2022年03月08日

館内・園内行事

長居公園の植物案内(3月)

3月の植物園案内も2月に引き続いてコロナウィルス感染症拡大防止の観点から中止です。よい季節なんですが・・・残念です。
6日はとても天気が良く暖かい日で、行事ができたら気持ちよかっただろうなあ・・・と思いながら、見どころを探してみました。
今回も植物園が休園のため長居公園内をうろうろしました。(長谷川匡弘)

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1.オオイヌノフグリ(オオバコ科)
春になると小さい青い花を咲かせます。古い図鑑ではゴマノハグサ科となっており、植物歴が長い方はこちらのほうがなじみがあると思いますが、DNAを用いた新しい分類体系ではオオバコ科となっています。姿形はオオバコとは全く異なっていますが・・・。春早くからかわいらしい花をたくさんつけて、草地に散らばる星のようです。この花は一日で落ちてしまいますが、その最後に自分の雄しべをぐぐっとまげて自分の柱頭に、自分の花粉を付けます(自家受粉)。花の拡大写真2枚は時間を変えて同じ花を撮影したものですが、上は午前10時ごろ、下は午後3時30分に撮影したものです。夕方近くになると花が閉じ始め、それと同時に雄しべも曲がってきます。たった一日しか咲かない花ですが、このようにして子孫を残していきます。

(追記)ただ、受粉が何らかの原因でうまくいかなかった場合には、2日目にも花弁が開いてくることもあります。多くの花で調べたわけではありませんが、あきらかに2日目の朝にもう一度開花するものを観察しています。花の寿命は環境や、受粉の有無によっても影響を受けるものがあります。


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2.ヒメオドリコソウ(シソ科)
この植物も市内の公園ではよく見かけます。ヨーロッパ原産の外来植物です。重なってついている葉の隙間から花を咲かせますが、個性的ないでたちで、私は大好きです。よく似た種にモミジバヒメオドリコソウというものもありますが、こちらは葉がより深く切れ込んでいます。同じくヨーロッパ原産の外来種ですが、あまり見かけません。


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3.ホトケノザ(シソ科)
ホトケノザもどこでもよく見られる植物です。シソ科の花はこういう筒状の花で、先がぱかっと二つに分かれたような形をしたものが多いですが、このような花を唇形花といいます。下向きに開いたハート形の部分を下唇(かしん)、上のカップ状のところを上唇(じょうしん)といいます。雄しべ、雌しべは上唇のところに収まっており、写真ではオレンジ色に見えるのが雄しべの先端につく花粉の入った袋、葯(やく)になります(袋がはじけて花粉は外に出ている状態です)。昆虫(主にハナバチ)が筒の奥にある蜜を飲もうとして頭を花の入り口からつっとこむと、上唇部にある葯に頭が触れて花粉が付き、別の花に花粉が運ばれて行きます。都市部ではまっていても、なかなか昆虫は来ません。もう少し後になると、つぼみのまま花が開かない花(閉鎖花)が目立つようになりますが、都市部では主に閉鎖花で子孫を増やしているのかもしれません。


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4.スギ(ヒノキ科)
スギ花粉症に悩まされる時期がやってきました。長居公園にも何本かスギが植えてあるのですが、私も症状がひどくて、この時期はなるべくスギに近づきたくありません。・・・が、花を見るなら今です。咲いているかどうか確認するために近づいてみました。厄介なのは花粉を出す雄花です(上の写真)。いまにも開きそうではありましたが、この木ではまだ開花していないようです。同じ枝に雌花もついていました(下の写真)。暖かい日があと数日続けば開きそうな感じですね・・。花粉症の方はもう症状が出ていると思いますが、お気を付けください。


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5.カワヅザクラ(バラ科)
2月のブログではまだつぼみでした。3月6日に同じ株のところに行ってみると、だいぶ開花が進んでいました。5分咲きくらいでしょうか。カンヒザクラとの雑種と考えられており、ソメイヨシノのよりも色が濃く、華やかなサクラです。


