試験場などと連携して研究を進めているとおっしゃっていました。
展示、標本管理、研究と学芸員の仕事の幅広い側面を見せて頂き、大変実りのある実習をさせて頂きました。

2023年01月11日

2022年度冬季博物館実習4日目(1月11日)

こんにちは。近畿大学のM.Aです。
実習4日目は、骨格標本作成の過程の一つである骨の洗浄を行いました。

骨格標本を作るには、まず動物の死体から皮、内臓を取り除き、虫や微生物の働きによって肉を腐敗させ、骨だけの状態にします。肉を腐敗させる方法はいくつかありますが、今回は砂場の上に置く方法でした。ある程度の時間が経った後、歯ブラシやメスなどを使い、骨を傷つけないよう残った肉や筋、砂、虫の死骸を取り除きながら洗います。また、骨は部位ごとに分けられて袋に入れられており、これは左右の手足など見分けが付きにくい骨同士が混ざらないようにするためです。そのため、洗浄を行っている最中でも、他の部位と混同しないよう、気をつけながら洗浄しました。
私が洗浄を行った部位は、キリンの後ろ足、イルカの肋骨でした。キリンの後ろ足には種子骨と呼ばれる小さな骨が沢山あり無くさないようにすること、イルカの肋骨には細長い骨が多いため力加減に気をつけることを意識して行いました。
また、骨格標本をする大変さは動物によって異なり、特に、背骨や肋骨の骨の数が多いヘビやイルカ、骨のサイズが大きいクジラやゾウが難しいと知りました。今後、博物館で骨格標本が展示されている時は、そういったところに注目してみたいと思います。学芸員の仕事の一部を知ることができただけでなく、動物の骨格についても知識を深められ、とても学びの多い実習でした。

2023年01月10日

2022年度冬季博物館実習3日目(1月9日)

こんにちは。三重大学のH.Yです。
実習3日目の昨日は第四紀研究室の中条学芸員の指導の下、砂の標本整理を行いました。
取り扱った標本は主に海浜砂でしたが、その他にも2021年の小笠原諸島の海底火山の噴火で出た漂着軽石や湖浜砂などもありました。
標本整理は標本を保存しているビンと、一緒に保管されている標本カードと、標本を一覧で管理しているリストが一致するように資料番号を記入していく作業でした。ビンと標本カードとリストには既に採取地、日付、採取者等が記載されていたため、異なる標本として資料番号を記入してしまわないようにひとつずつ確認しながら作業を行いました。中条学芸員にレクチャーや標本の説明などをしていただく時間もありましたが、実習生4人で午前・午後と作業して記入を終えた資料は約160個と、非常に時間のかかる作業でした。地道で根気のいる作業でしたが作業しながら標本を見比べたりするのは楽しく、終えたときの達成感もありました。標本の管理は博物館における重要な作業の一つであるので、実習でその作業の緊張感や楽しさを体験できて良かったです。
標本整理を行っていて、同じ県でも採取した海岸によって砂の色や粒の大きさなどが異なることが非常に面白く感じました。これらは地質の違いなどによるもので関東の砂は黒っぽく、関西の砂は白っぽいそうです。学芸員の作業を体験できただけでなく砂への関心も深まり、非常に学びの多い実習でした。

2022年度冬季博物館実習3日目(1月9日)

高知大学のS.Fです。2023年冬期博物館実習3日目、1月9日の記録をします。

実習内容は博物館行事「はくぶつかん・たんけん隊」の補助です。普段は公開されていない博物館の裏側部分である研究室や収蔵庫を、学芸員による解説ツアーのもと小学生参加者が「たんけん」する、というプログラムの簡単なサポートを行いました。イベントは、午前と午後で参加者を変えての2セット構成であり、1つの行事の集合(開始)から解散(終了)までの流れを、1日で2回体験するものでした。

