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芥川・淀川連続講座(第2回) 「芥川が変わる! 魚道など-芥川の環境改善計画-」

第1回講座でみなさんに淀川と芥川の現状を知ってもらう講座を行いました。その第2弾として、今後、どのような芥川を目指すべきかをみなさんと一緒に意見交換しました。
総合司会 / 山﨑文男(芥川倶楽部)
コーディネーター / 中島敏明(淀川管内河川レンジャー)
パネラー / 餅原保夫(国土交通省淀川河川事務所)
          神田祥司(大阪府茨木土木事務所)
          大矢滋(高槻市公園施設課)
          中瀬勲(兵庫県立人と自然の博物館)
          久保杏慈(芥川美化奉仕会)
          奥正雄(芥川漁業協同組合)
日時
2009年6月12日(金) 午後6時〜8時
場所
高槻市生涯学習センター 3階研修室
参加者
52名
その他
主催 淀川管内河川レンジャー 中島敏明
共催 芥川倶楽部、あくあぴあ芥川
支援 国土交通省淀川河川事務所
協力 たかつき環境市民会議
後援 大阪府茨木土木事務所、高槻市
要旨
国土交通省、大阪府、高槻市の取り組みを3人のパネラーが紹介。久保氏からは会の活動報告、奥氏からは河川でのマナーについて話がありました。とりまとめとして中瀬氏から、芥川の取り組みはすばらいいので大阪府をリードしていくように、今の川作りは市民が主役であるとの激励をいただきました。
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★講演録 全文★

田口挨拶)
 今回の講座のキーワードは「変わる」である。いろいろなことが変わっているが、その一つがあくあぴあの指定管理である。4回の講演会の後、話し合ってきた内容を実現し、芥川を変えていけるようにしたい。

中島から問題提起)
 小学生に「芥川って誰のもの?」と聞くと、「みんな」や「人間」や「生き物」などといった回答がある。この芥川を管理している行政に、どのようなプランを持って管理しているのか説明してもらいたい。

餅原から取組紹介)
 淀川の環境保全には、「ワンド」「干潟」「ヨシ原」の3つの柱がある。干潟は昭和23年には180万m2あったものが、昭和46年には70万m2、平成9年には50万m2に減少してしまった。これを人工的に再生している。平成16年に海老江干潟と柴島干潟を造成した。海老江は柴島で発生した掘削土を流用して干潟にした。この事業は現在でも継続している。ワンドは撹乱されなくなっていることが問題であり、芥川合流部の唐崎に昔あったワンドは陸化して林になってしまっている。ここにもワンドを再生する。ヨシ原については鵜殿の70haのヨシ原が河床低下により乾燥化が進み、ヨシが衰退している。これを5m切り下げる工事を行っているところである。これ以外にボタンウキクサなどの外来種対策も行っている。
 芥川については、芥川大橋下の1号床固(落差2m)、2号床固(落差50cm)の魚道を計画中である。1号につては長さ35m、幅1m、傾斜1/10の階段魚道、2号については長さ8m、幅1.5m、傾斜1/20の斜路を計画しており、今年度施行予定である。津之江公園については、芥川の水が高槻市がつくった池に入って撹乱が起こるように、池と芥川をつなぐ切欠を今年度施行予定である。

神田から取組紹介)
 城西橋から上流が大阪府の管理区間で、塚脇橋までを今回の整備対象としている。この間に床固、堰は10箇所ある。河川法の見直しで自然環境への関心が高まっているが、府では予算が十分ではないので整備計画はなかなか実施できていないのが現状である。
 芥川倶楽部は平成16年のアユの遡上の確認をきっかけに発足した。部内にはワークショップ、魚道、澪筋、津之江、企画会議の5つの部会があり、川づくりを考えている。
府では予算的に大掛かりな工事ができないため、平成17年、18年に土のうを使って人海戦術で実験的に魚みちを作ってみた。しかし大雨ですぐに崩れてしまうので、恒久的なものを作ろうと、平成17年には西之川原で、平成18年にはJRでコンクリートを使った魚みちを作った。西之川原の魚道は、災害復旧工事の搬路を利用している。澪筋については平成19年に人力で深みを作り、川の流れを整理した。平成20年には門前橋でデルタフリーというコンクリートブロックを積み重ねて魚みちを作った。本当に魚が遡上するかは今後実験をして確認していく。あと6箇所の床固が残っているので、なんとか魚みちをつくって行きたい。それ以外にはミズヒマワリ駆除の取組に国の予算がついたので、今年度から実施していく。「小さいことからコツコツと」、できることをやっていきたい。

