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講演会「オトシブミのひみつ!」

生きもの写真家の安田さんが昆虫の不思議を楽しく教えてくれました。まずは「ハチの子」の試食から。イモムシの足は何本? ゴキブリは日本に何種いる? カマキリは脱皮する? 昆虫クイズに答えると、安田さん特製の「昆虫の糞入りストラップ、安田撮影写真つき」がもらえるので、子どもも大人も話しにクギヅケ。オトシブミが作る揺籃の不思議にもびっくり。あっという間の2時間でした。
オトシブミ講演.jpg オトシブミ講演
日時
2010年4月24日(土) 午後1時30分~3時30分
場所
あくあぴあ芥川 3階 多目的ホール
講師
安田 守 氏(生きもの写真家)
参加費
無料
対象
小学生以上(小学生は保護者同伴)
参加者
36名
自己紹介
7年前から長野県駒ヶ根市で活動している。今はイモムシに凝っている。動物の骨格標本もやっている。北極圏でイッカククジラを見たくなり、夏に4回ぐらい北極に行った。生まれは京都、赤ん坊のころ一時期高槻市南平台に住んでいたことがあると聞いている。父親は関西人なので、父とは関西弁でしゃべっている。

長野は面白い。というのも、スズメバチ、カイコ、イナゴ、カミキリムシ、川虫・・・、これらは長野で普通に食べられている昆虫。クロスズメバチの幼虫~成虫を蜂の子として食べる。蚕の蛹をヒビと呼び、甘辛く煮付ける。通はカミキリムシを生または炙って食べる。ザザムシは川がざーざー流れているところから名づけられ、ヒゲナガカワトビケラがよく食べられている。昆虫食は「ぷちブーム」だが、自分はゲテモノとは思わなくて、普通においしいと思う。蜂の子を取るのは大変で、ハチを追いかけて山を走りまわって巣を見つけないといけなく、まさにハンティングであるが、長野ではまだ普通にハンティングを楽しんでいる。
今日は初心者向けにハチの子(クロスズメバチ)を持ってきた。(食べてみたい人は試食)1パックで数百円、味が濃い。ご飯のふりかけにしたり、炊き込みご飯にする人もいる。農協のスーパーの惣菜コーナーで普通にパックで売っている。秋にはスズメバチの巣板ごと売っていて、買って帰って自宅で料理する。虫を面白がるのとは違う楽しみ方。

みなさんの虫に対する意識を知りたい。嫌いな虫は?自分の友人は虫好きが多いが、何でもOKではなく、苦手がある。生きもの屋はこれが嫌いというのを認めたくないらしく、嫌いというのを言わない。イモムシと毛虫もそんなに好きではなかったが、写真屋なので撮影中にかっこいい部分を発見し、苦手を克服してしまった。
 参加者の嫌いな虫
 ・ゴキブリ(触覚、かさかさ動くとこ)
 ・アシダカグモ(動きが読めない、ササっと動く)
 ・カ(刺すから)
 ・毛虫(見るだけならいいが刺さりたくないので触れない)
 ・ムカデ(百本足だから)
 ・カメムシ(臭い)
 ・ヤスデ(臭い)
友人の盛口満氏が近々ナメクジの本を出版する。自分はナメクジは苦手。ねばねばして扱いにくいから。ナメクジの本に出てくるナメクジを何十年来研究してる人(東大ウエシマ先生)でもナメクジのネバネバが嫌い。生きもの屋でも嫌いなものがあるのは当たり前。イモムシは好きにはなったが、未だに嫌いなのはやわらかいこと。持ったときぶよっとなるのは気持ち悪いし、標本にしにくい。
対象はなんでも「好き」、「嫌い」、「無関心」の3つにわけられる。「嫌い」は虫と関わった経験があるからこそ「嫌い」なので、「好き」になる可能性はある。その生きものと接触して驚くことにより、よくよく観察すると「好き」になることもある。