 午前には小学校高学年を対象とした、博物館館内解説ツアーの補助を行いました。学芸員を先頭に、小学校5,6年生が博物館の一般未公開エリアを見て回るのに同行し、ツアーを滞りなく進めるための順路の確保や簡単な声かけ等が、実習生の役割です。
 ツアーは、教員が一方的に話しをして生徒がそれを黙って聞く、といった授業のような形式とは異なり、解説を行う学芸員と参加者の間では頻繁にやり取りがあります。参加者である子どもの年齢が低いほど、学芸員と子どもたちとのコミュニケーションが盛んにおこなわれる印象を受けました。学芸員からの声掛けや問いかけには、はじめて見聞きするものがたくさんある、刺激の多い条件下での子どもたちの視野をぎゅっとしぼる効果があります。その点「なにを見せるか」という意味で学芸員の質問や問いかけの内容には注意が払われる必要がることがわかりました。

 午後には、同様の補助を午前と異なる学芸員の小学校低学年向けのツアーにて行いました。午前に見た高学年と比較すると、低学年でのツアーでは学芸員と参加者間のやり取りにおいて、子どもたちが何かアクションを起こし、それに学芸員が応えるという形式の繰り返しで話しがすすめられることが多い様子でした。大人が大人に説明や解説をするときには、聞き手に対して話し手が話題の方向性を決め、解説を行う人間が主体となり話しを進めますが、今回のツアーの様に解説の聞き手が小さな子どもの場合には、子どもたちのアクションや学芸員への投げかけが、話題の出発点になり、解説の構成を決定していました。話題の舵取りを学芸員ではなく、本来は聞き手である子どもたちが行っている点が、午前のやり取りの形式とは異なりおもしろかったです。
 本来の話し手が聞き手になっているこのような場合、解説者は話したいこと話さなければならないことに固執し、聞き手をコントロールしようとすることにエネルギーを注ぐのではなく、本来の聞き手である子どもたちによって話題の発起点として選択され得る子どもの目に映るものに、気を配る意識を持つことが重要に思いました。

 午前と午後とで別の学芸員の博物館ガイドを聞くことができるという実習プログラムは、学芸員の専門分野によって同じツアーでも切り口が違うため、博物館とはどういった場所なのかを考えてみるうえで、勉強になりました。実習内容は引率学芸員のサポートと参加者の安全管理と伝えられていましたが、行事の補助という立ち位置をさせてもらうことで、主催者である学芸員の視点と、参加者である博物館に来る人の視点、双方から今回の行事のような博物館による普及教育事業について、学び考える機会を与えていただいたように思っています。

2023年01月09日

2022年度冬季博物館実習3日目(1月9日)

 こんにちは。奈良女子大学のA.Yです。
実習3日目の今日は、骨格標本を作製する過程の1つである骨の水洗いを行いました。
 
 まず骨格標本を作製するための対象に関してですが、近隣の動物園で何らかの理由で亡くなった個体や、交通事故で亡くなった個体を引き取ることで入手するそうです。こうして個体を入手した次は、骨格標本を作製するうえで邪魔になってしまう部位を除去しなければなりません。これにはいくつかの方法がありますが、
1. 水につけて腐らせておく
2. 砂場などに埋めて微生物や虫に食べてもらう
といった2種類の方法がよく使われるそうです。ただ2に関して、埋める砂場として海辺の砂浜を選ぶ場合、分解が比較的早く進むため埋める期間の長さに注意が必要なようです。今回実習で用いた骨は2の方法が行われていました。
 説明の後、いよいよ自分たちの手で骨洗いの作業に移りました。骨洗いの流れとしては砂場に埋められていた状態の骨をネットから取り出し、歯ブラシやスケーラーを用いて虫の死骸・筋や余分な脂肪分を洗い流すといった流れです。ただ、骨を磨いても展示で見るような白い色にはならず、茶色系統の色味でした。これは漂白作業の有無による違いだそうです。展示用の骨は見え方にも配慮し、漂白の作業まで行っているとは初耳でした。
 私が担当した部位はキリンの脚、頚椎、オットセイだったのですが、特にオットセイの骨洗いに移った際、少し鼻につく匂いを感じました。脂肪分、魚食、何が匂いの原因なのか分かりませんでしたが、海の生き物は特に匂いがきついとW学芸員もおっしゃっており、どれだけ骨を洗っても匂いが取れなかったことも併せて考えると、骨自体が匂いを発しているというよりも、骨に染み込んだ何らかの成分が匂いの発生源になっているのだろうなと思いました。
 骨洗いを進める中で、骨の両端は細かな凹凸が多く、洗浄するのに苦戦しました。これに加え、オットセイのように比較的体サイズは大きな生き物でも、ゴマ粒のような極めて小さい骨もあり、慎重さが必要とされる作業でもありました。作業を始める前に『骨をなくさない、壊さない、混ぜない』の3点に注意しながら作業を進めるようにと指示があったため注意はしていましたが、自分の小指の先にも満たないサイズの骨があるとは意外でした。実習終了後に見せていただいた耳小骨が最も小さくて繊細な構造となっており、そもそも見つけ出すこと自体が難しそうでした。

