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連続講座「ナラ枯れの原因と今後の対策について」

高槻市の里山に忍び寄る恐ろしい生きもの。 カシノナガキクイムシとその昆虫が媒介する菌によってコナラやクヌギがどんどん枯れてきているのです。東か ら広がってきた「ナラ枯れ」がついに高槻市にも!森が荒廃すると川も荒れます。 「ナラ枯れ」の研究者である森林総合研究所の黒田氏をお招きしてナラ枯れのメカニズムと対策について、講演していただきました。
講演では、カシノナガキクイムシの生態からナラ枯れがなぜ起こるのか、現在の発生状況、なぜ防除が難しいのか、現在の取組、森林施業における注意など、多岐に渡る内容を話していただきました。会場は満員で、みなさん真剣に聞き、質問されていました。対策が難しく、落胆された方もいらっしゃったようですが、今後の活動に活かしたい、との前向きなご意見もいただきました。
講座録の全文を下記に掲載しますので参考にしてください。森林総合研究所のHPに詳しい解説があります。黒田氏のHPはこちら。

講座風景  黒田氏
日時
2010年11月7日(日)10:00~12:00
場所
高槻市総合センター6階 C601
講師
黒田慶子氏 (森林総合研究所関西支所 地域研究監)
参加者
64名
主催
芥川緑地資料館
後援
高槻市、大阪府森林組合三島支店、関西自然保護機構
★講義録全文★

司会 あくあぴあ芥川 小柿事務局長
挨拶 あくあぴあ芥川 田口館長
挨拶 農林課 畑課長

講義内容
ナラ枯れの前は松枯れを研究していたが、最近はナラ枯れの研究がメインになっている。ナラ枯れがなかなか止まらないので里山全体のことを考えないといけない。ナラに薬を撒くだけでは対処できない。

●里山とは?
里山の林というのは二次林、薪炭林、雑木林で、関西ではアカマツ、コナラが多く、1000年以上も利用されている。里山は地域差が大きく、例えば和歌山では常緑樹が多いなど。場所により植物も気候も育ち方も違うので、こうするのがいい、と一言では言えないが、今日は平均的な話と高槻の状況の話題提供を行う。
人里に近い山が里山であり、里に近い人工林も里山として扱ったほうがいい。人工林は悪者とイメージがあるが、スギやヒノキが悪いのではなく、手入れ不足のせいで問題がある。日本は世界有数の森林国である。世界では25%が森林だが、日本では67%もある。人工林は4割、里山は3割。どちらかだけの議論はよくない。
里山は人が利用してきた林であるが、行政用語では天然林に区別される。というのも、行政用語では人工林以外の大半を天然林とするため。統計上、天然林に入っているので原生林的に誤解されることがあり、伐採批判などの誤解を生んでいる。広葉樹の植林を新たに進めるよりも、身近な里山を健康に維持するほうが費用も少なく、効率的である。
大阪はほかの地域と違い、農耕地を除いた植生のうち植林地が少なく、里山の割合が高い。各地で対応の仕方は変えなければならない。
健康な林の定義は「樹木が持続的に成長し、森林として維持されていること」。森林タイプによって異なる。天然林では時々枯れる木があっても良いが、人口林では材質が重要なので枯れることはよくないと判断される。このように人間の都合で決まる部分もある。樹木の病気はカビによるものが多く、昆虫の加害や気象の変動(急な干ばつ、高温、低温)なども健康低下に関係がある。森林で病虫害が増えてから防ぐのは難しいので、予防医学が重要である。

●なぜ里山を保全するのか。
里山の機能とは。
昔:肥料、燃料の収穫場所:現在は使わなくなった。
現在:CO2吸収、温暖化防止:これは政治的な理由づけも含まれる。生き物なので夜はCO2を出す。温暖化にどの程度効くかも議論されてない。CO2削減の責任をだれが持つか、という点で数字が先行していて、科学データに基づいた議論が置き去りになっている。
生物の多様性の維持:絶滅危惧種ばかりが注目されている。多様性=数の多さであると誤解されている。癒しや憩いの場、伝統文化(祭事)、観光資源
→この広大な里山が荒れ果てたら困るが、税金で保全するのか?
 地域で求められているのは何か
 だれがどのようにすすめるのか
 だれでもできるのか
 専門家が不可欠
 ボランティア、地方自治体、NPOなどの協働が必要