ここで、昆虫クイズ
Q1.イモムシの足は16本? ○or× ○が10人、×が20人ぐらい。
 クロオオアリの女王アリの写真で説明すると、昆虫は「頭」、「胸」、「腹」の3つに分かれている。足は6本、羽は4枚、すべて胸についている。アゲハチョウの幼虫は、8対、16本。しかし前の3対はカギがついててちゃんとした足だが後ろの5対は腹が膨らんだ腹足。前の足だけでは腹を支えられないので、腹に足が発達した。毛虫も同じで、16本を基本としている。昆虫は例外がたくさんある。腹の足は腹の肉が変形しているので、なくなっているものもある。シャクトリムシは中間の足がなく、全部で10本しかない。だから「尺を取る」ように歩く。
ところで、自分の講演の特徴は御土産がもらえること。正解者の中からジャンケンで勝った人には虫のウンチをプラスチックに封じ込めた特製ストラップ、安田撮影写真つきをプレゼント。

Q2.カマキリは脱皮しない。○or× ○が13人、×が19人
学校の教員をやっていたときに学生から脱皮するかどうかを聞かれた。「カマキリは生まれた時からカマキリ。そのまま大きくなったら大人、だから脱皮しないよね」と言われた。正解は脱皮する。チョウはイモムシ-蛹-チョウなので脱皮することはわかるようだが、カマキリやバッタが脱皮するとは思われないみたい。昆虫は体の外側を硬くして体を支えているので、体がパンパンになったら脱ぎ捨てる、とうことをしないと大きくなれない。
イモムシも次のイモムシになるためには脱皮をする。脱皮の前後で大きさはかわらないが、脱皮前は皮がパンパン、脱皮後は皮がしわしわでまだまだ膨らめる状態。「林でノコギリクワガタを捕まえたが、小さいのでエサをやれば大きくなるか?」と聞かれたことがある。成虫になればもう脱皮できないので、いくら食べさせても大きくはならない。これが脊椎動物と最も違うところ。
さて、ジャンケン勝者へナナホシテントウのウンチのストラップをプレゼント。

Q3.イモムシはチョウ、毛虫はガになる。○or× ○が11人、×が多数
ギフチョウ、ヒメアカタテハの幼虫は毛虫、カイコ、スズメガの幼虫はイモムシ。チョウとガの境目はどこか?ダイミョウセセリは地味だがチョウ、イカリモンガは昼間に飛ぶきれいなガ。アゲハモドキはクロアゲハみたいだがガ、クロコノマチョウは地味だがチョウ。ガという大きなグループの中にチョウという小さなグループがあり、分け方ははっきりしていない。「昼間に飛び」、「きれいで」、「触角の発達していない」のを一般にチョウというが、一概にそうともいえない。「虫」と「昆虫」という呼び方も同じで、「虫」だとクモやムカデも入る。ジャンケン勝者にはクスサンのウンチのストラップ。

Q4.日本にゴキブリは何種類いる?5種類に7人、50種類20人、500種類10人
「日本産ゴキブリ類(13500円)」という図鑑によると、52種類。なぜかチャバネゴキブリは名前が有名だが、違う種類もいる。日本の家に入ってくるのは5種類だけ。クロゴキブリは、隙間風がなく暖かい家にいる。ヤマトゴキブリは野外にも住んでいる在来種で時々家にも入ってくる。冬の寒さに耐えるので、隙間風が多く寒い家。モリチャバネゴキブリは野外にしかすんでいない。チャバネゴキブリは街の飲食街にいる。大都市とか沖縄にはワモンゴキブリがいる。他の種は野外でひっそり暮らしている。オオゴキブリはゴキブリ嫌いの人でも好きになるかっこいいゴキブリ。いくら長野県人でも食べない。朽木がしっかり残っている良い林にいる。ゴミは食べず、クワガタのように朽木を食べる。今日は生きて動いているのを持ってきたので触ってみよう。意外に固くてしっかりしていて、カブトムシっぽい。台所とかの菌はついてない。オスは飛ぶ。(逃げた!!!床を這うと気持ち悪い~)ジャンケン勝者にはカブトムシのウンチ