 途中の説明で興味を持ったお話が2つありました。
1つ目は、骨の成長の仕方のお話です。産まれた時点では体の各部位を構成するすべての骨は大人の骨を縮小したようなものであり、成長するにつれて各骨自体が大きくなるものなのかなと思っていたのですが、サイズが変化するのは主に軟骨部分だそうです。もちろん成長に合わせて筋肉量も変化するため、これも見た目のサイズ変化の要因ともなりそうですが、軟骨部分のサイズ変化が体サイズに影響を及ぼすほどのものとは思いもしませんでした。
2つめに、産まれた時点での頭蓋骨の形状についてです。ヒトの赤ちゃんの頭蓋骨について大学で学習した際、頭蓋骨に隙間があるために頭部サイズを変化させることができ、産道を通りやすくすることができると学習した覚えがありました。そして実習で用いたキリンのこどもの頭の骨も完全には引っ付いておらず、胎生の動物は頭蓋骨が完全には引っ付いていない、ゆとりのある状態で産まれてくるのかなと考えていました。ところがW学芸員に伺ってみると、鳥類の雛もキリンと同じく、孵化した直後は頭蓋骨が完成していないというのです。実際に頭蓋骨を見なければこのような疑問点も生じなかったと思うので、実際に自分の手で実物に触れて学ぶ機会というのは学びを深めていくうえで重要だなと感じました。
 実習の終わりには洗った骨を並べ、骨格の全体像を班員で予測しました。同じ頚椎に位置する骨であっても、どの場所に位置するかによって微妙に形状が変化しており、パズル感覚で楽しむことができました。

 大学や博物館といった研究機関で生物の研究を行うにあたり、例えば生物の解剖を行うといった、実際に生身の生物を扱うという機会は少なからずあります。もちろん無闇に生物の命を奪うことは許されませんが、交通事故等で亡くなった生物の体を用い、研究に用いるというのは資源を最大限に活かすことのできる方法だと思います。図鑑などの紙面上ではなく、実物に触れるからこそ生じる新たな発見や疑問点はあるため、実際に自分自身の手で触れてみる機会を設けることの重要性を今回の実習で強く感じました。

2022年度冬期博物館実習2日目(2023年1月8日)