●ナラ枯れとは
2009~2010年の京都(清水、大文字山)の被害が非常に騒がれたが、2,3年前から被害はあった。誰が見てもわかるレベルで観光地に出たので大騒ぎになっている。暑さで枯れたとの報道もかなりあったが伝染病であると説明した。人の多いところでは騒がれるが、滋賀県の湖西などでは昨年から大面積に枯れていたのに対策はできてない。
ナラ枯れは糸状菌(カビ)による伝染病で、昆虫のカシノナガキクイムシが菌を運ぶ。病気の感染に対してはミズナラが一番弱い。関西ではコナラの枯れが目立つ。常緑のシイ、カシにも感染する。まずはみなさんにはコナラ、シイ、カシ類の種類を知ってもらいたい。ナラ枯れがどう広がったかというと、1980年代の終わりに福井県からナラが枯れていると依頼があり、90年代に被害地域が広がっていった。2010年はものすごく枯れた。1930年代から虫の害として記録がある。江戸時代にも「枯れた木を燃料に使わせてくれ」という陳情書が残っているので、昔から時々には発生していたようだ。日本海側から枯れているので、中国から汚染物質が飛んできている、酸性雨のせいだ、という人もいるが、そうではない。温暖化という人もいるがこれも否定されている。ミズナラの分布地域が枯れており、北から南へ分布が広がっている場所も多いので温暖化とも言えない。

カシノナガキクイムシは群れで幹に穴をあけ、材にトンネルを掘り、卵を産んで子育てをする。養菌性昆虫であることが有名で、メスの背中に穴があり、病原菌と食糧になる酵母菌(カビの一種)を持って移動する。酵母菌を培養して幼虫のエサにする。虫が作ったトンネルに病原菌が生える。辺材部分に菌が蔓延して根からの水が吸い上げられなくなり、梅雨明けぐらいの水が必要な時期に葉が真っ赤になって枯れる。アラカシの場合、変色は激しくないが、変色した部分は水が吸い上げられないので葉から枯れる。

色の変わっている部分を顕微鏡で観察すると、道管から細胞に菌が入り込み、栄養をとっているのが見える。このような部分では、水を上げられないようになっている。コナラは導管が太く、肉眼で見えるぐらい。菌は虫が掘ったトンネル沿いに増えるので、虫が2,3頭入った程度なら枯れないが、虫が100,1000頭と多数入ると、枯れやすくなる。微生物は自分で動けないので虫に運んでもらう。非常にうまく連携されている。被害を減らすのに一番重要なこと、枯れ木から翌年の初夏に虫が出る前に、殺虫してしまうこと。1本枯れたところで、徹底的に殺虫すると翌年はそれほど増えない。1本の木から何万匹も虫が出てくることがあるので、枯死木の数が増えるとどうしようもなくなる。被害が出た最初の年が非常に重要である。今、高槻市の梶原トンネルの上で枯れているところが真っ赤になっている。駆除の方法は基本的には小さいチップにして乾燥させるか、丸太のまま消毒(殺虫剤の散布)する。薬剤散布には法律で決められている方法があるが予算と人手がかかる。予防薬の注入という方法もあるが、寺の境内とか、どうしても残したい木には使えるが、たくさんの木に使うには、予算的にも難しい。枯れた木は次の年の春、5月に虫が出るまでに絶対に処理しなければならない。その前に被害場所や本数の調査を行う。ここに人手とお金が足りないことが多い。方法は確立されているがいろいろ難問がある。