Q5.5匹の昆虫のうち、ハチは何匹? 3秒しかでないのでよーくみて。0匹4人、1匹3人、2匹19人、3匹9人、4匹1人、5匹2人
正解は0匹。すべてハエ、アブのなかま。
ハエは目が大きく、針もない、毒もなく、模様だけハチに似ている。触角も違う。虫を捕まえて食べる鳥に対して、ハチに似ていると襲われにくくなる。昆虫はすべてからだが小さいので、より大きな動物に食べられる立場にあり、食べられない工夫をしている。それが昆虫の最大の特徴。テントウムシはいじめると黄色い汁を出す。これを舐めると苦い(実際に舐めたことがある)。だからテントウムシは食べられにくく、それに似せた虫がいる。アリに似せたクモ、カメムシもいる。ジャンケン勝者にはオカダンゴムシのウンチ。

昆虫は体が小さく、自然界ではいろいろな生きものに狙われる存在なので、いろいろな工夫をしている。擬態もそのひとつ。例はナナフシ。ムラサキシャチホコは枯れて反り返った葉っぱそっくりだが、実際には翅が反っているのではなく、反った模様が翅に描かれいる。イモムシも擬態が多い。カギシロスジアオシャクはクヌギの新芽にそっくり。コナラの冬芽のそばで体を丸めて幼虫越冬する。クロモンアオシャクはそのへんにあるゴミを体に乗せていく。鳥の糞も人気でよく似ている虫はキアゲハの幼虫、シャクトリムシ、ガの成虫など。虫のウンチにそっくりな虫でムシクソハムシ。拡大すると虫っぽいが手足と触覚を格納するとウンチそっくり。体にスジが入っていて触角がぴったり格納される。卵にウンチを塗りつけて卵がみえないようにコーティングする。幼虫は自分のウンチを固めた家に入る。

オトシブミ
中世のころ、恋文や政文を巻物に書いて落としたものを「落とし文」といい、それに似たものを作るのでオトシブミと呼ばれる。落とし文を作る昆虫をオトシブミと呼ぶ。オトシブミ科は日本に80種ぐらい。その中で葉を巻くのは30種ぐらい。巻物は揺籃、ゆりかごと呼び、幼虫のエサ件隠れ家。お菓子の家のように食べられるおうち。揺籃の中の卵は普通1個、種類によっては2,3個になる。種類によって巻き方、葉っぱの種類、大きさが違う。

Q6.揺籃1個作るのにかかる時間は? 2分0人、20分7人、2時間大勢、2日間3人
デジカメの記録によると、葉を切り始めたのが11時半。その前に葉を調べるのでスタートは11時ぐらい、完成したのが午後1時5分なので2時間程度。早くて1時間、長くて2時間ぐらい。2日かかるのもいて、葉を37枚ぐらいまいて1日で終わらなかったものも見たことがある。卵1個にものすごい労力をかけている。ジャンケン勝者にはオトシブミのウンチのストラップ

メス成虫は葉をぐるぐるまわり、噛んで試したり、次の葉に行ったり、慎重に選ぶ。根元に切り込みをいれる様式が決まっていて、端から切り込みをいれ、主脈基部の皮1枚を残して噛み切るので葉がしおれる。作りかけの葉は垂れ下がっていて虫がついている。葉がぴんぴんしていると巻けないので、足で葉をたわめるように曲げて主脈や側脈を噛んで水分の通り道を切断してしなしなにする。しんなりしたら縦に二つ折りにする。巻く方向は左右両方ある。途中で口で穴をあけて産卵し、きれいな円筒形になるように巻いていく。単純に丸めると内側がたるむし天井と底を作る必要があるので数学者が書けそうな折り目をつけて折っていく。最後はたるみをひっくり返して固定し、巻きがもどらないようにして切り離す。揺籃は腐っていくが腐り気味のほうが消化がいいらしい。中でウンチをするのでどんどんたまっていく。大人になってから出てくる。チョッキリの場合は幼虫で出てきて土にもぐる。

Q7.オトシブミハンドブックを読んだ小学生が夏休みの自由研究でオトシブミをやった。揺籃から出てきたオトシブミが死ぬまで(6月のはじめ~8月16日)の間に作る揺籃を数えた。さて、オトシブミは一生のうちに何個の揺籃を作るでしょう。ちなみにモンシロチョウは750個、オオカマキリ200個、ゲンジボタル512個、ニジュウヤホシテントウ924個、ハルゼミ349個。 30個20人、300個12人、3000個0人、
正解は29個
毒もなく、体も小さく、身を守るすべがないので、子どもに手間をかけて大事に育てる。虫の中では変わり者。ジャンケン勝者にはオトシブミのウンチのストラップ