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6.ジンチョウゲ(ジンチョウゲ科)
ジンチョウゲも2月のブログではまだ全部つぼみでした。行ってみると、すこーしだけ咲いていました。まだ全体で数花くらいしか咲いていなかったのですが、近づくとほんの少し香りが。公園の外周まで香りが漏れ出すのも、もうすぐかなと思います。


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7.アセビ(ツツジ科)
アセビは低山地によく見られるツツジ科の樹木です。小さい花をたくさんつけていました。釣鐘型の花を切ってみると、入り口付近まで雌しべが伸びており、その基部に雄しべがあります。その雄しべに囲まれた中に花盤があり、蜜を出しているのですが、口の長いハナバチやハエの仲間、蛾類などが口を入れて蜜をすったときに、口に花粉が付き別の株に運ばれていくと考えられています。

2022年02月22日

野外行事

長居公園の植物案内(2月)

2月5日に実施予定だった植物園案内(長居公園編)は、大阪府新型コロナ警戒信号が赤となり、まん延防止等重点措置も実施されているため、コロナウィルス感染症拡大防止の観点から中止となりました。また、3月6日の植物園案内についても、まん延防止等重点措置が延長されることにより中止となります。申込制ではないことから早めの判断になり、申し訳ございませんがご了解頂きますようよろしくお願いします。
2、3月の見頃の植物についてはこのブログで発信していきたいと思います。
2月は何を紹介するか最も迷う時期です。2月15日に長居公園をうろうろしながら探してみました。(長谷川匡弘)
 
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1.ウメ(バラ科)
ウメの花がちらほらと咲いていました。暖かいと早くもニホンミツバチも蜜を集めに来ているを見つけることができます。

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ウメには同じ株に雄の花と両性花が見られます。この写真は雄花です。真ん中がぽっかりと空いていて雌しべが見当たりません。 
 
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一方雌の花は真ん中に雌しべがあり、柱頭が突き出ています。真ん中に注目して二つの写真を見比べてみて下さい。このような同一の株に両性花と雄花を含むことを難しい言葉で、雄性両全性同株といいます(覚えなくてもいいです)。身近な植物ではツユクサもこのようなタイプです。
 

 
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2.タイワンツバキ(ツバキ科)
カンツバキやサザンカの品種も開花が遅いものはもまだ咲いていますが、そろそろツバキの季節になります。長居公園の東側にタイワンツバキを見つけました。花の形はよく似ており、ツバキ科ではありますが、日本のヤブツバキとは別の属になります。もう少し早くから咲いていたようで花は終わりかけでした。
 
 

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3.ツバキ(ツバキ科)
こちらは日本のヤブツバキに近い形をしています。日当たりが良い場所だからか早くもよく開花していました。メジロが2,3匹花弁にとまって蜜を吸っていました。蜜を吸うときは筒状になった花弁に足をかけることが多くて、メジロが頻繁に蜜を吸っている花では花弁が汚く傷ついています。でもこんな花は花粉もたくさん運ばれていることと思います。



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4.ジュウガツザクラ(バラ科)
早くもサクラが開花しているためか、公園を歩く人はよくこの木の前で立ち止まって写真を撮っています。ジュウガツザクラという品種なんですが、名前の通り秋から春先までずっと開花を続けています。ですから早く咲いたわけではなくてずっと咲き続けているんですね。



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5.カワヅザクラ(バラ科)
本当に早咲きなのはこのカワヅザクラです。オオシマザクラとカンヒザクラの自然交雑から生まれた品種と考えられており、その原木といわれる木は今も静岡県河津町にあります。河津町では町を流れる河津川沿いにこのカワヅザクラをたくさん植えており、開花すると本当にきれいです。長居公園ではさすがにまだ蕾でしたが、2月下旬にはちらほら開花しそうですね。


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6.ジンチョウゲ(ジンチョウゲ科)
花には強い香りがあり、2月下旬頃から開きはじめます。どこからともなく漂ってくるよい香りでもう春だなあ、と感じます。よく庭などにも植えられていますが、最近少し減ってきたように思います。ジンチョウゲは中国原産の植物ですが、同じ属のコショウノキは近畿地方にも自生しています。あまり多くはないのですが、林床で早い時は2月中頃から白い花をつけています。ジンチョウゲほど強くはないですがやはりよい香りがします。