●ナラ枯れはなぜ増え続けているのか?
里山林は天然の林ではない。都市近郊の里山は数百年以上も薪炭生産や肥料に利用されていた。広葉樹の場合は15~30年で順に伐採され、畑のように使われていた。1950年以降、燃料革命により、里山林が利用されなくなって、1980年にはマツやナラを全く伐採しなくなった。その結果、直径が2~30cmもあるような木に育ってしまった。カシノナガキクイムシは直径10cm以上の太い木だと、幼虫のエサが十分にあるので、1ペアから生まれる幼虫の数が多くなる。近畿の広葉樹林は、50歳ぐらいの林が非常に多い。昔は30年にならずに切っているので、虫に適した木があまりなかった。カシノナガキクイムシは日本全国に昔からいた虫で、数は多くなかったものが、最近は増加に適した木が多くなったためにやたらに増えてしまった。薪炭林が枯れてきたのは20年前ぐらいから。ナラ枯れはインフルエンザのような人間や動物の伝染病と同じである。虫の少なかった頃は薪炭林のナラ類を中心に枯れていたが、最近は虫が増えて、どのようなナラ林にも感染が広がり、マツが枯れた後に生えてきたコナラ林でも被害が出るようになった。
カシノナガキクイムシの繁殖に適した木が増加した理由として、放置薪炭林が高齢樹(40年)になっただけでなく、公園型整備が増えたことも理由に挙げられる。つまり老木を残して細いものや下生えを減らす整備で、見た目はきれいだがカシノナガキクイムシのエサに適した林を作っていることになる。ナラ枯れの被害は自然現象ではあるが、人間の生活様式の変化という社会要因がある。見た目は以前と変わらない里山でも実際には林の内容が変化してきていた。温暖化の影響はあるのか、と問われるが、今はデータがなくわからない。将来的に統計をとれば何かわるかもしれない。温暖化については踏み込んだ話をしてもしょうがない。

●なぜ高槻の梶原に突然出たのか
もともとあちこちにいたカシノナガキクイムシが増えやすい環境になったので増えているから。この病気で枯れたナラ、シイ、カシ類から多数飛び出して周囲の生きている林に入る。昔なら病気で枯れた木はすぐに切って燃料にしたので、すぐに殺虫されていたが、今では放置されているので虫が増えてしまう。虫は数Kmも飛ぶことがわかっており、風に飛ばされて広がることもあるので、少し離れた場所に飛来して被害が出ることもある。枯れ木を人が持ち出して運ぶという要因もある。枯れたものをシイタケのホダ木にしたり、薪ストーブ用の薪として移動すること、造園業者が殺虫剤をかけずに放置することなどが考えられる。ただし証拠はなく、憶測の段階。被害がでる数年前から虫は増えており、枯れてない地域でも虫は何匹かは捕れる。虫が捕れた数年後に枯れ始める。奥山で人知れず枯れ木が発生し、感染源になることもある。

●どうすればいいのか
ボランティアなどの施業では、里山整備をしたときにコナラの丸太を林の中に置いておく場合が多いが、切り倒した直後の木はカシノナガキクイムシの一番いいエサとなっている。丸太の周囲で被害がでている。虫の性質がわかってないと被害を拡大してしまう。枯れ木を処分してもすぐには虫が減らず、あきらめてしまう地域もあるが、放置すると手に負えなくなる。手に負えなくなった場合の次善の策も必要である。伝染病を減らすためには媒介者を減らすことが重要なことは人間の病気でもマツ枯れでも同じである。人間に感染する病気と違い、樹木の病気は誰しも問題を甘く見ているので、対策がとりにくい。民有林の徹底駆除は共有地の所有者がわからないことがあり、所有者の特定に時間がかかり被害が拡大することがある。激害地では少々虫がでてもいい、とわりきって薪にしてしまうことが良い。枯れる前に残したいナラ林から切り、枯れてしまったところはもういい、と割り切ることが必要。