会場から)
Q.芥川の水位が減っているのは水田に水をとっているからである。取水量は誰が調整して管理しているのか?生物への配慮は?
A.(餅原)川に影響の無い程度で取水できる量は決まっている。日照りが続いて渇水になったときは渇水対策会議があるので、渇水の場合の取水量はこの会議で調整する。水利組合とも協力して川づくりを行っていきたいと考えている。
Q.渇水時における生物の避難場所として瀬や淵を作ることはできないのか?
A.(神田)どういったことができるのか、今後いろんな場で議論していきたい。
Q.カワウの食害をなんとかすべき。堰上流にヘドロが溜まるので、堰をとってしまったらどうか。特にJR下流の堰はJRの橋脚とは関係がないので撤去すべき。浮浪者がゴミなどを川へ捨てている現状をどう考えているのか、対策すべき。
Q.ワンドは撹乱されてこそ自然なのに、今は撹乱されておらずワンドの機能が失われている状態にあるのに、さらに増設するというのはどう考えてのことか?
A.(餅原)大堰の影響のない楠葉や唐崎などの上流部に作る計画である。現在55個のワンドがあるが、10年間で90個を再生する。また、大堰の操作を工夫して流れを作ることも検討している。

大矢からの取組紹介)
 津之江公園の計画は、河川法の改正による環境意識の高まり、生き物の生息環境の劣化、河川敷利用の基本方針の改正、津之江公園の立地から多用な環境創生が期待できる、ということから、ビオトープ化が計画された。平成17年に川づくりの取組がスタートし、平成18年には芥川創生基本構想が策定され、平成19年には津之江公園の設計、平成20年に工事が行われた。今年度は国土交通省が池と川を繋ぐ工事を行い、平成22年からモニタリングを行う予定である。津之江の基本方針は、「多くの生き物が生息する豊かな生態系拠点の創出(多様な環境を作る)」「防災拠点(準広域避難地)」ことの2点である。自然を再生するエリアには、いろいろな形状のものを作り、生き物に配慮している。この公園は「市、府、国が協力する」「行政と市民が協働する」「市民参加を基本とする」注目されている事業である。

久保からの活動紹介)
 芥川美化奉仕会は、河川敷で醤油屋が川へ捨てるカスを見るに見かねて、釣り仲間が集まって清掃を始めたことから発足した。現在の会員は58名で実働は38名ぐらいである。清掃だけだとしんどいので、楽しむために花壇づくりも行うようになった。年会費は6000円(昨年からは4000円に値下げ)で、会費を払って清掃を行っている会は全国的にも他にないのでは、と思っている。50年間ぐらい清掃しつづけていて、その間には魚釣りの場所を作って土木事務所に怒られたりと色々なことがあった。川だけでなく、摂津峡のけやきの森づくりや、萩谷の下草刈などもやっている。