2022年01月16日

子ども向け行事

はくぶつかん・たんけん隊

1月9日(日)、10日(月・祝)に「はくぶつかん・たんけん隊」を実施しました。今年は新型コロナウイルス感染症対策のため、普段より班の人数を少なくしマスクを着用して行いました。
たんけん隊の行き先は、地下にある3つの収蔵庫と学芸員の研究室や作業室、書庫です。各班の案内役である学芸員から、それぞれの部屋や収蔵されている標本について詳しく説明を聞きながら、たんけんを楽しみました。(前川)

実習室では、動物の骨や毛皮の標本について解説を聞きました。 
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一般収蔵庫には、岩石や化石、ホネや貝殻など比較的丈夫な標本が収蔵されています。 
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特別収蔵庫のなかは少しひんやりしています。植物の押し葉標本や昆虫、キノコ、はく製など虫やカビ、温湿度変化に弱い標本の保存のために、他の収蔵庫と比べてより厳密な温湿度管理を行っています。
図3 特別収蔵庫.JPG

液浸収蔵庫では、魚介類や小型の爬虫類、動物の内臓などがアルコールなどに浸けて保存してあります。ドタブカ(サメの一種)のはく製は迫力満点です。 
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書庫には学術雑誌や海外の博物館の紀要などが所狭しと並んでいます。
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化石処理室では、化石のクリーニングについて説明を受けました。石を削るときの大きな音にびっくりしていたようです。 
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2月11日(金)、12日(土)、13日(日)には、友の会限定のバックヤードツアーの実施を予定しています。こちらは大人の方も参加できますので、興味のある方はイベントページからお申し込みください。

◆詳しくはこちら

2021年09月26日

館内・園内行事

長居植物園案内(9月)

新型コロナウイルス感染症拡大が続いており、2021年9月の長居植物園案内も中止でした。2021年9月24日に植物園の見ごろの植物を観察してきたので紹介したいと思います。天気が悪かったり、担当者がワクチンの副反応で不調だったり、予定が入っていたりで報告が遅くなってしまい申し訳ありません。9月24日現在、長居植物園は開園していますので、来園されたみなさんの植物観察に役立てていただけると幸いです。また、行事が再開できるようになったら、植物園案内にお越しください!(横川)
 
 
◆ホルトノキ(ホルトノキ科)
 大阪周辺ではあまり見られない常緑樹です。わかりやすく面白い特徴としては、一年を通して葉の一部が赤く紅葉している点が挙げられます。落葉する前に紅葉するみたいなので、年中、葉を落としているということでしょう。知らない土地でもどこかに赤く紅葉した葉が付いていたら、ホルトノキかその仲間かなぁと推測できる便利な特徴です。
 関連して、ホルトノキの葉とヤマモモの葉がよく似ているという質問をもらうことがあります。ヤマモモはヤマモモ科の常緑樹でホルトノキと全然違うグループの植物なのですが、確かに並べてみるとよく似ています。枝先に葉が集まって付く様子も似ています。見分け方として、ホルトノキは上に書いたように年中赤い葉が混じること、ホルトノキには鋸歯(葉のへりのギザギザ)あるのに対して、ヤマモモには鋸歯があったりなかったりすること、ホルトノキの葉裏の主脈は赤くなりやすいのに対して、ヤマモモの葉裏の主脈は赤くならないことが挙げられます。さらに葉を透かして見てみると違いが明瞭です。ホルトノキの葉よりもヤマモモの葉の方が細かな葉脈まではっきり見えます。

