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全国の自然史系博物館・大学による 「令和 2 年 7 月豪雨」植物標本レスキュー支援活動について
2020年07月30日

 大阪市立自然史博物館は、西日本自然史系博物館ネットワークおよび国立科学博物館をはじめとする全国の自然史関係機関とともに、令和 2 年 7 月豪雨により被災した人吉城歴史館所蔵「前原勘次郎植物標本」のレスキューにおいて、人吉市、熊本県及び熊本県博物館ネットワークセンターの支援を開始しました。

 令和 2 年 7 月豪雨に伴う球磨川氾濫により、人吉城歴史館(人吉市)は浸水被害を受けました。同館は前原勘次郎氏の採集した植物標本を所蔵していますが、この標本も被災しました。

 前原勘次郎氏(1890-1975)は、南九州の植物研究史上重要な文献である『南肥植物誌』の著者として知られています。同氏のコレクションはこの文献の貴重な証拠標本であり、新種記載に用いられた可能性のある標本など、植物学的にも重要な標本が多数含まれています。このコレクションの大半がこのたびの豪雨で水に浸かり、早急に乾燥・クリーニングを行わなければ腐敗やカビの発生で標本の価値が損なわれるおそれがあります。

 人吉市の依頼により、熊本県及び熊本県博物館ネットワークセンターは、この標本の搬出を決断、水損した標本の数が約 3 万点という膨大な量であることから、迅速な保存処理を行うために、「植物系学芸員メーリングリスト」などを通じ全国の自然史関係機関に協力を依頼しました。

 この状況を受け、大阪市立自然史博物館は、東日本大震災時の標本レスキューの経験をもとに、西日本自然史系博物館ネットワークや国立科学博物館等と連携して全国での分散対処の調整に参画し、各機関とともに水損した標本の修復に取り掛かることとしました。現在20箱の水損標本が到着し、冷凍庫で保持をしながら、保存活動を始めています。

 新型コロナウイルス感染症予防のため、現地での支援に入るのが困難な状況ですが、大阪市立自然史博物館だけでなく全国の関係機関が連携協力し、分散対処という形でこの貴重な自然史資料のレスキューに取り組みます。

 修復後は、標本は再び全国から地元へと返還され、地域の重要な自然史資料として保存される予定です。文化財防災ネットワークとも連携し、被災地の文化的な保全と復興に貢献していきたいと考えています。



box2.png
ダンボールで送付された資料(大阪市立自然史博物館に到着したもの)。
各博物館の処理可能数が送付されている。




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水害で濡れた標本。
カビやバクテリアが繁殖しているものもあるので急速な乾燥が必要。




≪人吉城歴史館所蔵「前原勘次郎植物標本」のレスキューに参加を予定している機関(7 月 26 日現在)》

北海道大学総合博物館,釧路市立博物館,岩手県立博物館,福島大学共生システム理工学類・資料研究所,ミュージアムパーク茨城県自然博物館,群馬県立自然史博物館,千葉県立中央博物館,千葉県立中央博物館分館海の博物館,東京大学総合研究博物館,東京大学大学院理学系研究科附属植物園, 国立科学博物館,東京都立大学牧野標本館,神奈川県立生命の星地球博物館,川崎市環境総合研究所,相模原市立博物館,石川県立自然史博物館,ふじのくに地球環境史ミュージアム,岐阜県博物館,三重県総合博物館,滋賀県立琵琶湖博物館,京都大学総合博物館,大阪市立自然史博物館,あくあぴあ芥川(高槻市立自然博物館),兵庫県立人と自然の博物館,和歌山県立自然博物館,島根県立三瓶自然館,倉敷市立自然史博物館,岡山理科大学,徳島県立博物館,高知県立牧野植物園,九州大学総合研究博物館,北九州市立いのちのたび博物館,熊本大学大学院先端科学研究部,熊本市立熊本博物館,御船町恐竜博物館,鹿児島大学総合研究博物館



●本件に関するお問い合わせ
大阪市立自然史博物館 植物研究室 佐久間 大輔
電話: 06-6697-6221(代表)
E-mail: sakuma@mus-nh.city.osaka.jp

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