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コクテンシャコ、国内から1世紀ぶりの発見
2022年06月01日

 琉球大学理工学研究科の中島広喜氏(博士後期課程1年)と、当館の有山啓之外来研究員が、国内から約1世紀ぶりにコクテンシャコを発見し、国際科学誌「Plankton and Benthos Research」に公表しました。

研究内容

 シャコ類は世界から約500種が知られている甲殻類です。主に熱帯から亜寒帯の浅海域にかけて分布しており、岩やサンゴなどの隙間や、海底に掘った巣穴に生息しています。強大に発達した第2顎脚(捕脚)がシャコ類の特徴で、この捕脚を高速で繰り出し、餌の貝などを割ることができる種や、魚類などを捕らえることができる種などが知られます。国内では食用種となる「シャコ」1種が有名ですが、実際は70種以上のシャコ類が日本から報告されています。

 コクテンシャコCloridopsis scorpioは全長10 cmほどになるシャコ科の1種で、第5胸節側突起に黒斑を有していることが非常に特徴的な種です。インド、シンガポール、ベトナムから中国などにかけて広く分布しており、泥質の干潟から水深20 m程度の環境に生息しています。

 国内からはBalss (1910) により岡山県から、Komai (1914) やKomai (1927) により瀬戸内海や三重県、神奈川県や東京都などから記録されていました。しかしそれ以降、コクテンシャコは国内からまったく記録されてきませんでした。確認した限り、これまでの日本産コクテンシャコ標本で最も新しいものは、東京都で1915年に採集されたものでした。つまり、それ以降の100年以上に渡り、コクテンシャコは国内から確認されてこなかったのです。

 本研究では広島県と岡山県の数地点の干潟で採集された標本の提供を受けたことをきっかけに、1914年以前に神奈川県で採集され国立科学博物館に保管されていた標本と、国外産の標本などを比較することで分類学的な検討を行いました。その結果、広島県や岡山県から新たに採集された標本もコクテンシャコであると同定できました。こうして、現在もコクテンシャコが国内に生息していることが再確認されました。

将来の展望

 本研究の調査期間、感染症流行の回避のため現地調査に赴くことを断念せざるを得ない状況が続いていたため、コクテンシャコの生息状況について詳細な調査はできていません。現時点では情報が少なく断言できませんが、干潟環境の悪化や減少を考慮すると、コクテンシャコは国内ではごく少数しか棲息しておらず、保全の必要がある種かもしれません。

 さらに、コクテンシャコが中国・台湾などに加え、今回の報告の様に瀬戸内海などに分布していることを考慮すると、それらの産地の間に位置している琉球列島にも、コクテンシャコが生息している可能性は十分に考えられます。こうしたことを念頭に、干潟をはじめとする環境におけるシャコ類の調査・研究を今後も進める方針です。

<論文情報>

(1)タイトル:Record of Cloridopsis scorpio (Latreille in Latreille, Le Peletier, Serville & Guérin, 1828) (Stomatopoda: Squillidae) from Japan: rediscovery after almost a century (日本から約1世紀ぶりに発見されたコクテンシャコの記録)

(2)雑誌名:Plankton and Benthos Research

(3)著者:Hiroki Nakajima (中島広喜)1, Hiroyuki Ariyama (有山啓之)2

(4)所属:1琉球大学理工学研究科、2大阪市立自然史博物館

(5)URL:https://doi.org/10.3800/pbr.17.185

詳細は琉球大学のプレスリリースをご覧ください。コクテンシャコの写真も掲載しています。
https://www.u-ryukyu.ac.jp/news/34779/

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