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ホルトノキ。必ず赤く紅葉した葉が付く。


 
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ヤマモモとホルトノキの枝の比較。


 
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ヤマモモとホルトノキの葉の表面の比較。


 
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ヤマモモとホルトノキの葉の裏面の比較。


 
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ヤマモモとホルトノキの葉脈の比較。


 
◆クヌギ(ブナ科)
 9月中旬ごろから11月上旬にかけて、長居植物園では時期を変えながら様々なドングリが見られます。一番早いのはクヌギとアベマキで、ちょうどクヌギのドングリが落ち始めていました。ドングリが落ちる前には木になっていたのですが、どのようになっていたのでしょうか?クヌギの枝の中でドングリを探してみると、枝先ではなく、少し元側に付いています(2枚目の写真の青丸)。クヌギの花は春に咲きますが、実は今年落ちたドングリは、今年咲いた花ではなく、昨年に咲いた花が実ったものなのです。なので、実ったドングリの枝の先には、1年分の枝が伸びているため、大きくなったドングリは枝先ではなく、少し元側に付くのです。クヌギの枝を観察する際には、枝の先もよく見てみてください。枝先には今年咲いた雌花が小さなドングリになって、来年、大きく実るための準備をしています(2枚目の写真の赤丸と3枚目の写真)。この小さなドングリは枝先には必ず付いているわけではありません。今年の春、花が咲いた枝にだけ付くのでよく探してみてください。
 
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長居植物園に落ちていたクヌギのドングリ。


 
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ドングリがなっているクヌギの枝。青丸が今年大きくなったドングリで、赤丸が来年大きくなる予定のドングリ。


 
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来年大きくなる準備中のドングリ。


 
◆ヒガンバナ(ヒガンバナ科)
 ハーブ園の片隅にヒガンバナが咲いていました。よく見ると三色ありますが、これらは別の植物です。赤色はよく知られたヒガンバナです。オレンジ色はショウキズイセン、白色はシロバナマンジュシャゲという植物です。シロバナマンジュシャゲはヒガンバナとショウキズイセンの雑種だとされています。このように並べて植えられていると比較しやすくて便利です。日本のヒガンバナのほとんどは3倍体で結実しないとされており、球根で増えます。中国にはよく結実する2倍体のヒガンバナがあるようで、シロバナマンジュシャゲの起源は中国だと考えられています。花の時期には葉が見当たりませんが、花が咲き終わると細長い葉が出てきます。そのまま6月くらいまで青々としていて、冬から初夏にかけて光合成をして、養分を貯めて花を咲かせる戦略のようです。ヒガンバナが植えられている場所をよく覚えておいて、冬から春にかけて葉を観察してみましょう。
 
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ヒガンバナとその仲間


 
◆アメリカデイゴ(マメ科)
 ヘメロカリス園の近くで赤くて大きな花を咲かせていました。典型的なマメ科の花をひっくり返したような形をしています。花の上の出っ張った部分には雄しべと雌しべがあります。よく見てみると雄しべは10本のうち、1本が短くなっているようです。1本だけ短い雄しべ、どういった意味があるのでしょうか。
花の赤い色は鳥に対してよく目立ち、広告の役割をしていると考えられます。実際に原産地のアメリカ大陸ではハチドリが受粉しているとされています。花はとても丈夫で、ちょっと力を加えたぐらいでは壊れないことも鳥によって受粉される上で重要だと思われます。しかしながら、花に来る動物を調べた研究によると、ミツバチやクマバチの仲間もアメリカデイゴの花にたくさん来ていたようで、これらのハチも受粉に寄与しているようです1。
長居植物園のアメリカデイゴは毎年、結実しています。日本にはハチドリはいませんので、鳥であれば、メジロなどが来て受粉しているのかもしれません。ハチも受粉に寄与しているとのことですが、長居植物園で見る限りは、ミツバチがやってきても、あまり受粉はしてなさそうで、蜜だけを吸っているようでした。花にどんな生き物が来ているのか、受粉をしていそうか、よく観察してみると面白いと思います。

1:Galetto L. et al. 2000. Reproductive Biology of Erythrina crista-galli (Fabaceae). Annals of the Missouri Botanical Garden 87(2):127-145.