●ナラ枯れの前に、里山はマツ枯れにより大きく変化していた。
マツ枯れはマツ材線虫病。北米から100年前に長崎に入った伝染病で、カミキリムシが若枝をかじったときに伝染する。関西で1980年ぐらいから枯れ方がひどくなった。戦後はGHQがDDTを散布して減少したこともあるが、枯れ木を放置したことで1980年代に大量に枯れた。薬剤を空中散布する法律ができて被害が減少したが、空中散布の害を疑問視する声も多く、最近は空中散布を止めているので被害が拡大している。薬はできるだけ撒きたくないが、撒いた場所と撒いていない場所ではっきりと感染に違いがある。殺虫剤も効果的に使えばいいが、ナラ枯れは空中散布できない、というのも虫が飛んでいる時間が短いので予防的に空中から撒いても効果がない。ナラ枯れはマツ枯れよりも対策しにくい。
江戸時代は関西はマツ林ばかりだった。観光客のための京都の絵図がきちんと残っていて、1799年の図では銀閣の裏山は草原に大きなマツがぽつぽつと生えている程度。1864年には6年生ぐらいのマツがそろって描かれており、一斉に切って使っていたことがわかる。京都だけではなく、中国地方も同様。「切りすぎるな」とのお上からのお達しも出ていた。平安時代には利用しすぎて禿山になっており、痩せた土地でも育つマツばかりになっていた。つい最近になって木を使わなくなり、その結果、伝染病が蔓延して枯れてきている。

●里山におこった50年間の変化を整理
マツは10年生ぐらいから感染して枯れることを繰り返す。マツが枯れたのちコナラが増加し、ナラ枯れになる。金閣寺の裏側はナラだったのがシイに変化してしまい、景観が変わってしまったと嘆く人もいる。研究者としてはマツが枯れたのちにちゃんと樹種転換してよかった、と思っていたが、シイも枯れる事態となってしまった。落ち葉かきをしていないのでシイに変わったといわれることもあるが、そういうゆっくりとした変化ではなく、マツが全滅したことでいきなり樹種構成が変わってしまった。近畿では1980年代に松枯れの被害が多く、その後にナラ林に変化している。
「放っておいてもそのうち回復する」というのは無責任。民家の裏の木は倒れてくるし、倒木で死亡した人もいる。倒木による被害がでるかどうかは見極めが必要。
マツ枯れの後にナラ枯れが進んでいる。もし放っておいたら、樹高が10mほどの常緑樹のソヨゴが増えて林床が暗くなる。背の高いほうはコナラ、アカマツの枯れていないものが少ししかない。その下にソヨゴが生育すると、明るさの必要なコナラは生えてこず、もともとのナラ林とは全然違う構成になる。シカが増えたのも問題で、生えてきてもすべて食べてしまい、林にはならなくなる。生物多様性を強調する人は種類が多いことを評価するが、種類が多ければいいわけではない。猛毒のキノコであるカエンタケが増えている。人にとって危険で、食べると死ぬし、触ってもだめなので注意してもらいたい。枯れ木を腐らせるキノコであるのでナラを枯らしているわけではないが、以前はあまり見られなかったのに、枯れ木が増えたために多くみられるようになった。

●どう整備すればいいか
「森林は切らないで大事においておくと立派な天然林になる」という考えは里山にはあてはまらない。里山をそのままおいておいても原生林にはならない。日本の森林の大半は人の手で維持されてきたし、放置すると不健康になる。次世代の樹木が育たない。ナラ枯れをどうするか、だけでなく、先を考えるべき。資源として不要だから放置されているので、資源としての利用を再開することが必要。次の世代に渡せるか?を考える。
公園型の整備は2,30年先にどうなるか見ていない。広葉樹は間伐をしても枝が茂って林床が暗くなるので次の世代は常緑になる。下生えを整備して明るくなるとカシノナガキクイムシを誘引するし、伐倒木を放っておくとカシノナガキクイムシのエサになる。高齢の木を残すとナラ枯れを起こしやすいので、公園型整備はやめたほうがよい。里山の木は長寿を期待できないので、大木を抜き切りするのではなく、一斉に全部伐る(皆伐)ことが望ましい。里山として望ましいのは薪炭型の林の仕立て方である。大面積で皆伐するのではなく、昔のように、年に一反(約0.1ha)ぐらいの面積を伐ると、生態系への影響などの点で安心である。

企業の整備活動にも注意が必要である。広葉樹の苗の植栽や生物の種類調査などを行うことが多い。指導者の知識不足によりナラ枯れが発生したり、イベントで終わってしまい管理をしない、地元にない木を植えるなど、なんのためにやっているのか、ということがかんがえられていない場合がある。また、広葉樹のCO2吸収量を過大評価している場合がある。重要なことを検討しないままに走っていることがあり、結果として善意が生きてこない。活動の際には計画をきちんとたてること。