こうして大事に育てるが、厳重に生んだ卵を狙うものがいる。寄生バエ、ハチが卵に寄生する。揺籃をはやく巻こうとするのは寄生虫が入らないように。飼育してみると中で死んでいることがある。
成虫も葉を食べる。幼虫も葉を食べる。冬は成虫で樹木の樹皮の下や落ち葉の下で越冬する。春先に成虫が起きてきて活動する。揺籃の切り落とし方は種類によって様式がある。ゴマダラオトシブミはL字型、ナミオトシブミはまっすぐ横、ウスアカオトシブミはJの字。切り落とし方。ナミオトシブミは揺籃につかまったまま切り落とすので、揺籃と一緒に落ちそう。 カシルリオトシブミは3mmぐらいの小さなオトシブミ。葉の端をテープ状にきり、団子状に巻く。揺籃は時間がたつとカビが生える。1種類のカビがきれいに生える。メスのおなかにブラシのようなものがあり、揺籃にカビの胞子をこすりつけると揺籃がカビに覆われ、幼虫が食べやすくなる。
ドロハマキチョッキリ。ドロノキなどを巻く。金属光沢で青っぽいのから赤っぽいのから緑っぽいのからあり、非常にきれい。 ドロハマキチョッキリはイタドリなどの先を切り、数枚の葉を全部切り込んで揺籃を作る。
巻かない種が50種ぐらい。ドングリの枝ごと落とす種もある。托卵する種もある。オトシブミも托卵相手も育つので、排除するわけではない。
オトシブミを作るのはメスだけで、オスは一切手伝わない。オスは首が極端に長いタイプがかなりいる。メスが葉を巻いているときにオスは回りにいる。他のオスがくるとメスを争って背比べをする。致命的なケンカではなく、儀式的にケンカをする。ヒゲナガオトシブミはクビと触覚が非常に長い。ケンカは背比べ。アシナガオトシブミは鼻先、前足が長い。背比べしながら相手を抱え込む。ルイスアシナガオトシブミはクビは長くないが前足が発達する。前足を振り上げてレスリングをする。外国産のオトシブミはさらに首が長い種がいる。例えばキリンオトシブミ。日本産の倍ぐらい。種名が確定してないが、暫定にはロクロクビオトシブミといのもある。クビの根元しか曲がらないのでどうやってエサを食べているのかが不思議。

オトシブミを探すのは難しくはない。コツは落ちている巻物を見つけること。写真は農道にクリ林が隣接し、枝が張り出している場所。ナミオトシブミがたくさん発生して、ぼとぼと落とすので見間違えようがない。これから5,6月の間にでる。林の中では探しにくく、林の脇をとおる道が見つけやすい。揺籃をみつけたらその脇を探せば見つけられる。見つけたらオトシブミファンになること請け合い。

会場から質問
Q 1日に何個ぐらい?巻いている最中に落とすことは?
A.4つぐらい。風で自分が落ちることもある。たまには戻って来ることができる。葉が千切れて落ちることもある。そういう場合はやりなおし。

Q. オトシブミとチョッキリの違いは?
A.分類では細かい形質でわけるが、日本のものだとオトシブミはクビが長く、チョッキリはゾウムシに近い。沢田先生(兵庫県立人と自然の博物館)に来るので聞いてもらいたいが、足のトゲで分けるらしい。

Q.揺籃を拾ってきたらどうやって育てる?
A .無頓着なものはフィルムケースに入れておくだけ。乾くのは良くない。プリンカップかタッパーにティッシュを1枚敷いて軽く湿らせて蓋をしておくと、2,3週間で出てくる。落ちている揺籃の種類が分からない場合は成虫にするとわかるので、飼うことはある。

Q.土の中で育つものはどうやって飼育する?
A チョッキリは幼虫で出てきてしまうので、そうなったら土に入れる必要がある。

最後に、あくあぴあ周辺でよく見られるのはヒメクロオトシブミ。実物は小さいのでよく探してみよう。