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芥川・淀川連続講座(第1回) 「芥川の生態系と外来種問題」

淀川と芥川の生態系と外来種の現状を知ってもらう講座を行いました。
総合司会 / 中島敏明(淀川管内河川レンジャー)
パネラー / 横山達也(大阪市水道記念館)
         田口圭介(芥川倶楽部)
         紀平肇(水生生物保全研究所)
         高田みちよ(芥川緑地資料館 あくあぴあ芥川)
         内藤馨(大阪府水生生物センター)
         上田豪(寝屋川水辺クラブ)
日時
2009年5月15日(金) 午後6時〜8時30分
場所
高槻市生涯学習センター 3階研修室
参加者
約50名
その他
主催 淀川管内河川レンジャー 中島敏明
共催 芥川倶楽部、あくあぴあ芥川
支援 国土交通省淀川河川事務所
協力 たかつき環境市民会議
後援 大阪府茨木土木事務所、高槻市
要約
パネラーからは芥川のアユ・外来種の現状、昔と今の芥川の比較などの話題が提供されました。寝屋川での川づくりの取り組みの紹介もありました。会場からはカワウの影響などについての質問がありました。
パネラー 参加者

★講演録 全文★

横山からの提言)
・昨年はアユが芥川大橋下流で産卵していた。
・芥川は奥の谷池を一つの水源としている。この池には平成7年ごろはイモリが多く生息していたが、バスが放流されたことにより、イモリがいなくなった。その後、池干しをしたのでバスはいなくなった。
・魚類の文献では、17科53種が芥川で記録されている。そのうち48種は標本もある。記録があるなかで絶滅したと思われるのは、スナヤツメ、カジカ、ヤリタナゴ、ツチフキ、アブラボテ、ウグイ、ホトケドジョウである。確認されている重要種はヌマムツは増加傾向で、そのほかムギツク、メダカ、ギギ、アカザ。スジシマドジョウ(中型種)は10年ぶりに昨年捕れた。ウナギ、アユも確認されている。
・外来種としてブラックバス、ブルーギル、カダヤシ、ニジマス、カムルチーが確認されている。国内外来種としてはヌマチチブが増えている。在来種の新顔としてはカネヒラ、モツツク(ムギツクとモツゴの雑種)、ブラウントラウト、淡水二枚貝ではイシガイが挙げられる。
・芥川の恒常的な流量の確保が必要
・水路の改修による自浄力の復活を(コンクリート護岸から土盛りなどの多自然型護岸へ)
・淀川との連続性の確保が必要(魚道の整備)
・外来種とカワウ対策
・芥川は淀川から遡上してきた魚の産卵場・成育場となってほしい
・アユは摂津峡まで上ってもらいたい。芥川を整備することで可能である。

田口からの提言)
・芥川で30年調査してきた印象として、上流にはムカシトンボが生息し、現在も生息はしているが、工事等で被害が出ている。1981年に原で見つかって以来、保護動物に指定されている。しかし、生息地の谷は埋まってしまい今はなくなっている。条例があっても保護されていないのが現状である。というのも、条例が生息地保護をうたっていないからで、市民が観察を続けて声を上げて守っていくことが必要である。
・アユに関しては、1983年7月に、石に食み跡を確認した。それから平成16年まで全く確認されていない。最近になってアユが遡上してきたことはわかったが、繁殖については恒常的かどうかわからない。
・タナゴや二枚貝が育つ芥川を作るにはどうすればいいか。
・ホタルは巻貝をどう育てるかが重要。ヒメボタルの場合、オカチョウジガイの生息を確保する。津之江は多数のヒメボタルが生息していたが、護岸工事やキャタピラ式草刈機などでほとんどいなくなった。エサとなるオカチョウジガイを室内で育てる技術はあるが、野外ではなかなか成功しない。生き物を人が育てるのは難しく、現在の環境を維持し、生息地を減らさないことが重要である。
・例えば、ヨコエビはきれいな水でしか生きられない生物だが、芥川の下流で見つかっている。これは外来種の汚れた水でも生きられる外来種である。プラナリアも同様で、知らないうちに知らない生物に置き換わっていっている。
・芥川の水質は悪くはない。1977年頃の生物リストと今は種数はそれほど変わっていない。しかし外来種は入っている。シジミも入れ替わっているが専門家が見ないとわからないので、いつの間にか変わっている。それを食べる生物にも影響があるはずで、どこまで影響があるかはわからない。外来種が増えると生物多様性が上がるという意見もあるが、例えばブラックバスが入ると魚相は単純になってしまう。
・結局、専門家を交えた長期の観察は大変重要である。

会場から質問
Q.カワウの食害は?特にJRの北側、津之江公園でひどいように思う。
A.(高田)鳥獣保護法で保護されているので、一般の人には駆除できない。昆陽池では偽卵に置き換える、琵琶湖では射殺などの駆除は行われており、有害鳥獣として位置づけられれば駆除は可能である。1970年代には絶滅危惧だったのが、今やっと増加している。初めて経験する事態で、駆除していいものかどうか、どう対策していいのかは誰にもわからない。

