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当館学芸員を含めた研究チームが論文を発表しました 「一回の施肥が半世紀にわたって半自然草原の植生に影響を与える」
2022年12月01日

 大阪市立自然史博物館 横川 昌史学芸員を含めた研究チーム(論文情報・著者一覧参照)による、施肥が半自然草原の植生に与える影響に関する研究論文が、Public Library of Science社より刊行されているオープンアクセスの学術誌である「PLOS ONE」に掲載されました。
 論文タイトルは 『A single application of fertilizer can affect semi-natural grassland vegetation over half a century』(日本語訳 :『一回の施肥が半世紀にわたって半自然草原の植生に影響を与える』)となっております。

下記ホームページで論文の概要と電子版の記事を無料で閲覧することができます。

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0275808

 人が火を入れる、草を刈る、家畜を放すことで維持されてきた半自然草原は多くの絶滅危惧植物の生育地になっており、保全上重要な生態系です。各地で半自然草原の保全や再生が進められていますが、そういった活動がうまくいくかどうかは土壌の性質も重要だと考えられます。

 今回、西日本農業研究センターの堤 道生氏、九州大学の平舘俊太郎氏、当館学芸員の横川昌史らからなる研究グループは島根県隠岐諸島の知夫里島の放牧地で1970年に施肥が行われた草原と、隣接する施肥が行われていない草原の植生と土壌化学性を2019年に比較しました。その結果、
・どちらの草原もシバが優占しているが、生育している植物の種構成が異なっていた
・施肥をした草原では施肥をしていない草原よりも出現種数が少なく、外来植物が多かった
・施肥をした草原では施肥をしていない草原よりも窒素やリン、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの土壌中の栄養塩等の値が高かった
 ということがわかりました。

 これらの結果はたった1回の施肥が半世紀にわたって半自然草原の土壌化学性に影響を与え、生育する植物を変えてしまう可能性を示してしています。半自然草原の保全や再生にはこういった土壌の性質も考慮する必要がありそうです。

知夫里島論文_博物館新着情報_画像.jpg
調査地の知夫里島の放牧地




<論文情報>
タイトル:A single application of fertilizer can affect semi-natural grassland vegetation over half a century
雑誌名:Plos ONE
著者:Michio Tsutsumi(堤 道生)1, Syuntaro Hiradate(平舘俊太郎)2, Masashi Yokogawa(横川昌史)3, Eri Yamakita(山北絵里)2, Masahito Inoue(井上雅仁)4, Yoshitaka Takahashi(高橋佳孝)5
所属:1西日本農業研究センター、2九州大学、3大阪市立自然史博物館、4島根県立三瓶自然館サヒメル、5草原再生ネットワーク

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