神戸大学のM.Oです。
実習2日目の昨日、和田学芸員の指導の下、標本作成の手伝いとしてゴマフアザラシの骨の洗浄を行いました。

 骨格標本を作るには、まず死体を骨、内臓、皮に分けるのですが、今回は分けられた後の骨を標本にするために周りについた汚れやいらない部分を洗浄するという作業を行いました。分けられた骨は、微生物や虫の力を借りておおよそ骨だけの状態にするのですが、その過程を踏んだ後でもまだ肉や筋が残っていたり、あるいは骨に土やその他の汚れがついてしまうため、歯ブラシや歯医者で使う金属の器具、メス、ピンセット、解剖バサミなどを使いながら作業を進めていきました。この作業を行う上で大事なことは、骨を混ぜてしまわないということです。最終的にきれいに洗いあがった骨は骨格標本として使われるわけですが、その際どの部分の骨かすぐにわかるように、あらかじめ骨を分けて混ざらないように注意しながら洗浄する必要があります。私は後ろ足の片方の部分を担当しました。ほんの一部分ではあるのですが、午前中2時間半、午後1時間半の合計4時間ほど作業を行い、学芸員の仕事の量の多さを痛感しました。またその間、「博物館たんけん隊」のイベント中だったため、小学生が実習室の見学に来ることがあり、私たちも子どもたちへの説明を聞くことで、各標本についての知識を深めることができました。
 今回は、学芸員実習として博物館の裏側や、学芸員の仕事を垣間見ることができましたが、博物館が教育施設である以上、もっと博物館の内部を見学、学芸員の仕事の手伝いをできる機会があり、参加しやすい環境が整えば能動的な学習の一助になると思います。新たな学びのスタイルが求められている時代だからこそ、博物館のような楽しく知識を深められる場をより多くの人に楽しんでもらえる場として普及できれば良いと思います。

2022年度冬期博物館実習3日目(2023年1月9日)

こんにちは。京都橘大学のR.Iです。
実習3日目の今日は、「はくぶつかん・たんけん隊」の補助スタッフとして、たんけん隊と共に、ツアーへ行きました。
午前は、保護者の方向けの、ツアーに同行しました。どの方も、興味津々で収蔵庫の見学をしており、積極的に質問もされている姿が印象的でした。私が見た印象から、液浸収蔵庫が一番、反応が良かったのではと思います。液浸収蔵庫には、ビンに入った爬虫類などの標本が多くあり、一般、特別、液浸の中で、一番インパクトのある所だと思います。皆さん、家に帰ってから別でツアーに行っていた子供たちと、どこが楽しかったかなど、思い出話がたくさんできるのではと思います。
午後からは、主に小学校高学年のグループに同行しました。約2時間という長めのツアーになりますが、どの子も、疲れた様子を見せず、キラキラとした目で見学をしていました。特に印象的だったことが、そろそろ疲れてくる頃だろうと、学芸員の方が、まだ半分ツアーは残っているよと声をかけた際、「え!!まだ見れるの!!」と嬉しそうな反応が返ってきたことでした。また、実習室では動物の毛皮を見せてもらいましたが、子供たちは物怖じせず、触っていいよと言われたものは積極的に触れていき、毛皮の質感を楽しんでいました。毛皮などびっくりしてしまう子もいるのではと思っていましたが、そうではなく、様々なことを吸収しようと、必死な姿を見ることができ、私自身の刺激になりました。
1日を通して、博物館のイベントは堅苦しいイメージがガラリと変わり、子供たちが楽しく、見て触るものだと感じられました。子供たちの探求心は、まだまだ尽きることなく、また博物館に足を運んでもらえるのではと考えられました。

2023年01月08日

2022年度冬期博物館実習2日目(2023年1月8日)

こんにちは。京都先端科学大学のR.Mです。

実習2日目の今日は動物研究室の石田学芸員の下、一般収蔵庫で貝類の標本整理を行いました。今回整理した標本は、吉良哲明・竜夫コレクションで2015年に寄贈されたものです。
標本整理ではコレクションラベルがつけられていない標本を元ラベルとコレクションラベルと一緒に標本箱に入れ替える作業を行いました。元ラベルとは原産地、種名、いつ誰が収集したかなどが記載されているラベルで、コレクションラベルとは誰から寄贈されたものか記載されているラベルのことです。取り扱った資料にはタイプ標本という、同定をするときに比較対象となるものも含まれているそうです。
取り扱った標本は手のひらサイズから、小指の爪よりも小さいサイズまで様々な大きさでした。比較的大きなものは扱いやすいですが、小さいものは、小さすぎるため指で掴もうとしても上手くいかず、ピンセットを使ってもどのくらいの力で挟むといいか力加減の調整に苦労しました。
貝類の整理をしていて感じたことは、原産国が違っても似た形質のものがたくさんあるということです。学芸員の仕事には同定されたものが間違っていないか確認する作業もあるそうです。他にもたくさんの業務がある中で、一つひとつ確認するのはとても根気のいる作業だなと感じました。