●小面積皆伐による里山整備のメリット
 ・伝染病であるナラ枯れの発生を減らす
 ・萌芽が育つかどうか確認必要
 ・マツ林の再生は困難。芽は出るが大きくなると枯れるので薬が使えるか、管理できるかが重要
 ・税金ではできない、地元の協力が重要
 ・資源の利用をする

●現代版里山管理
昔の生活にはもどせないし、ただ頑張るだけでは持続できない。森林総研では、調査し、切り、モニターをお願いしている家庭でストーブを使ってもらう、などの取り組みをしている。薪ストーブユーザーは薪が手に入らないので、通販で高額な薪を買っていることもあり、この人たちと里山施業をつなげる。薪の入手作業を楽しいと感じらえるなど、協働作業が盛り上がることが期待される。経験と科学に裏付けされた管理が必要。能勢では今でも薪炭生産をしているので、大阪では戻せるとは思う。長時間の見守りと、次のサイクル、次世代のために地元の方の参加が必要。

●森林総研で行っているプロジェクト
薪ストーブの設置試験をしている。ペレットストーブの場合は、5cmの穴を壁にあけるだけで設置できる。灯油と同じぐらいの値段。全員が薪ストーブを使うと里山の木はなくなるのでほどほどで。薪ストーブを使うとハイブリッドカー5台分のCO2削減になる。楽しくCO2を減らそう。
小学校の図書室に入っている。使ってもらっている家庭での意識やコストの調査もしている。直径20cm以上の樹木は素人が切ると危険なのでプロが伐採している。ここには公的な費用と作業のできる方の養成が必要。今回太い木を切ってしまえば、次のサイクルでは自分たちで切れる。できるだけ居住地に近く、行きやすい場所から守る。

●具体的な検討事項
 ・その土地の歴史を勉強する。
 ・現状の調査をする。多様性の調査ではないので資源量がわかればいい、とか
 ・目標を明確に。
 ・遊びの要素を入れて次世代につなげる

●おわりに
「現代版里山文化」をつくる。マツ枯れでは薬を撒くことで対策が終わってしまったために、ナラ枯れは起こってしまった。次の世代に持っていくのであれば、ちゃんと考えることが必要。
日本は森林資源を無駄にしている。韓国もナラ枯れがでてきていて、状況は似ている。日本はハイテクにとらわれがちで、木材資源をアルコールにしよう、とかを考えるが、コストがかかりすぎてだめ。ローテクがいい。スローライフのゆとりをもってローテクに資源を使う。昨年薪ストーブを入れた家庭では灯油とガスをつかわないので、CO2を2,3割削減している。輸入の灯油を使わないということは日本としてCO2を減らしていることになる。倹約して電気をつかわず凍える、というのではなく、再生する木材を使うことはいろんな意味でいい影響がある。薪ストーブを使うことで近所と付き合いができる例もある。地域のコミュニティーの活性化とセットで考える。 企業の植林活動や資金援助はもうちょっと考えて・・・・。

関連情報は黒田慶子氏のHPで。


質疑
Q.吉野の千本桜が枯れたときのナラタケとは関係があるのか
A.ナラタケ(きのこ)はナラ枯れで枯れた木にでることがある。ナラ枯れを起こす菌とは全く種類が違う。

Q.大阪府の花利用構想では、大阪から生駒山を見てきれいにしたいのでヤマザクラとイロハモミジを植えている。これについての意見を聞きたい。
A.公園、観光として考えているのなら、そういう目的でもいい。今ある山がどういう状態なのかによる。担当者が山と思っているか公園と思っているか。公園であるなら植えて管理することが基本。大阪府では林業関係者が少ないので、公園の担当者が考えると「森」という感覚が抜けがち。

Q.ボランティアで山に入っている。アベマキは枯れにくい、と書いてあるが本当か。
A.アベマキはよく枯れている。枯れないのはブナとイヌブナである。ドングリのなる木、アベマキ、クヌギ、ウバメガシなどが枯れる。