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アメリカデイゴ


 
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アメリカデイゴの雄しべと雌しべ。雄しべは10本あり、1本は短い。


 
◆チャンチンモドキ(ウルシ科)
 ボタン園の奥、第三紀植物群のセコイア林の脇に植わっています。今年は果実がよくなっており、果肉たっぷりの大きな果実がたくさん落ちていました。果肉はかなり粘り気があり、哺乳類に種子散布されるのではないかと思います。果実をよく見ると先端のほうに点が5つあります。果実の中にある硬いタネ(内果皮+種子)にも5つの穴があり、これら穴から芽が出ます。
 博物館の常設展の縄文人の食べ物のコーナーでは、遺跡から出土したチャンチンモドキのタネについて少しだけ触れられています。日本の第四紀の地層からはチャンチンモドキはほとんど出ていないようですが、縄文遺跡から出るのは少し不思議です。チャンチンモドキの分布は中国南部や東南アジアですが、日本では鹿児島県と熊本県に自生しています。日本の自生のチャンチンモドキはまだ謎が多く、すごく気になっている植物です。

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チャンチンモドキ


 
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左から完全に果肉が取れたチャンチンモドキの内果皮、チャンチンモドキの果実、内果皮を取り出した果実。


2021年08月11日

館内・園内行事

長居植物園案内(8月)

新型コロナウイルス感染症拡大が続いており、2021年8月の長居植物園案内も中止でした。2021年8月11日に植物園の見ごろの植物を観察してきたので紹介したいと思います。
 
8月11日現在、長居植物園は開園していますので、来園されたみなさんの植物観察に役立てていただけると幸いです。また、行事が再開できるようになったら、植物園案内にお越しください!(横川)
 
 
◆ワルナスビ(ナス科)
ナス科の外来植物です。ちょうど花が見頃でした。白い花に大きな黄色い雄しべが5つ付いています。雄しべの葯が袋状になっており、その中に花粉が入っています。葯の先を見ると小さな穴が開いています。ナス科の花は花粉を運ぶハナバチ類が振動を与えて花粉を採集するとされていますが、ハナバチ類がやってきたときにこの穴から花粉が出るのだと思われます。長居植物園や長居公園にはワルナスビがたくさん生えていますが、茎には鋭い刺があり、触ると痛いので観察する際には注意してください。
 
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◆オキナワウラジロガシ(ブナ科)
長居植物園では様々なブナ科の植物が観察でき、秋にはいろんなドングリが拾えます。ハナガガシ、ツクバネガシ、オキナワウラジロガシが加われば、日本産の主要なブナ科が全部見られるのになぁと思っていたら、いつの間にかオキナワウラジロガシが植えられていました!博物館のすぐ東側のところです。まだ小さな木ですが、花を咲かせ、ドングリを付けるようになったら植物園案内で観察してみたいと思います。参考として、沖縄県の西表島で拾ったオキナワウラジロガシのドングリと長居公園で拾ったシラカシ・クヌギのドングリの比較写真を添えておきます。
 
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◆ジャカランダ(ノウゼンカズラ科)
南米原産の樹木です。ヘメロカリス園の近くに植えられた長居植物園のジャカランダはここ何年かで花がよく咲くようになり、低い枝でも花が観察できるようになりました。花盛りは5-6月だと思うのですがまだ咲いていたので少し紹介します。ジャカランダの花には5本の雄しべがあり、うち1本だけが長くブラシ状の毛が付いています。これは仮雄蕊と呼ばれ、花粉を作らない雄しべです。毛の位置は雌しべの柱頭に近く、受粉を助けているのかもしれません。花を観察できる機会があれば見てみてください。残念ながら今回は花が高い位置にしか咲いていなかったので花の細部の写真はありません。
 
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◆ヤブラン(クサスギカズラ科)
シャクナゲ園の近くにたくさん植えられています。花のいい時期は過ぎていますが、まだ花が見られました。紫色の小さな花を付け、6枚の花被片が付いています。未熟な黄緑色の種子がたくさん付いていました。丸くてみずみずしいので果実かと思いますが、これは種子です。秋が深まるころになると黒くなり、鳥などの動物が食べて種子が運ばれるようです。
 