奥からの提言)
 芥川漁協の漁業権の範囲は出灰の両国橋から塚脇橋上流のうきわ堰堤までである。6月20日がアユの解禁日であるので、それ以降に芥川で釣りをする場合には年券を購入してもらう。無断での釣りは違法行為である。釣り以外のバーベキューなどの一般客は無断で川に入って遊んでもらってかまわない。
上流で水田に水を取水するので、川の水は減るが、農業優先であるのでしかたがない。
一本の川で国と府の管轄が分かれているのはおかしいと思う。一本化してもらいたい。
摂津峡はバーベキューが禁止になったため、上流へ客が移動している。駐車、ゴミの問題が出てきて、監視しているが、なかなか解決できない。遊びに来るのは自由だが後始末してもらいたい。啓発しているのでだんだんと良くなってきているが、なかなか100%にはならない。
最近は水がきれいになってきたので、今はホタルの最盛期でもある。駐車のマナーを守ってもらいたい。

会場から)
Q.津之江について、自然再生は物を作ってからがスタートである。モニタリングを行いながら外来種対策や、環境の修正などを行ってもらいたい。魚道について、一般の人にもわかってもらえ、関心を持てるようなイベントや説明会を企画してもらいたい。クリーンアップについて、毎年行っているが、川へ入れる階段などが少ない。子どもも川へ入れるように対策してもらいたい。

Q.津之江の池は増水を考慮して作ったものか?というのも、昭和20年以降、芥川は2度決壊している。氾濫したら土砂の片付けも大変だし、ちゃちな池や川の流れは完全に変わってしまう。このようなことを考えて、津之江の池を作ったのかを教えてもらいたい。
A.(大矢)過去に国土交通省が付近の河川整備計画をおこなっており、出水時の津之江公園付近の流況について評価解析をしている。その結果、現在の盛土が、「出水時の流況に影響を及ぼすものではない」との解析結果を確認している。

中瀬からまとめ)
・兵庫県のホームページの「知事のさわやかトーク」を見てもらいたい。地域で活動する人の迫力というのはすごい。今、地域作りは地元市民が主役である。
・朝日新聞での嘉田知事と会談したときに話したことだが、昔は洪水の時には軒に吊るした舟を使って非難していた。洪水を起こさないということよりも、洪水とどう折り合いをつけるかが、求められる。
・自然を「再生」するなんておこがましい。再生ではなく「創生」である。目的をもちながら気楽に楽しくワイワイやろう。
・魚道について、出石川ではオオサンショウウオのための魚道を作っているが、オオサンショウウオは上っても魚は上らない。どんなものを上らせたいのか、実際に上っているのかをしっかり調べて作るべきである。
・円山川では河川改修の土建屋が、魚がかわいそうだから救出したい、という。しかし、余計な仕事をしたら今後入札に入れないのではないかと心配して、相談を持ちかけられた。自分も参加して魚救出を一緒にやった。こうゆう土建屋を使うことも重要である。
・加古川では流域委員会は15名で、主婦、釣り人、織物業者、サッカークラブ、カヌークラブ、報道関係者、学識者、行政で行っている。河川を考えるのは市民の時代である。
・バーベキューについて、青野ダムはバーベキュー、バス釣り、カヌーの客がものすごく、駐車は3千台ぐらいが路駐する。農耕車が入れずにものすごく迷惑しているので、青野ダムに限定した条例を作り、監視員を位置づけて監視させている。するとカヌー客とバス釣りの代表がルール作りを始めた。このように行政になんとかしてくれ、ではなく、自分達でどうすればいいのかを考えていくべきである。
・生物多様性国家戦略について。各県、市が独自に自分たちの戦略を作ることを明記されている。今まであまり顧みられることのなかった生物を今後どうするのか、ということが提起された問題である。これに則り、津之江は市の聖域として、みんなで外来種を駆除して聖域を保全してもらいたい。多角的マネージメントを津之江で展開し、津之江を中心にして高槻の環境を見直していく。このような取組は最前線のものであり、大阪府の環境行政をリードしてもらいたい。

中島からのまとめ)
 「魚道は本当に魚が上るの?」と聞かれることがある。市民のいろんなニーズに向き合っていく必要を感じる。これからの川づくりは行政だけでは無理で、市民みんなでやっていきたい。次回テーマは「川と人」である。ぜひ次回もきてもらいたい。