パネラーから芥川紹介
紀平)昭和37,8年ごろから芥川と関わっている。上の口の大阪層群のカキを調べることから始まり、田口氏が調査していた観察会に呼ばれたことがきっかけである。筒井義隆氏、梶山彦太郎氏、金子スエオ氏、阿部タダシゲ氏らと調査できたおかげで、アマチュアもいっしょになって調査することが出来た。その頃、初めてマツカサガイを見つけ、同時にアブラボテを見つけることができた。魚は大阪教育大学の長田芳和先生と調査しはじめた。以来40年間、魚と貝を見続けてきた。誰も貝の図鑑を作ってくれないから自分で作った。
 イタセンパラはイシガイに卵を産む。8月に産卵し、翌年5月に稚魚が貝から出てくる。タナゴには二枚貝が必要で、芥川では塚脇橋にカタハガイ、マツカサガイが多く、下流に行くとイシガイ、ドブガイが生息していた。
 光るホタルは3種いてゲンジボタルは女瀬川の合流部から塚脇橋に多く見られた。幼虫はカワニナに噛み付き、貝に麻酔をかけるのか、貝が動かなくなってから食べる。カワニナは流れの速いところに生息し、おいしいらしい。チリメンカワニナは流れのゆるいところにいてまずいらしく、ホタルはあまりたべようとしない。人の口にもチリメンカワニナはあまりおいしくない。ヘイケボタルは次郎四郎橋付近の水路に大量にいた。モノアラガイがいちばんよくたべるが、ヒメモノアラガイも食べる。最近では外来種のサカマキガイも食べるようになった。ヒメボタルは芥川では有名で、5月下旬ごろに出る。一番多かったのは阪急鉄橋から津之江公園の間の堤防だった。
 ホタルの話をするとどうしても貝を「エサ」として見られてしまうが、貝も生物なのでエサと考えてもらいたくない。地域個体群を守るために放流をせずに、現在生き残っているものを増やすことが重要である。

高田)
ミズヒマワリについて説明。2000年ごろから芥川で見るようになった。はじめの報告はアサギマダラの調査グルーによるものである。2004年までにはかなり見られるようになった。2004年の台風で激減したので、日本の風土には合わない植物だったのかと思ったが、2005年に切れた欠片から急激に増加し、分布を広げた。大阪内ではまだ芥川とそれに続く淀川にしか生育していないことから、2005年に外来生物法が施工されたことを機に駆除を始めた。2006年は気候のいい5月に駆除し、夏の間放っておいたら、秋には元通りぐらいに生育してしまい、駆除の効果がなかった。また、駆除して積み上げたところから、陸上部に生育するようになったため、2008年からは冬に駆除をすることにし、2008年夏には少人数のボランティアで毎月点検的に駆除していたので、今は上流2kmぐらいは駆除できている。
 数多い外来種の中で、なぜミズヒマワリを目の敵にして駆除するかというと、まだ大阪府下では芥川・淀川以外に出ていないからである。また、水の上を覆ってしまうので水生植物に光があたらず、枯れた植物や泥がたまり、ミズヒマワリの下側が腐っていくため、水中の植物にも動物にも影響が出ているように思われる。花が多種のチョウを集めるので、他の植物の花粉散布者を横取りして他の植物にも影響を与えると考えられる。明日も駆除を行うので、ぜひ参加してもらいたい。

内藤)
 淀川の外来生物について解説。2004年の三川合流から淀川大堰の間には、バス、ギルがワンドで40%、本流で30%もいた。1994年には1%以下であった。この影響で在来種が減っている。イタセンパラはここ3年連続で稚魚が確認されていない。食害と考えられる。バスは魚類のほか、甲殻類、昆虫類、貝類、オタマジャクシも食べる。ギルは稚魚や魚卵、昆虫、カナダモなどの植物を食べている。現在人工産卵床、藻場とラップ、地引網、もんどり、刺し網で駆除している。閉鎖ワンドでは3年間駆除したら外来魚比率が下がったが、開放ワンドでは本流から入り込んでくるので難しい。
 植物の外来種は水面を覆うので水中が酸欠になり、光が当たらないので水中の植物が育たない。枯れた植物が腐ってヘドロ化し、硫化水素が発生する。このため、二枚貝がせいいくできなくなっている。植物の駆除はボタンウキクサについては5,6月に人手で行っている。重機を使うと予算がかかる。ナガエツルノゲイトウ、ミズヒマワリは斜光シートを使う。ミズヒマワリは2ヶ月で地上部が枯れ、1年で完全に駆除できるが、ナガエツルノゲイトウでは地上部が枯れるのに1年、地下部が枯れるのに2年かかる。効果的な駆除方法を開発して、他の機関と一緒に活動していきたい。

上田)
 市民と共同でやることが重要である。カラシナ、オオカワヂシャを駆除した事例を紹介する。子供が安全に遊べる場所作りとして外来種を駆除している。そのとき、カブトムシを見て喜んだが、撹乱されずに川辺に土がたまっていることが原因であり、喜んではいられない。ボタンウキクサを駆除したらホテイアオイが大発生して、これも駆除している。ネズミムギも大量に生えており、刈り取っている。「川を活かした町づくり、地域づくり、国土づくりにつなげていくことが最終目的」である。「川の直線化、コンクリート化は市民の責任であり、この責任をどう取るか」が課題である。

会場からの質問
Q.セイタカアワダチソウやブタクサは最近減少傾向である。これは嫌地のせいか?
A.(高田)他の種、例えばセイタカアワダチソウグンバイなどの天敵が出現するなど、競走が生まれてきている。嫌地の可能性もある。セイタカアワダチソウについてはススキとの間で早い者勝ち的な感じがする

Q.カワウが増えたから魚が減ったのは、コンクリート化で魚の逃げ場がなくなったからではないのか?カワウそのものよりも淵や岩陰がないのが問題では?
A.(横山)底生魚はいるが、中層の遊泳魚は減っている。確かに隠れ場はない。行政を含めて対策が必要である。
A.(上田)寝屋川は元は砂底の川で、下水で涵養されている人工河川である。人工なら人工なりに石積みなんかを作ってみた。結果がどうあれ、なんやかんややってみたらどうか?全体の関係を理解して実施することは重要であり、「好きもんの活動」にしてはいけない。

まとめ
中島)
実際に川に足を運んで、川をみてほしい。