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◆稚樹調査区:エノキやムクノキ
長居植物園の北の端のイチョウが多く植わっているところに稚樹(樹木の子ども)の調査をしているらしい区画があります。普通は草刈りなどの管理がされてたり、人が歩いたりすることで、長居植物園の多くの稚樹は死んでしまっているのですが、草刈りや人の出入りをなくすと何が生えてくるのか実験しているようです。中を見てみると、稚樹の多くはエノキ、その中に少しムクノキが混ざっており、そのほかの樹種はほとんど見られませんでした。区画の上に生えているのはイチョウで、すぐ近くにはエノキやムクノキはありません。エノキやムクノキは鳥が果実を食べて種子を運ぶため、区画の中の稚樹は鳥が運んできた種子に由来するのだと思います。クスノキやセンダンなど、長居植物園にはほかにも鳥が運ぶ種子を付ける樹木はたくさんあります。なぜエノキとムクノキばかりなのかよくわかりませんが気になるところです。そもそも種子が運ばれてこなかったのか、大きなイチョウの真下で少し暗い環境でも生育できる樹種だけ残っているのか、などいろいろ仮説は思いつくのですが・・・。
 
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エノキ
 
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ムクノキ
 
◆ミゾカクシ(キキョウ科)
ハナショウブ園でミゾカクシがたくさん咲いていました。ミゾカクシは田んぼ周りの湿った畔などによく生える植物で、ハナショウブ園の周りもミゾカクシが生える環境としては好適なのでしょう。花は面白い形をしていて、細く5つに分かれた花びらが左右対称の形になっています。花びらの上側についている鎌首のような形をした黒っぽいものが雄しべと雌しべが合着した器官です。観察した花は花粉を出す時期だったようで、花粉を出した後に柱頭を出して受粉できるようになります。ミゾカクシを見る機会があれば、花の状態をよく見てみてください。長居植物園で見られた花色は白色に近い薄いピンクから濃いピンクまで様々でした。
 
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2021年06月26日

友の会行事

ビオトープの日(6月)「田植え」

6月19日に行う予定だったビオトープの日の中継は、残念ながら雨で中止となってしまいました。
その間にも苗はどんどん伸びてきており、6月24日の晴れ間に田植えをしました。
(植物研究室・長谷川)
 
 
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ちょっと伸びすぎの苗。朝紫という品種の黒米です。
 
 
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数本を束にして植えます。
 
 
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泥に足を取られながら植え始めます。
アイオオアカウキクサに覆われて水面が無いように見えますが、10㎝くらいの水深があります。
 
 
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植えるときは葉を水面に出すようにします。そうしないと呼吸ができなくて窒息してしまうのです。
うっ・・・腰が・・・いたい・・・。

 
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黙々と植えると、15分ほどで終わってしまいました。
早くみなさんとわいわい騒ぎながら田植えができる日が来るといいな、と思います。 

2021年06月21日

友の会行事

ビオトープの田起こし(6月)

博物館には圃場の近くに小さな田んぼとため池を作って、街の中でどんな生き物が集まってくるか観察しています。ビオトープでは4月から10月まで毎月1回行事を行って、参加者の方と一緒に生き物の観察をしたり、田植えや稲刈りをしたりしていますが、今年はコロナウィルス感染症拡大防止のため、行事をすることができていません。そこで、6月のビオトープ行事はオンラインで現地から生配信をしようと考え、6月12日にそのテストをかねて田起こしをしました。(植物研究室・長谷川)
 
 
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こんな感じで、スマホとビデオで撮影をして、その画像をZoomを使って配信する方法でうまくいくかどうか試してみました。オンラインでする会議のような感じで、参加者は田起こしをしている学芸員に質問をすることができます。
 
 
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こんなにヤゴがいるんですよ~と松本学芸員。その動いているのは何ですか?というリクエストに応えてヤゴを捕まえてみました。こんな風に参加者の方が気になるものが見えたら、あれとってみて!とリクエストできます。
 
 
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概ね田起こしできました。少しならしてイネの苗を植えられるようにします。
 
 
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その後、ビオトープにある竹筒トラップを見たり、
 
 
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隣にあるため池に入って見たりしつつ、生き物を探してみました。テストは1時間ほどで終了。どのマイクで音を拾って・・等を確認しました。
 
 
・・・で、本日(6月19日)、ビオトープの様子を生配信するはずだったのですが・・・雨天のため中止となってしまいました・・・。いろいろと準備をしてきたのですが残念です。
イネの苗はだいぶ伸びてしまっているので、近々学芸員で田植えをして、田植えの様子などこのイベントブログでご報告したいと思います。