Q.大径木がやられやすいというのは?
A.虫が好む。太い木だと辺材が多いので、1ペアから100とかの子どもを育てられるが、細い木だとあまり子どもが育たない。

Q.ボランティアで悩んでいる。大きい木の切り株から萌芽しなかったら、2次災害につながる可能性がある。そこに責任を持てないので残してしまう。上のほうの枝だけ切れば萌芽するのでそのようにもできるが、下の幹には虫は入るのか。一反ずつ切ると時間がかかる。40cmある木を切ると我々の手に負えない。転がしただけにすると虫がわくのならどうしたらいいのか?
A.台切りにすると太いところには入る恐れがある。一反以下なら昔から切っている場所であれば大丈夫ではないか。持ち出せないなら切っても切らなくても同じ。やりやすいところから手を付けるしかない。被害が近付いている場合にもあわてて切らないほうがいい。地図を描いてその地域で、どこを残すのかを検討しなければならない。連携しないと防除は難しい。優先順位をつけざるを得ない。地元と連携をして合意をとってできるところからやる。実際に何もできていないところもある。

Q.マツ枯れのときもそうだが、虫がやってきたとき、どの時点で木は再生不能になるのか。下から萌芽ができるのか。
A.ナラの場合はまれに萌芽が残る場合がある、という程度。枯れかけのときに萌芽が出やすいが、大半はその後で枯れてしまう。

Q.摂津峡のキャンプ場で枯れてきている。処理できる団体とか紹介してもらえないか。
A.現状では森林組合ぐらい。伐採は針葉樹が主で、広葉樹をメインに仕事はされていないのでしんどいかもしれない。倒れる方向が危険であればクレーンで吊りながら切るしかなく、難しい。

Q.神峯山寺、梶原など300本ぐらいは枯れている。高槻市役所としてどこから手をつけたらいいのか。日吉台なら20~30人も所有者がいる。
A.5月ぐらいまでなら次の虫がでないので4月中にはなんとかしてほしい。次の年には同じ木には感染しない。まず倒木による危険回避を。次には5月になるまでに切る、ということが重要。

Q.生駒山系の飯盛山で保全をやっている。生駒にはまだきてない。枚方穂谷には来ている。早めに切って朽ちさせていれば来なくなるのか?
A.太い木は最も虫を呼び込む。ただし、切ってから1年目には入るが、2年目には水気が抜けるので入らない。周りに被害がないのに、スポット的に被害が出ているということはすでに虫がいる状況にある。切って置いておくと虫を呼び込むし、その場にいる虫を増やす危険性がある。被害地から何キロ離れていたら虫が来ないということは言えない。

Q.生き残る木がまれにある、というのは遺伝的に強い形質があるとか、理由はあるのか?
A.遺伝的なことについては、研究データはない。虫が部分的に入った場合、水の揚がり方の状況で、助かる場合と助からない場合がある。今年は暑く乾燥したので水がたりなく、持ちこたえられなかったものも多く、足すが枯れた。来年冷夏で雨が多かったらここまで枯れないかもしれない。枯れた木は萌芽しない、というのはほぼ確実なのだが、たまに萌芽を見つけてくる方がいる。が、期待はしないでもらいたい。

Q.ずっと日本にいた虫なので共存していたという可能性はあるのか。反撃するものがあるのか?
A.共存していたのは薪炭林のナラ類が若く、大木がなかったという状況下でこそ。この虫は山奥の大木がちょっとだけある環境でほそぼそと生きていたはず。被害を減らすことが難しい状況になってきたので、里山の保全の方に力の入れ方を変えている。虫は枯れ木から出てすぐ隣の木に入るので、天敵に出会うチャンスは少なく、天敵による防除対策はできない。

Q.カミキリムシやほかの昆虫が入っている場合もある。見分ける方法は?
A.爪楊枝の先の部分が入って止まるぐらいの太さ穴がこの虫を見分ける目安。きれいな円形の穴で爪楊枝の太さに近い。ぼそっと全部入る場合はほかの虫であることが多い。木屑が粉状に真っ白になるぐらい多く落ちている場合はまず間違いない。穴に爪楊枝を刺して虫が出るのを止める、という方法はやめてもらいたい。木くい虫なので爪楊枝を食い破るし、迂回もするので、爪楊枝を刺す労力がもったいない。